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999年目

07 密会 ※エリサ

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 ※※※ エリサ ※※※



次の日。

チヒロ様は、昨日より少し早めに花畑へ向かわれた。
時間が空いたので、隊長と会う前に植物の世話をしておこうということらしい。

今日は庭師もいて、チヒロ様は庭師から植物の手入れの方法を聞きながら一通り花畑を見てまわられた。
庭師から咲いていた花を少し切って貰ってご満悦だ。

それが終わると、近くの木の下へと移動する。
チヒロ様が座られ、しばらくすると隊長がやってきた。

―――思っていた通り、一人ではなかった。

私は礼をしたままお迎えをする。

花に夢中で気が付かなかったチヒロ様だったが、
私が告げると、こちらへとやって来る二人を認めて慌てて立ち上がった。

狼狽えながらもお辞儀をされる。

私の予想を副隊長だけでなく、チヒロ様にもお伝えしておくべきだったかと申し訳なく思う。
隊長め。恨んでやる。


が。


「顔をあげられよ」とのお声に従い、顔を上げたチヒロ様は笑顔だった。

「ようこそ、国王陛下」

―――信じられない。

私は感心した。

この方は、どうして全く動じないのだろう。
そして頭の中で考える。

今はおばちゃんかな?
それとも、おばあちゃんかな?

私がそんなことを考えている間に、チヒロ様は国王陛下に近づくとなんと!
さっき庭師から切ってもらった花を差し出した。

―――うん。絶対、おばちゃんだな。

「どうぞ。珍しい花をいただいたので植えてみたのです」

「私に?」と言って受け取られた国王陛下の方が戸惑ってみえた。

「はい。綺麗でしょう?」

「……そうだな」

「あちらの花畑にはもっと色々な種類があるんですよ。ご覧になりませんか?」

そう言ってチヒロ様は花畑の方に顔を向けた。

と。

「……シーナ」

国王陛下が呟かれた。

チヒロ様は笑顔で振り返る。

「はい、なんですか?ラグラスさま」

意識がぶっ飛んだ。


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