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999年目
22 顕微鏡? ※チヒロ
しおりを挟む※※※ チヒロ ※※※
「この水の中に小さな虫がいて、それが黒いシミのように見える、と」
「はい。どういう事なのかはわからないのですが」
「ふむ」と、マグカップを回して。
ロウエン先生は「ひとまず見てみましょうか」と言ってトマスさんに何やら器具を持ってくるように言った。
少しして、トマスさんが器具が入っているらしい箱をひとつ持ってくると。
ロウエン先生はトマスさんが持ってきた箱の中から小さな道具を出し、私にそれでその黒いシミに見える虫を取るように言った。
私は感動していた。
どう見てもスポイトだ。材質は……よくわからないけど。
するとトマスさんが持ってきた箱の中身は顕微鏡?だよね?
私はトマスさんが準備するのをじっと見ていた。
箱から出てきた顕微鏡?は。似てはいる。本体は木製?真上から覗くものらしい。それはわかる。
でも形に馴染みはない。え、これ、『空の子』が伝えた物?それとも、この国独自の物?
それはわからないけど……あったんだ。顕微鏡?この国に。
顕微鏡?に見惚れていた私はトマスさんに即され、慌てて黒いシミに見える虫をマグカップからスポイトで取り出した。
動きが鈍いから簡単だった。
大丈夫?まだ生きてる?
トマスさんが私からスポイトを受け取り、中身を顕微鏡?に入れるとロウエン先生が覗く。
………どう見えているんだろう。
私は黒いシミに見える虫より顕微鏡?の方が気になって仕方がなかった。
暫くして。
ロウエン先生は「初めて見ましたが……確かに虫の一種のようです」と言った。
「詳しいことは調べてみないと何とも言えませんが、何らかの虫の幼虫かもしれない。
とにかく、これは水中にいる虫のようですね」
―――見たい!
「あの、私も見てもいいですか?」
「それは構いませんが……しかし多分……」
ロウエン先生に許可をもらった私は嬉々として顕微鏡?を覗き込んだ。
しかし……
私はがっくりと肩を落とした。
「……ロウエン先生。私、今ほど『仁眼』を恨めしく思ったことないです……」
ロウエン先生は大笑いした。
「黒いシミにしか見えなかったのでしょう?」
その通りだった。
虫が小さすぎるのか。私には単に大きく映った黒いシミにしか見えなかった。
顔をあげたらエリサと目があった。
好奇心溢れる顔をしているエリサに聞いてみる。
「エリサも見る?」
「え、いいんですか?」
エリサは目を輝かせた。
そうだよね、多分、顕微鏡?を覗く機会なんて滅多にないだろうし。
「それは構いませんが……」
ロウエン先生がそう言ってくれ、エリサも嬉々として顕微鏡?を覗き込んだ。
――と思ったら、何故かすぐに飛び退いた。
顔が青い。
「エリサ?どうしたの?」
「……チヒロ様。私、今ほど『仁眼』が羨ましいと思ったことありません」
そう言って、エリサは両腕をすごい速さでさすっている。
どうしたのだろう。
「……そうでしょうな」とロウエン先生が呟いた。
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