王女は魔道師団長の愛に溺れる

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 「……すごい……!!」

 眼下に広がる景色に、リーリアは感嘆のため息を漏らした。
 王都の美しい街並み、郊外から広がる緑豊かな自然。
 城の外へ出たことも、美しい景色を見たことも数えきれないほどある。
 だがしかし、こんなにも素晴らしい光景を見るのは生まれて初めての事だった。

 「私……今まで黒魔法とは、恐ろしいものだとばかり思っていました……」

 攻撃だけではない。人を呪い、しいすることもできる黒魔法。
 だからこそ、術を扱う者は魔法の素質よりも何よりもまず、その人格が問われると教わった。
 万が一人間性に問題があると判断された場合、程度にもよるそうなのだが……魔力そのものを封じてしまう場合と、更生の可能性があれば、ゆっくりと時間をかけてカウンセリングを行いながら、正しい道へと導く場合があるのだとか。

 ──でも……クレイグ様なら真っ先にカウンセリング行きになりそうなものなのに……そうじゃなかったのよね……

 「……今、何かとてつもなく失礼な事をお考えではありませんか」

 「え゛?……いえ、そんなことは……」
 
 心を読む魔法なんてものがあるのだろうか。
 顔が見えない事をこれ幸いに、リーリアは知らんぷりを決め込んだ。
 しかし景色に慣れてくると、今度はとんでもない事に気付いてしまう。

 ──私、今……後ろから抱き締められてるのよね……!?

 相乗りなので、当然身体はこれ以上ないほどに密着している。
 時折香るクレイグの香水の匂いにリーリアの胸がおかしなリズムを刻み出す。
 魔道師のローブはゆったりとしているため体型までは分からなかったが、クレイグは意外や意外、かなりな筋肉質であることが布越しに分かる
 細面な彼の事だから、てっきり身体も同じく細身なのだろうと思っていた。
 しかしリーリアを軽々と持ち上げたところといい、背中に当たる胸板といい。

 ──性格さえ除けば、見た目は悪くないのに……

 青みを帯びた艶のある黒髪を切り揃え、紅玉のような瞳で人を射る。
 何というか、団長であるイゾルデよりもずっと黒魔道師然とした風貌をしている。

 「……また変な事をお考えのようですね。仕方ない」

 「え!?い、いやぁぁぁぁぁああ!!」

 クレイグはパチンと指を鳴らすと、火の鳥を急行直下させた。
 リーリアはあまりの恐怖に絶叫し、許しを乞う。

 「ご、ごめんなさいクレイグ様!!性格が歪んでそうで、見た目もいかにも黒魔道師っぽいなんて思っててごめんなさい!!だから許してぇぇぇ!!」

 「ほぅ、そんなことを思っておられましたか。素直に謝れたのは偉いですが、許しません」
 
 「やぁぁぁぁあ!!」

 絶叫するリーリアなどお構いなしに火の鳥は急降下を続けた。
 
 ──怖い!怖い!死んじゃう!!

 リーリアは無意識に、クレイグに縋り付くようにして黒いローブを固く握り締めていた。

 「ふ……ふふっ……」

 クレイグが僅かに漏らした笑いも、今のリーリアには届かなかった。







 
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