春史

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怖い夢

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 マンションに入るといつもと様子が違った。所々消灯されているのか全体的に薄暗く、奥で蛍光灯がチカチカ点滅している。エレベーターも止まっているようだ。管理人は不在だろうか。
「なんか怖くない?」
 隣で従姉妹であるすみれが言う。確かにホラー映画にありそうな光景だと頷く。仕方なく階段を登ろうかと進んだところ、振り返ったすみれが小さく声を上げた。
「誰かいるっ」
 そちらを向くと、入口に髪の長い見たことがない女性が立っていた。暗いため表情までは見えない。が、見た瞬間ぞわりと鳥肌が立ちこちらを見ているのが直感でわかった。
「行こ! なんかやばい!」
 すみれと二人で階段を駆け上がると同時に、ハイヒールの音が凄い勢いで近付いてきた。
「やばいやばい! 何あれ!?」
 二人で泣きそうになりながら階段を上る。五という数字が見えた。もうすぐ自宅がある七階に着く。ハイヒールの音は聞こえなくなっていた。
 踊り場から廊下を覗くと、先程の女の人がこちらに歩いていた。近付いてくるそれに体はなく、廊下いっぱいの流血した大きな顔で、目を剥いてすぐそこまで来ていた。慌てて引っ込んで階段の陰に隠れるとそのまま顔は通り過ぎていった。
「何なの?!」
 震えながら家に入ると、白人の四つ子の妹が怯えた顔でこちらを見ていた。
「あなた達も見たの? もう大丈夫、どっか行ったからね」
 椅子に腰掛けている白人の両親に今の出来事を話すと、難しい顔をしている。


 気付くとマンションのロビーにいた。私は白人男性に変わっていて、母の膝に縋り付き爪を噛みながら、外に広がる美しい草原を見ながら呟いていた。
「どうしようまたあいつらがおいかけてくるかもしれないどうしよう怖い」
 ぶつぶつ呟いて爪を噛みながら母の顔を見ると、悲しげな表情で私を見ている。いつの間にか長兄と次兄もいて、唐突にあ、私がおかしいんだって悟った。
 皆が「もう耐えられない」と涙ながらに言う。長兄に外に連れ出された。もう片方の手には猟銃が握られている。次兄は黒人の私の友人を引っ張っていた。先程中から見ていた草原をざくざく進んでいき、マンションが見えなくなった頃、友人が地面に転がされ、長兄が持っていた銃で彼を撃った。
(殺される!!!)
 そう思って私はその場から走って逃げたがぱんっと破裂音が聞こえた瞬間その場に崩れ落ちた。臀部と左足に激痛が走るが、なんとかこの場を離れようと必死で腕で這っていくがどうしようもなく私は撃たれた。長兄と次兄が黒い布で私を目隠しし、どこかへ吊るしているのをいつの間にか離れたところから見ていた。
 統合失調症だったらしい。


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