74 / 197
998年目
44 対立の終わり ※エリサ
しおりを挟む※※※ エリサ ※※※
「何故、《シャナイア様によろしく》なんて言ったんですか?
王太子妃様に《3人で会っているのは内緒》って言われたのを破ってまで」
執務室から部屋に戻る途中。
私は歩きながら、少し後ろにいるチヒロ様にお聞きした。
チヒロ様の横にいるジル殿も、チヒロ様を見ている。
「大丈夫よエリサ。《内緒》は第2王子とレオンが仲が悪かったからだもの。
もう時効よ」
「それは……そうかもしれませんが。
あのご夫婦は仲がお悪いんですよ。
《内緒で会っていた》と知らされた第2王子は、絶対にシャナイア様に詰め寄りますよ?
シャナイア様がどれほど怒られるか。第2王子が激昂したら何をされるか……」
私はチヒロ様に手を伸ばした第2王子の様子を思い出して身震いした。
「ねえ、エリサ。
シャナイア様から一度でも第2王子に手をあげられたと聞いたことがある?」
「……それは……ないですけど」
「私もないの。一度、ものすごく怒った第2王子に《手を取られた》って聞いたことはあるけどね」
「――」
チヒロ様の言いたいことはわかった。
第2王子は激昂しても、シャナイア様に手をあげたことは一度もないと言いたいのだろう。
そういえば中央での対立の時は……。
第2王子はレオン様に暴力をふるった直後だった。
だから第2王子がチヒロ様に手を伸ばしてきたのを見た瞬間。
私は第2王子がまた暴力をふるう気なのだと疑いもしなかった。
それでかわりに自分が殴られる覚悟でチヒロ様を庇った。
だけど。第2王子は何もしなかった。
伸ばした手はそのままで、私に触れさえしなかった。
もしかしたら第2王子はレオン様以外には。女性には。
チヒロ様には手をあげるつもりではなかった?
私は、チヒロ様が第2王子の処分をできるだけ軽くしてもらえるようにと
レオン様には内緒で王太子妃様を通じて国王陛下にお願いしたのを思い出した。
あれは第2王子妃のシャナイア様のためだと思っていたけれど…………。
チヒロ様はジル殿を撫でながら言う。
「それにシャナイア様は喧嘩の様子をとても詳しくお話ししてくださったけど。
聞いて、どう思った?」
私は首をひねった。
「どうって。
顔を合わせれば喧嘩になるなんて本当に仲がよろしくないんだなと。
あとは。あの第2王子相手に、言われた以上に言い返すとお聞きして。
シャナイア様はとても気の強い方だ、と思いましたけど」
チヒロ様はニコリと笑った。
「エリサ。本当に嫌いだったら顔も合わせないし口もきかないんじゃない?」
わからないではない。わからないではないが……これにはさすがに反論した。
「でも。……その。……第2王子は……亡き王妃様のことを……」
「ああ、あれ。うーん。昔はわからないけど今は。
レオンの手前、もう意地で言ってるだけじゃないかなあ」
「え?」
「《愛していた》って過去形だったじゃない」
「――」
「ね?」とチヒロ様に同意を求められ、ジル殿は頷くように首をまわした。
それを見たらつい笑ってしまった。そうか…………そうかもしれない。
「少なくともシャナイア様は、第2王子が嫌いじゃないと思うわよ。
――どこがいいのか、さっぱりわからないけど」
チヒロ様が肩をすくめて言い、私は何度も頷いた。
「同感です」
「でも、ならきっかけはなんであれ、いっぱい話はしなくちゃね」
「そうですね。《内緒》がバレた、なんて最高のきっかけになりそうですね」
私はもう一度頷いた。
すると―――。
「エリサも頑張ってね。意地をはってると、すぐにおばさんになっちゃうわよ。
私くらいになってから後悔しないようにね」
「―――」
あの男のことを言われているのだとわかって声が出ない。
なんでわかったのだ。
副隊長の屋敷でちょっと見ただけなのに。
何故お見通しなんだ。
私に向けられているのは陽だまりみたいなあたたかい微笑。
……全く本当にかなわない。
脱帽だ。
―――おばちゃん、最強。
あの男に、あの場に国王陛下を連れてきてくれたお礼くらいは言いに行ってやろう。
そう決めた。
5
あなたにおすすめの小説
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!
音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ
生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界
ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生
一緒に死んだマヤは王女アイルに転生
「また一緒だねミキちゃん♡」
ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差
アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。
どんなあなたでも愛してる。
piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー
騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。
どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか?
※全四話+後日談一話。
※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。
※なろうにも投稿しています。
廃城の泣き虫アデリー
今野綾
ファンタジー
領主の娘だったアデリーはある日家族を殺され育った領地から命からがら逃げ出した。辿り着いた先は廃城。ひとり、ふたりと住人が増える中、問題が次々とおこって…
表紙はフリー素材です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる