やり直しは別の人と

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
15 / 56

15

しおりを挟む





 会場の扉が開き、主役の入場を告げるファンファーレが響き渡る。
 すべてが丸く収まり夜のアハハウフフを想像しながらご満悦の王子様と、現在死出の旅路を高速で進むルクレツィア。二人は寄り添いながらホールの中央を歩き、前方で待つ国王夫妻の前まで来ると、揃って優雅な礼を見せた。
 国王夫妻の隣にはアンジェロが立っていた。そして長兄カリストの姿はどこにも見えない。やはり今日も欠席するつもりなのだろう。
 アンジェロは今夜の装いに、最近貴族の間で流行りのパステル調のグリーンの上着を選んでいた。ウエストコートには多色の絹糸で華やかな刺繍が施され、縫い付けられたシークインや宝石がシャンデリアの光を受けきらきらときらめいている。
 ──さすがだわ……やり手ね……
 やはり恐るべし末っ子。流行をこれでもかと取り入れてはいるが、それを上品に着こなして見せるだけではない。自身の持つ高貴な美しさで、流行の中にほんのり漂う軽薄さをねじ伏せている。
 ここはやはりアンジェロに助けを求めるべきだろう。カリストの姿が見えない以上、王子は彼しかいない。幸いにもルクレツィアに好意を持ってくれているようだから、きっと悪いようにはしないはず……よね?
 国王から祝辞を賜ると、会場に音楽が流れ出す。今夜の宴はまず主役であるシルヴィオとルクレツィアがダンスを披露する予定だった。
 会場中の視線がシルヴィオとルクレツィアに向けられる。

 「さあ、行こうかルクレツィア」

 「はい……」

 満面の笑みで差し出された手のひらに、そっと自分のそれをのせる。
 そして二人が会場の中央まで行き、向かい合ったその時だった。

 「お、おい、音楽を一度止めろ!!皆さま、王太子カリスト殿下のご入場です!!」

 音楽が鳴り止み、代わりに慌ただしくファンファーレが鳴る。
 皆、思いもよらない王太子の登場にざわめきが止まらない。

 ──カリスト殿下が?本当に?

 驚いたのはルクレツィアも同じ。目の前にいるシルヴィオに視線をやると、注目をさらわれたのが気に触ったのか、面白くなさそうに口元を歪めていた。
 カリストは、腰まである金の織り糸のように真っ直ぐな髪を後ろで一つに束ね、先程シルヴィオとルクレツィアが入場した扉から、ゆっくりと国王夫妻の元へ向かって歩いていく。
 その姿を見るのは久しぶりだったが、堂々と威厳のある様はなにひとつ変わらない。

 「そなたが顔を出すとは珍しいなカリスト!」

 国王夫妻は三兄弟を分け隔てなく愛し育てたが、カリストの才覚に対してだけは特別に評価をしていた。彼の堅物なところに手を焼いている夫妻は、このような華やかな場に彼が顔を出したことが嬉しい様子だった。

 
 
しおりを挟む
感想 305

あなたにおすすめの小説

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

【完結】私を裏切った前世の婚約者と再会しました。

Rohdea
恋愛
ファルージャ王国の男爵令嬢のレティシーナは、物心ついた時から自分の前世……200年前の記憶を持っていた。 そんなレティシーナは非公認だった婚約者の伯爵令息・アルマンドとの初めての顔合わせで、衝撃を受ける。 かつての自分は同じ大陸のこことは別の国…… レヴィアタン王国の王女シャロンとして生きていた。 そして今、初めて顔を合わせたアルマンドは、 シャロンの婚約者でもあった隣国ランドゥーニ王国の王太子エミリオを彷彿とさせたから。 しかし、思い出すのはシャロンとエミリオは結ばれる事が無かったという事実。 何故なら──シャロンはエミリオに捨てられた。 そんなかつての自分を裏切った婚約者の生まれ変わりと今世で再会したレティシーナ。 当然、アルマンドとなんてうまくやっていけるはずが無い! そう思うも、アルマンドとの婚約は正式に結ばれてしまう。 アルマンドに対して冷たく当たるも、当のアルマンドは前世の記憶があるのか無いのか分からないが、レティシーナの事をとにかく溺愛してきて……? 前世の記憶に囚われた2人が今世で手にする幸せとはーー?

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。 彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。 幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。 彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。 悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。 彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。 あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。 悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。 「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。 ※他サイト様にも載せています。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

処理中です...