加藤くんと佐藤くん

春史

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 クリスマスイブ当日。隣駅でケーキを選び、夕方からスーパーで鍋の買い出しをした。少し和風を離れようとイタリアントマト鍋というものにした。クリスマスらしく具材は鶏肉。あとは適当にそれぞれが入れたい物をカゴに放り込む。
「トマト鍋っておいしいのかな?」
「ネットに出てたからきっとおいしいよ」
 佐藤は会ったときからうきうきしているのが丸分かりだった。大の大人が子供の様にキラキラと目を輝かせてケーキを選び、スキップでもしそうな程嬉しそうに歩いた。
「佐藤くんてときどきすごく子供みたいだね」
「そう? 大人っぽい方が好き?」
 途端にきりっとした顔になったので加藤は爆笑した。
「笑い過ぎだよ、加藤くん──あ、」
 スーパーを出たところで橘先輩が美人な女性と立っていた。
「悠季と佐藤くんじゃん」
「お疲れ様です」
 二人でぺこりと頭を下げると女性もぺこりと頭を下げ、橘先輩の後ろに隠れた。
「あ、彼女さんですか…?」
 加藤が尋ねると橘先輩が違う違うと否定する。
「あー俺の弟」
「弟?!」
 加藤と佐藤の声が揃う。ボアコートにロングスカート、ブーツを履いている人物はどう見ても女性にしか見えない。唖然としていると橘先輩が苦笑した。
「これウィッグ。昔からお洒落とか好きなんだなーて思ってたけど、久しぶりに会ったらこんな感じになってて俺もびっくりだよ」
「兄ちゃんいこ。邪魔しちゃ悪いよ」
 高めだが確かに男の声だ。加藤は再度驚いた。
「じゃあね。そっちも楽しんできなよ」
 そう言って二人は駅へ歩いて行った。
「弟さんすごかったね」
「うん、女の子にしか見えなかったよね…橘先輩も美形だから、言われてみたら似てたかも」
 自宅へ向かっていると佐藤がそういえばとスーパーの袋を見ながら言った。
「ごめん、橘先輩にばれちゃったよね」
「あ、いや先輩は大丈夫…ていうか、ごめん!」
 加藤は佐藤に手を合わせて謝罪した。
「佐藤くんに告白されたとき、先輩に相談したんだ。佐藤くんの名前は出してないけど…勝手にごめん!」
 ちらりと佐藤を見ると彼は笑顔のままだ。
「俺は大丈夫だよ。周りにバレても困ることなんてないし。加藤くんが橘先輩に話したのなら全然気にしないよ」
「…そう? それならよかった」
「先輩は何か言ってた?」
「ううん、俺がいいなら気にしないって」
 そっかと佐藤は呟くとお腹を押さえた。
「お腹空いてきちゃった。早く帰って準備しよ」


「トマト鍋おいしかったねー」
「ほんとおいしかった。ケーキ食べれる?」
「食べる!」
 佐藤が手を挙げ元気に返事した。先に片付けちゃおうかと食器を運ぶと佐藤が洗うよと言ってくれたので任せてケーキとコーヒーを準備する。普段は飲まないドリップコーヒーにお湯を注ぐといい香りがした。
「洗ってくれてありがと」
「用意してくれたんだし当然だよ。コーヒーいい匂いだね」
 ケーキをお皿に乗せ机に置いた。いただきますと手を合わせ食べ始める。
「おいしいー! ホールで買ってもよかったかなぁ」
 佐藤はチョコレートケーキを頬張りながら嬉しそうに言った。
「二人じゃ食べきれないんじゃない」
 加藤はフルーツタルトを食べながら答える。
「小さいサイズだったら明日でちょうど食べ切れたかも! 来年はそうしようよ!」
 平らげた彼はそう言ってから一瞬固まって加藤を見た。来年はどうなっているかわからないかと思っているんだろうと佐藤の表情から読み取り、加藤はにこりと彼を見た。
「うん、来年はそうしよっか。今年はプレゼントもなしにしたし、次は何か交換しよ」
 佐藤が涙目で加藤の隣に移動する。
「加藤くん、ありがとう。大好きだよ」
「お、俺も…」
 好きだよと続けるつもりが佐藤の唇で塞がれた。突然のことに目を丸くして、頬に添えられている佐藤の手を離そうかと加藤も手を伸ばすが、代わりに彼の頬に触れ受け入れた。佐藤の舌が口内に侵入し、そっと加藤の舌をなぞった。互いの舌が絡み合う感触にキスってこんなに気持ち良かったっけと頭がぼんやりする。
「…っ、ん、…んん?!」
 佐藤の手が服の中に侵入して脇腹を撫でた瞬間、びくりと体が跳ねた。
「ちょ、ちょっと待ってっ」
 どんと佐藤を引き剥がし、息を整えながら彼を見るとお預けを食らった犬ような顔をしている。
「ご、ごめん。それはまだちょっと…心の準備が…」
「そうだよね、ごめん。じゃあもう一回キスだけ…」
 それならと目を瞑ると触れるだけの優しいキスをして、彼は加藤をぎゅっと抱き締めた。
「俺、今なら死んでもいいや」




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