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997年目
27 光 ※チヒロ
しおりを挟む※※※ チヒロ ※※※
気付いたら涙が出ていた。
黒髪の、10歳の男の子の姿が見える気がする。
顔が見たかったけど、一度もこちらを振り向いてはくれなかった。
セバス先生の話に、私は泣くことしかできなかった。
セバス先生は涙が止まらなくなった私を見て、
「今日の授業はお休みにしましょう」と言って出て行った。
何も出来なかった。
ただただ涙をこぼす私の目を、エルサがタオルで冷やしてくれた。
『シン・ソーマ』
『ソウマ・シン』
前世、私と同じ国に生き、私より何百年も前にこの国に来た『空の子』。
この国に《何を》伝えたんだろう。
この国で、どんな生活を送っていたんだろう。
住んでいた場所は?子孫は?
『彼』のことを知りたくてうずうずしていた。
それは『彼』がこの国で《幸せな》人生をおくったと疑わなかったから。
『空の子』は
『空』に祈りが届いた時に現れる
高い知識を持った
とても大切な、特別な子どもです。
この国で大歓迎されて
それはそれは幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
全員がそうだと思っていた。
貴重な高い知識を持って『空』に降ろされやってきたんだもの。
大切にされて当たり前。敬われて当たり前。
それが当然だと思っていた。
私は、なんて愚かだったんだろう―――――
「――様。チヒロ様!」
「……エリサ。……何?」
私は絨毯に寝転んだまま返事をした。
目にのせられた冷たいタオルと、枕になってくれているジルの身体が気持ち良くて起きられなかったのだ。
しかし、そのジルが勢いよくどいた。
反動でタオルと頭が絨毯の上に落ち、私は渋々起き上がった。
ジルを恨めしく見ると、ジルは…………シンの足元にいた。
シン、と呼ぼうとして躊躇った。
こちらを見ているシンと目があう。
気まずくて笑った。癖なのだ。仕方がない。
けれど
突然ぼろぼろと涙が溢れた。
自分でも信じられない事態に戸惑う。
止めようとしても次々に溢れてとまらない。
どうにもできない。
目の前には王家に忠誠を誓うが故に戒めの名を名乗る騎士。
王家よ、決して愚王の罪を忘れるなと。
蔑まれた『空の子』の名を名乗る騎士―――
何か言わなきゃ、と思ったが嗚咽ばかりで言葉が出ない。
ぼろぼろと
堰を切ったように溢れる涙は絨毯にまで落ちる。
何とか口を開こうとしていたら、シンに先を越された。
「先日、騎士のひとりに子どもが産まれたんです」
―――はい?
何を言い出すのだ、この人は。
「女の子で」
何を
「チヒロ、と名付けたそうです」
4
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