97 / 197
999年目
21 出会い ※チヒロ
しおりを挟む※※※ チヒロ ※※※
医局に飛び込んだ私たちを見て、何人かいた医師たちが悲鳴を上げた。
ジルを連れてきて、驚かせてしまったようだ。
私は謝罪をしつつ部屋の中をぐるりと見回した。が、会いたい医師の顔はない。
「チヒロ様?」
呼ばれて見ると、奥に見習い医師のトマスさんがいた。
急いで駆け寄りながら聞く。
「トマスさん!突然ごめんなさい、ロウエン先生は?
大至急お会いしたいんです!」
「はい?あの。でも、ロウエン先生は今、来客中で……」
医局の奥には応接室が3つある。
その手間にいたトマスさんが、湯気のたつティーカップを乗せたトレイを持っている理由がわかった。
お客様は見えたばかりなのだ。
「そんな。どうしよう……」
マグカップを持つ手に力が入った。
ロウエン先生に早く《これ》を見ていただきたいのに……
焦る私に、静かな声が言った。
「どうぞ『空の子』様。私は後でかまいませんので」
よく知っているようで、聞き覚えのない声だった。
ゆっくりと顔をあげる。
その声の主をトマスさんの後ろに見つけた私は、息を呑んだ。
そこには銀色の髪に小麦色の肌の、長身の男性が立っていた。
その瞳だけが、私の知っている人の色より濃い青色だ。
雲ひとつない、夏の青空のような青―――。
ひと目で誰だかわかった。間違えようがない。
「シンのお義兄さん……」
本来ならちゃんと《サージアズ卿》とお呼びするべきなのに、私の口から出たのはそれだった。
しかしシンのお義兄さん――サージアズ卿は、それを気にするふうでもなく、静かな笑みを浮かべて言った。
「どうぞお先に。お急ぎなのでしょう?」
私はようやく、ロウエン先生のお客様がサージアズ卿だということに気がついた。
それを裏付けるように、サージアズ卿が開けた医局の最奥にある応接室のドアの向こうからロウエン先生が顔を出す。
私はようやく会えた人に駆け寄った。
「ロウエン先生!」
「チヒロ様?どうしたのですか?何か――」
「――《これ》を!生きているうちに、どうしても見ていただきたくて!」
マグカップを差し出した私に、ロウエン先生は戸惑ったようだ。
自分に向かって差し出されたマグカップと、そして私の後ろ。
多分、医局の入り口のドアの横にいるのだろうエリサとジルの方に目をやった。
どう納得してくれたのか。
サージアズ卿に最奥の応接室で少し待ってくれるように頼むと、私達をその隣。
手前の、真ん中の応接室に案内してくれた。
私はサージアズ卿にお礼を言って、エリサとジルと応接室に入った。
3
あなたにおすすめの小説
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!
音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ
生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界
ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生
一緒に死んだマヤは王女アイルに転生
「また一緒だねミキちゃん♡」
ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差
アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。
どんなあなたでも愛してる。
piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー
騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。
どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか?
※全四話+後日談一話。
※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。
※なろうにも投稿しています。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる