293 / 299
田浦創一 異世界での始まり
しおりを挟む
『田浦創一 異世界での始まり』
気がつくと俺は地面に倒れていた。
「何が、起こった……?」
俺は、短い草の上に手をついて起き上がりながら、口から漏れた自分の呟きが脳に伝わるまで時間がかかった。
「おかしい、自分はTDL、東京デスティニーランドの駐車場にいたはずだ。足元に草なんて……」
起き上がって見回した周りは360度の草地であった。ただの草むら。先程まで居た場所にあった沢山の車は、影も形もない。
心臓が早鐘のように脈打つが、大きく息を吸って何とか呼吸を整える。
「すぅ……はぁぁぁ。自分は田浦創一。45歳。愛知県在住。よし、記憶はちゃんとあるな。今日は家族とTDLに……」
そこまで口にした後、激しく周りを何度も見返す。
「有希恵! 美咲!美穂!どこだ!皆はどこだ!有希恵ぇぇぇ」
俺は妻と娘達の名前を叫び、近くの草地に倒れていないか懸命に捜した。
「お、落ち着け。何がどうしてこうなった!いや、そもそもここは何処だ?TDLの駐車場どころか、ランドもホテルもワイ浜駅も見当たらん。有希恵ぇぇぇぇ!美咲ぃ」
妻や娘の名を呼ぶが、草むらから起き上がってくる人影はない。草むらのど真ん中で俺は立ち止まり、ただボーゼンと佇んだ。
頭の中は、昨日の出来事や、今朝の記憶、気を失って目覚める直前までの出来事が目まぐるしく渦巻いていた。
千葉のワイ浜へは昨日着いた。愛知を車で出発して夕方にはデスティニーホテルに到着、チェックインをした。有希恵と美穂と美咲の家族4人で2泊3日の旅行だった。美咲がTDLに行きたがったのだ。美穂の職場が突然閉鎖された事を聞いた美咲がこの機会に家族で行こうと言ったのだ。
草原の真ん中で一生懸命記憶の整理をした。普段から冷静沈着な男と言われた俺だったが、この状況で落ち着けと言う方が無理だ。
目の前にあったはずの車は見当たらない。ポケットを弄りスマホを出すが圏外になっている。
長女の美穂と次女の美咲、そして妻の有希恵と俺の家族4人でパークへ入場した。美咲達に急かされてアトラクション乗り場へ向かう途中で、美穂が車に忘れ物をしたと言い出した。
「ヤッバイわぁ、日焼け止め、車の中に置いてきたわぁ」
「お姉ちゃん、夏は持ち歩かなアカンやん」
「さっき、降りる直前に使こたんよ」
「お姉ちゃんが持ってる思たから、うち持ってこうへんかったわ」
その会話を聞いていた妻も加わる。
「自分らちゃんと持ってこんとアカンやろ」
「お母さん、持っとる?」
「うちは持っとらん。美穂のを借りよ思たから」
「えええ、お母さんも一緒やんか。ねぇ、お父さん取って来て」
「そやね」
「オトンの出番やでw」
女3人で徒党を組まれると、俺はもう従うしか無い。
「わかった。他に車から持ってくる物はあるか?」
「日焼け止めだけぇ」「ないー」
あの時俺は、アトラクションへ向かう3人と分かれて、駐車場へ向かった。
降りた時に覚えて置いたクマのマークを探して、無事にうちの車を見つけ走り寄った。
そこで記憶が途切れた。
倒れたのはどう考えてもパークの駐車場だ。こんな草原ではない。
では何故?
……誘拐?スマホの時計を見ると、日付も時間もあの時から対して進んでいない。誘拐されてこんな人里離れた草原まで短時間で連れてこれるとは思えない。
瞬時に場所を移動した?
それにしても何故俺が?……俺だけか?
ふと先日の会話を思い出した。
そうだ、美穂の職場が突然閉鎖されたのは隕石の噂のせいだと言っていた。取引先の店が次々と閉店し、そのせいで店舗の縮小をされたとか言っていたな。ネットでも隕石のニュースは氾濫していた。日本では表立っての告知などは一切されてなかったが、隕石落下だか衝突だかの噂は海外ではかなり取り上げられていた。国内では、あくまで噂のうちだが、政治家や富裕層がシェルターに避難をしたとか……。
まさか…………。
まさか本当に、隕石の衝突があったのか?そして俺は死に、この世界に輪廻転生、いや、別の世界へ飛ばされた?
何を馬鹿な事を。
俺は自分の考えを鼻でせせら笑った。だが、普通でないこの状況を説明する事が出来ない。
どうして俺だけが?
有希恵たちはどうした?
ここはどこなんだ?
またしても思考が同じところを行き来する。
手に持ったスマホが圏外なのは解っているが、家族LAINEを開いた。使用が出来ない。3人の電話番号へショートメールを送信するがエラーになった。勿論電話も繋がらない。
隕石落下でもしも死んでいたとしてここが天国での地獄でも、スマホを持っているのだから、もしかしたら何かの弾みで繋がるかもしれない。そう思い何度も繰り返す。
草原の真ん中で、繋がらないスマホの操作を繰り返す。
集中していて背後の物音に気がつくのが遅れた。
気配に振り向いた時には、すぐ後ろまで大きな馬が来ていた。馬の背中には人が跨っていた。
誰もいない草原と思っていたが、自分の背後から馬に跨った人が数名、近づいて来ていたのだ。
日本人ではない。アングロサクソン、欧米人のような彫りの深い顔立ちにグリーンの瞳、髪の色はわからない、鉄のヘルメットのような物を被っていた。
そして、腰には鞘に入った剣がぶら下がっていた。
俺は、いったい何処に来てしまったのだ。
これが、俺、田浦創一が異世界に転移した始まりの瞬間であった。
この時の俺はまだステータスが見える事も知らなければ、ゲームのスキルが使える事も知らない。ただの迷い人であった。
田浦創一(たうらそういち)
年齢:45歳
ゲーム:LAFクラン:月の砂漠 血盟主
ゲーム種族:火エルフ lv91
住所:愛知県名古屋市
家族:妻:有希恵、娘:美咲(19歳)、美穂(22歳)
気がつくと俺は地面に倒れていた。
「何が、起こった……?」
俺は、短い草の上に手をついて起き上がりながら、口から漏れた自分の呟きが脳に伝わるまで時間がかかった。
「おかしい、自分はTDL、東京デスティニーランドの駐車場にいたはずだ。足元に草なんて……」
起き上がって見回した周りは360度の草地であった。ただの草むら。先程まで居た場所にあった沢山の車は、影も形もない。
心臓が早鐘のように脈打つが、大きく息を吸って何とか呼吸を整える。
「すぅ……はぁぁぁ。自分は田浦創一。45歳。愛知県在住。よし、記憶はちゃんとあるな。今日は家族とTDLに……」
そこまで口にした後、激しく周りを何度も見返す。
「有希恵! 美咲!美穂!どこだ!皆はどこだ!有希恵ぇぇぇ」
俺は妻と娘達の名前を叫び、近くの草地に倒れていないか懸命に捜した。
「お、落ち着け。何がどうしてこうなった!いや、そもそもここは何処だ?TDLの駐車場どころか、ランドもホテルもワイ浜駅も見当たらん。有希恵ぇぇぇぇ!美咲ぃ」
妻や娘の名を呼ぶが、草むらから起き上がってくる人影はない。草むらのど真ん中で俺は立ち止まり、ただボーゼンと佇んだ。
頭の中は、昨日の出来事や、今朝の記憶、気を失って目覚める直前までの出来事が目まぐるしく渦巻いていた。
千葉のワイ浜へは昨日着いた。愛知を車で出発して夕方にはデスティニーホテルに到着、チェックインをした。有希恵と美穂と美咲の家族4人で2泊3日の旅行だった。美咲がTDLに行きたがったのだ。美穂の職場が突然閉鎖された事を聞いた美咲がこの機会に家族で行こうと言ったのだ。
草原の真ん中で一生懸命記憶の整理をした。普段から冷静沈着な男と言われた俺だったが、この状況で落ち着けと言う方が無理だ。
目の前にあったはずの車は見当たらない。ポケットを弄りスマホを出すが圏外になっている。
長女の美穂と次女の美咲、そして妻の有希恵と俺の家族4人でパークへ入場した。美咲達に急かされてアトラクション乗り場へ向かう途中で、美穂が車に忘れ物をしたと言い出した。
「ヤッバイわぁ、日焼け止め、車の中に置いてきたわぁ」
「お姉ちゃん、夏は持ち歩かなアカンやん」
「さっき、降りる直前に使こたんよ」
「お姉ちゃんが持ってる思たから、うち持ってこうへんかったわ」
その会話を聞いていた妻も加わる。
「自分らちゃんと持ってこんとアカンやろ」
「お母さん、持っとる?」
「うちは持っとらん。美穂のを借りよ思たから」
「えええ、お母さんも一緒やんか。ねぇ、お父さん取って来て」
「そやね」
「オトンの出番やでw」
女3人で徒党を組まれると、俺はもう従うしか無い。
「わかった。他に車から持ってくる物はあるか?」
「日焼け止めだけぇ」「ないー」
あの時俺は、アトラクションへ向かう3人と分かれて、駐車場へ向かった。
降りた時に覚えて置いたクマのマークを探して、無事にうちの車を見つけ走り寄った。
そこで記憶が途切れた。
倒れたのはどう考えてもパークの駐車場だ。こんな草原ではない。
では何故?
……誘拐?スマホの時計を見ると、日付も時間もあの時から対して進んでいない。誘拐されてこんな人里離れた草原まで短時間で連れてこれるとは思えない。
瞬時に場所を移動した?
それにしても何故俺が?……俺だけか?
ふと先日の会話を思い出した。
そうだ、美穂の職場が突然閉鎖されたのは隕石の噂のせいだと言っていた。取引先の店が次々と閉店し、そのせいで店舗の縮小をされたとか言っていたな。ネットでも隕石のニュースは氾濫していた。日本では表立っての告知などは一切されてなかったが、隕石落下だか衝突だかの噂は海外ではかなり取り上げられていた。国内では、あくまで噂のうちだが、政治家や富裕層がシェルターに避難をしたとか……。
まさか…………。
まさか本当に、隕石の衝突があったのか?そして俺は死に、この世界に輪廻転生、いや、別の世界へ飛ばされた?
何を馬鹿な事を。
俺は自分の考えを鼻でせせら笑った。だが、普通でないこの状況を説明する事が出来ない。
どうして俺だけが?
有希恵たちはどうした?
ここはどこなんだ?
またしても思考が同じところを行き来する。
手に持ったスマホが圏外なのは解っているが、家族LAINEを開いた。使用が出来ない。3人の電話番号へショートメールを送信するがエラーになった。勿論電話も繋がらない。
隕石落下でもしも死んでいたとしてここが天国での地獄でも、スマホを持っているのだから、もしかしたら何かの弾みで繋がるかもしれない。そう思い何度も繰り返す。
草原の真ん中で、繋がらないスマホの操作を繰り返す。
集中していて背後の物音に気がつくのが遅れた。
気配に振り向いた時には、すぐ後ろまで大きな馬が来ていた。馬の背中には人が跨っていた。
誰もいない草原と思っていたが、自分の背後から馬に跨った人が数名、近づいて来ていたのだ。
日本人ではない。アングロサクソン、欧米人のような彫りの深い顔立ちにグリーンの瞳、髪の色はわからない、鉄のヘルメットのような物を被っていた。
そして、腰には鞘に入った剣がぶら下がっていた。
俺は、いったい何処に来てしまったのだ。
これが、俺、田浦創一が異世界に転移した始まりの瞬間であった。
この時の俺はまだステータスが見える事も知らなければ、ゲームのスキルが使える事も知らない。ただの迷い人であった。
田浦創一(たうらそういち)
年齢:45歳
ゲーム:LAFクラン:月の砂漠 血盟主
ゲーム種族:火エルフ lv91
住所:愛知県名古屋市
家族:妻:有希恵、娘:美咲(19歳)、美穂(22歳)
320
あなたにおすすめの小説
ガチャから始まる錬金ライフ
盾乃あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。
手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。
他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。
どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。
自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる