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「殿下を拐かすなど許される行為ではありません。私はあの日の事が思い出され、いてもたってもいられなかった。きっとまた、恐ろしい思いをして泣いておられるはずだと……!」
あの日
それはきっと八年前、ユーインと初めて出会い、命を救われた日の事。
──ユーイン様も、あの日の事をまだ憶えていてくれたんだ……
リーリアの人生は、あの日から始まったようなもの。
それをユーインも憶えてくれていた……本来ならゆっくりと思い出に浸るところだが、今はそんな場合じゃない……気がする!!
「……腸が煮えくり返るようでした。万が一殿下の身に何かあれば、この命に替えてもあいつをあの世に突き落としてやろうと……」
無事です。無事でしたから、「物騒な事を言うのはやめてください」と言いたいのだが、ユーインの瞳孔は思いっきり全開になっていて、その仄暗い雰囲気に怯んだリーリアには、声を発することができない。
そして今のユーインには、リーリアの様子に気を配れるほどの余裕が皆無。どろついた心情の吐露は終わらない。
「それなのに……殿下は笑顔でお戻りになったと……挙げ句あの悪童の処遇について各所に気を配られたと……何故ですか……!!」
「な、何故ですかと言われましても……」
今となっては正解だったと思うしかない。
リーリアが各所に手を回していなければ、クレイグは今頃天国への階段を全速力で昇っていただろう。
いや、クレイグの事だから、善戦したかもしれないが。
──あれ、でも待って。でもさっきの言い方だと、ユーイン様は今、クレイグ様よりもどちらかというと私に対して怒って……る?
「ユーイン様、ご心配をおかけしたことは本当に申し訳なく思っています。ですが、クレイグ様はその……気落ちする私を気分転換に連れ出してくださったのです」
「……気落ち……誰が殿下に気落ちさせるような仕打ちを……?」
いやあなたです、とは言えないくらいとにかく怖い。
そして今の発言により、仄暗い視線はリーリアにガッチリ固定された。まるできちんと説明するまでは逃がさぬ、とでも言われているような状況だ。
しかし、気落ちの理由を説明するにはユーインへの気持ちを伝えなければならない訳で。
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