俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香

文字の大きさ
299 / 299

異世界転移

しおりを挟む
『異世界転移』

 やまと商事の本社ビルの警備員(古池)達が視点の話です。

 話は遡ること大災害の初期、火山噴火の後くらい。カオがタウさんらと合流後、日比谷のビル群に残ってる人達が気になり、スリープ魔法で眠らせて埼玉のどこかに運んだ直後の話。

-------



「知らない天井だ……」

 目が覚めてまっさきに映ったのは見た事の無い天井だった。
 見た事のない天井、見た事のない壁、見た事のない床……、つまり知らない部屋だ。俺はそこに転がって寝ていたようだ。


 昨夜はどこで就寝したか考える。
 やまと商事ビルの39階のゴージャスな役員室だったはず。ベッドは社員が使っているが、床の絨毯でも十分にふかふかだった。最近はずっとその上層階のフロアで過ごしていた。

 あの隕石落下後の津波で東京が沈み、俺たちはビルに残された。死ななかった事を喜んだのだが、いつまで待っても救助は来なかったのだ。
 水が引かないので地上を歩いて移動する事も出来ない。仮に出来たとしてもどこに行けばいいんだ。

 家族の安否も気になるが、俺は心の奥で既に諦めていた。


 ビルの屋上に書いたSOSも、火山が噴火して降ってきた火山灰で隠されてしまっていた。
 屋上から見える他の高層ビルも似たようなものだろう。たまに屋上に人が動いていたのが見えた。

 こちらの屋上から見える警視庁や警察庁のビルの屋上もヘリコプターはないままだった。何処かへ飛んでいったまま戻らない。


 やまと商事は、初日に亡くなった社員が大勢いた。もしかしたら災害直後は生きていたかも知れないが、崩れた壁や天井で身動きが取れないまま亡くなった人も多そうだ。
 俺たちはとにかく生きている人をどうにかするので手一杯だった。

 ビルの各フロアから災害物資を掻き集めた。
 それでも物資は減る一方で、最近は個人のデスクやロッカーも漁らせてもらっている。

 そうして集めた食糧も底をつきかけている。寒さも厳しくなってきた。
 しかし、火事を出したらお終いだ。フロア内では火気厳禁とした。屋上に紙や資料を集めて夜間に燃やしている。
 真っ暗な中に屋上の火が見えて救助にきてもらえないだろうかと考えたのだ。わかってる。そんな奇跡は起こらない。


 救助は来なかった。
 俺は、俺たちはここで終わるんだな。そう思った。
 40階から屋上へ上がる階段の壁に寄りかかって、家族を思い浮かべていた。

 そうだ、昨夜は階段にいた事を思い出した。思い出したからと言って今ここに居る謎は解けない。……死んだ、のか?俺……。

 俺は寝たままの姿勢で周りを見回した。学校の教室のような場所だ。天国か地獄か知らんが死後に行くのは教室なのか。
 そもそもいつ死んだのだろう。

 実は全部夢だった、なんて事はないか?
 警備職に就いたのも日比谷のやまと商事へ派遣されたのも全て夢、実は俺はまだ学生だとか。

 だがそれにしても自分が学生時代の頃の校舎とも違う。


「やはり、知らない天井だ……」

「ええ、どこでしょうねここは」


 驚いて慌てて身体を起こしたら、俺の足元に見慣れた顔が転がっていた。


「古池さん、ここどこですかね」


 転がったまま腕組みをしたその男は警備仲間だった。


「いや……知らんよ。俺も今目が覚めた」


 警備員仲間の後輩だ。という事は、やはり俺はやまと商事の警備員であってるんだよな?日比谷の、あの水没した都市のビルに居たんだよな?
 てことは、隕石落下も津波も現実だったのか。
 学生時代にタイムリープしたわけではなかったのか。そうなると何故この校舎に居るのかはさっぱりわからない。


「ここ、学校ですよね」

「そうだな。ほら、あそこ、端に机を寄せてある」

「机がちっちゃいなぁ、小学校かな? ここが学校だとして、どこの学校だろう?………確か銀座方面に小学校がありましたよね、あそこかな?……でも、何で俺たちそこに居るんだろ……」

「銀座側もデカイビル以外は水没してただろ。あの小学校も水の下だ」

「そっかぁ、あそこはせいぜい3~4階くらいの校舎でしたね。なら完全に水の中かぁ。じゃ、ここどこです? 10階以上の高さのある校舎の学校なんてあんま聞かないなぁ」

「もしかして夜のうちに水が引いたんだろうか?」


 俺は慌てて窓へと駆け寄った。
 窓ガラスを開いて地上を見ると、なんと地面が見えた、この学校の校庭だろう。

 ここは校舎の3階だった。
 しかしよく見ると地面は水が引いたと言うよりも最初から水は無かったかのように火山灰がうっすらだが積もっていた。

 どう言う事だ?
 謎だらけだ。

 寝ている間に知らない場所にいて、そこは津波なんて無かったかのような場所だ。


「ここは、日比谷……都内ではないのか?」


「古池さーん、はい、これ」
 
 窓から頭を出していた俺は背後から後輩に差し出された物を受け取った。ミネラルウォーターのペットボトルとプロテインバーだ。


「どうしたんだ、これは……」

「今、廊下で配ってました。隣の教室に置かれていたそうです。あ、隣にはやまとの社員さん達がいっぱい居ますよ。みんな寝てる間に連れてこられたみたいです」

「寝てる間に……? 誰が? どうやって、何のために……」

「さあ? 神様ですかね?…………あっ、俺、わかっちゃったかもです」

「え……」

「異世界に転移したんだ! 俺たち異世界に転移したんですよ! きっとそうだ!」


 前からこの後輩は、そう言う小説を好んで読んでいて休憩時間にはよく話を聞かされた。


「これは!集団転移だ、どこかの国に召喚されたのか、ステータスオープン!ステータス! おかしいな…出ないぞ? そうかステータス出ない系の転移だな」


「……ここは日本だぞ?」


 呆れたような声が背後から聞こえて振り返ると同僚だった。


「少し前に目が覚めてそこらを回ってきた。どうやら俺らは何かが起こってあの水没した都市から助け出されたみたいだ」


 同僚の話によると、この学校の校舎内にはやまと商事の社員らが居るらしい。
 隣の棟の校舎や体育館には別のビルで生き残ってた人達が、やはり寝ているうちに運ばれたらしい。

 そして、同僚から聞かされた中で1番俺を狂喜させたのは、ここが埼玉県だと言う事だった。
 埼玉は俺の自宅がある。家族が……もしも無事なら家族が居るはずだ。

 もう俺には『誰が』とか『何故』なんてどうでもいい事だった。


「行って来い」


 同僚に背中を押されて俺は走り出した。
 ずっと、行きたかった、戻りたかった我が家へ。






-------

永らくのご愛読ありがとうございました。
『俺得リターン』の本編、番外編ともに、ここで終了となります。
しおりを挟む
感想 212

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(212件)

ふぁんとむ
2025.07.10 ふぁんとむ

n周目完走👍
やっぱカオるんマルクん💕好きだな

2025.07.10 くまの香

ありがとうございます😊

解除
miyamasu
2025.06.13 miyamasu

ついに完結おめでとうございます。
実は、「俺特:の最初の投稿の20話
ぐらいまで読んでから、続きが
どうしても纏めて読みたくなり
作者様のコメントから
どうやらカ◯◯ミで完結まで
したものをこちらで再投稿し
ているらしいと知り
検索して「カ」の方で
リターンも含め全て3月中に
読み終わってました
とても、魅力のあはる作品で
話はもう知っているのですが
アルファで更新がでるたびに
3回の応援CMを回してました。
個人的にには「カ」よりアルファ
の方が字の大きさとか行間とか
が読みやすいし、
「カ」のインセンティブがどういう
利率か知りませんが
読み終わった後に手軽に3回のCM
を回せるアルファは、作者応援が
やりやすいと思います。
では、もうカオるんの物語は
おしまいですが
きっとアネ姉やマルクと一緒に
幸せに生きて行けると思います。







2025.06.13 くまの香

ありがとうございます😊
嬉しいです。
あちらで読んで、かつこちらでも応援していただけるなんてとても嬉しく思います。
物書き初心者の作品でかなり読みにくい場所も多かったと思います。
最後まで読んでいただけるだけで充分嬉しいのに、本当にありがとうございました。

解除
Conanlove
2025.06.08 Conanlove

完結おめでとうございます😊お疲れ様でした✨楽しかったです!!次回作を楽しみに待っています。カオが好きでした。頼れる大人で、周りを助けてくれて周りを幸せにしてくれる。でも、ちょっと抜けている、大人なのに中は残念な子供が良いですね〜周りが助けるのが良いです!本当に良い人達がいっぱいで、ほっこりとしました✨楽しかったです!

2025.06.08 くまの香

ありがとうございました😊

解除

あなたにおすすめの小説

ガチャから始まる錬金ライフ

盾乃あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。