王女は魔道師団長の愛に溺れる

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 言い終わる頃には涙が頬を伝い落ちていた。

 「リーリア殿下……」

 いつもの声音に戻ったユーインが、優しくリーリアの名前を呼ぶ。
 遠慮がちに伸ばされた大きな手が頬を包み、親指の腹がゆっくりと涙の跡を拭った。

 「私がイゾルデと話している事が嫌だったのなら……あなたをあの馬鹿者に連れ去られた私の気持ちがわかるのではありませんか……?」

 「ユーイン様の……気持ち……?」

 「私は狭量な男です……治療のためと頭では理解していても、いざあなたが他の男の尻に触れるとなると許せなかった……講師としても失格です」

 「……じゃあ、ユーイン様が不機嫌だったのって……まさか……」

 「嫉妬です……他の男にあなたが触れるなど、あってはならない」

 「ユーイン様……!!」

 さっきよりも大粒の涙を流し始めたリーリアに、ユーインは少しだけ困り顔で頬を染めた。
 彼の背後に感じたどす黒い何かも完全に鳴りを潜め、張り詰めていた心が軽くなる。
 これは本当に現実だろうか。
 ずっと想い続けた人が、同じ気持ちでいてくれたのだ。
 身体がふわふわとして、力が入らない。
 さっきまでの澱んだものとは打って変わって愛情に満ちた目を向けられて、恥ずかしさに襲われたリーリアは視線を落とした。

 「……殿下……目を逸らさないでください。私を見て」

 いつの間にか前へ回り込んだユーインが、下から覗き込むような姿勢でリーリアに囁きかける。
 しっとりとしたビロードのような声が耳朶に響き、リーリアの身体に甘い痺れが走った。

 美しい人だと思ってはいたが、こんなにも間近で彼の顔を見るのは初めての事。
 頭髪だけでなく、藍色の瞳を縁取る長いまつ毛までもが神秘的な白。
 肌もまた、雪のように白く滑らかで、ずっと見ていると吸い込まれそうだ。

 ──こんなにも素晴らしい人が、本当に私を……あ、でも……

 そこでリーリアは、ユーインからはっきりと愛の言葉を聞いていないことに気付く。
 しかし、こういうのは強請って言わせるようなものではないだろう。

 ──でも、ちゃんと聞きたい

 リーリアは遠慮がちに口を開いた。

 「ユーイン様……」

 「何ですか?」

 嬉しそうに微笑むユーインの顔は、目も眩むほどに美しく、尊い。
 
 「……ユーイン様の気持ちを……もっとちゃんと、聞かせて欲しいです……」

 きっと、少し照れたように微笑んで、聞かせてくれるのではないかと思っていたのだが、返ってきた反応はリーリアの予想とは違うものだった。

 「本当に私の気持ちを聞きたいのですか?全部?」

 「はい…………っん……!!」

 スルリ、頬を包んでいた手が、リーリアの首筋をゆっくりと撫で下ろす。
 小さく上げた甘い声に、ユーインの目が妖しい光を宿した事に気付いたリーリアの心臓が、緊急事態を知らせるようにバクバクと騒ぎ出した。

 ──せ、生存本能が必死で何かを訴えてる気がするのは気のせい……かしら?




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