この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)

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998年目

16 覚醒 ※空

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 ※※※ 空 ※※※



ドアがノックされた。

屋敷の一室。客間である。

ベッドのすぐ横に置かれた椅子に座り、横たわるテオを見ていたシンは名残惜しそうに立ち上がるとドアを開けに行く。

そして―――。

「――セバス?」

開けたドアの外にいたセバスを認めて訝しんだ。

しかしそれよりも。

「テオ」

聞き取った声に、シンは驚いて部屋の中を振り返る。

「チヒロ様?―――セバスっ!」

セバスは深く頭を下げる。

「申し訳ありません」

「お前……っ!!チヒロ様っ!近づくな!」

遅かった。

身長差が大きいので、セバスの横にいた小さな《少年》を一瞬見逃したのだ。

セバスとのやりとりの間にするりと横を抜けられ、声の主はもうベッドに横たわるテオにあと一歩の所にいた。

シンは舌打ちして後を追い、テオに触れようとしていた彼女の腰に腕をまわすと勢いよく自分の方に引き寄せた。

「触れるな!」

チヒロの被っていた帽子がぱさりと床に落ちた。
彼女の長い漆黒の髪が現れる。
後ろからシンに抱えられたチヒロだが、その目は目前のテオに釘付けだ。

シンの腕から出ようともがいたがシンは離さない。
チヒロはたまらず叫んだ。

「テオ!」

「チヒロ様。……部屋を出てください」

シンの言葉にチヒロは首を横にふると、テオを見たまま震える声で言った。

「シン。テオの病気は……治ることは……?」

「――ええ」

セバスに聞いたのかと問われてチヒロは頷く。

「今は……どんな……?」

「……熱が高くて、意識がありません」

チヒロが顔を歪めうつむいた。

「………テオ………」

そしてもう一度テオに視線を戻すと、大きく目を見開いた。

「……シン……あれが病気なの?」

「あれ?」

チヒロは躊躇いつつテオを指差した。

「テオの身体を覆ってる。黒いシミみたいなの。あれが病気?」

「黒い?」

二人の動きが止まる。

「「まさか」」


「何か見えているのですか?」
「何も見えていないの?」


二人の声が揃った。


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