王女は魔道師団長の愛に溺れる

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 突如天井を破壊して飛び込んできた黒い塊は、間髪入れずに爆炎を巻き起こす。
 
 「なっ!?」

 イゾルデは防ぐ間もなく炎の中に包まれた。
 凄まじい爆発と共に辺りには黒煙が立ち込める。

 「アーロン!みんな!……っ!?」

 「黙って。行きますよ」

 ──クレイグ様!?

 強く手を引かれ、リーリアは引きずられるようにして部屋を出た。

 
 煙がしみて、滲んでいた視界が元に戻り、前を走る艷やかな黒髪が目に入った。
 リーリアを連れ出したのはやはりクレイグだった。
 でも、なぜクレイグが?

 ──まさか、私を助けるために来てくれたの?

 しかしリーリアは、その考えをすぐに打ち消した。
 クレイグに限って、そんな事あるわけないと。きっと偶然だと。

 城内のあちこちから悲鳴が聞こえてくる。
 クレイグは、とにかくイゾルデから離れるためだろうか、こちらを振り返りもせずひたすらに走り続けている。
 アーロンとパティたちは大丈夫だろうか。
 しかし、イゾルデの狙いはリーリアだ。
 それならリーリアの側にいないほうが安全かもしれない。

 「クレイグ様、いったいどこへ向かっているのですか!?」

 「さしあたって安全な場所まであなたを送り届けます」

 「安全な場所とは」

 「誰か人目につく場所ならどこでもいい。頭上の魔物たちは目くらましのための囮です。城内の人間の目を逸らし、あなたを襲うためのね」

 「イゾルデ様はなぜそこまでして私を?」

 しかしその質問に答える暇はクレイグにはなかった。
 クレイグは、目の前に現れた魔物に向かって炎を放つ。苦しむ暇すら与えない正確さは、さすがとしか言いようがない。
 しかしリーリアは、クレイグの表情に余裕がないことに気付く。
 次から次へと現れる魔物相手にリーリアを庇いながら戦うのは、確かに至難の業だろう。
 けれどおそらく理由はそれじゃない。
 クレイグの顔色は悪く、額にはうっすらと汗を書いている。
 それに、そんなに長い距離を走ったわけでもないのに呼吸も浅い。
 
 ──クレイグ様……もしかしたら、怪我をしてる……?

 しかしクレイグの黒のローブは、外見からは怪我の有無が判別できない。

 「クレイグ様!こちらへ」

 目の前の魔物を殲滅したタイミングで、リーリアはクレイグの手を引いた。
 各宮と王城を繋ぐ大回廊に設置された四つの階段のうち、一つだけに施されたとある仕掛け。
 本来なら誰にも教えてはいけない、王族の脱出用に使われる秘密の通路。
 リーリアは教わっていた通りに、石の壁の一角に設置された細工を動かし、秘密の入り口を開けた。

 カビ臭く、明かり窓もない地下道に降りると、リーリアは少し進んだ先で立ち止まる。

 「クレイグ様、足元を照らせるくらいの炎を出していただけませんか?」

 クレイグは無言で手のひらを上に向け、小さな炎を浮かばせた。
 するとリーリアは、ペタペタとクレイグの身体を触り始めた。

 「なっ……何をするんですか……っ痛!」

 「やっぱり……!怪我をしてるんですね?見せてください!」

 嫌がって身を捩るクレイグだったが、リーリアも負けじと取っ組み合い、無理矢理ローブを剥がした。
 すると彼が中に着ている衣服の、ちょうど腹部の辺りが赤く染まっていたのだった。



 
 

 
 
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