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しおりを挟む“穀潰し”
今、確かにそう言った。
長きにわたりこの国を支えてきた魔道師たちに対し、なんて失礼な事を。
しかしオスカーの発言に怒りを感じた人物は他にもいた。
「いったいどのような理由で我ら宮廷魔道師団を穀潰しなどと呼ばれるのか。説明していただきたい」
険しい顔でイゾルデはオスカーの前へ出た。
「いえいえ、私は黒魔道師の皆さまの事は心から尊敬しております」
「は?」
「魔物のみならず、侵略者たちからも我らを守ってくださる皆さまには、日頃から並々ならぬ感謝の気持ちを持っているのです」
この場にいる誰もが、オスカーは黒と白の両魔道師の事を言っているのだと思っていたが、この口ぶりではオスカーの言うところの“穀潰し”とは、白魔道師の事らしい。
「何て失礼な……」
リーリアの頭に血が上る。
しかしその様子を見てオスカーは尚も言い募る。
「殿下……お可哀想に。殿下は幼い頃、たまたまご自分を見つけ、救助したのが白魔道師だったがために、奴らに傾倒するようになってしまわれた。ですが殿下は本当に素晴らしい方です。白魔法などというものは紛い物であると、ご自身の手で証明されたのですから!」
「何ですって?」
「研究所の創設こそがその証明に他なりません。白魔道師など存在しなくとも、この国の未来は安泰。それなら白魔道師などさっさと国の庇護から外すべきなのです」
この男は何も分かっていない。
黒魔道師が前線で思いきり戦えるのは白魔道師の援護があってこそ。
それに、リーリアは自分を救助したのが白魔道師だからという理由で、白魔法について学んだ訳ではない。
あの時自分を見つけたのがユーインだったから。
彼でなかったら、追いかけようなどとは決して思わなかった。
──許せない
こんな場所で白魔道師を、そしてリーリアの長年の想いを馬鹿にするなんて。
「殿下、どうぞお気になさらず」
オスカーにひと言物申そうとしていたリーリアを止めたのは、ユーインだった。
「なぜですか、ユーイン様?こんなにひどいことを言われたのに、黙っているなんてできません」
「良いのです」
しかしユーインはまるで“放っておけ”というような顔でリーリアを止める。
「もうすぐ陛下も入場されます。あちらの方へ移動しましょう」
見れば、周りもこちらの方を気にしている。
こんな事、あまり聞かれていい話でもない。
「逃げるのか」
すると、リーリアを促すユーインの背に向かってオスカーが嘲るように言う。
──さっきから何なの?逃げるって?
ユーインを挑発するような態度を繰り返すオスカー。
しかしユーインはまったく相手にしていない。
「国王陛下のご入場です!」
腑に落ちないことだらけだったが、国王の入場を告げる声が会場に響き、リーリアたちはオスカーをその場に残し、場所を移動した。
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