この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)

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999年目

26 サージアズ卿 ※チヒロ

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 ※※※ チヒロ ※※※



はたして応接室から出て見ると。

そこにはサージアズ卿とそして、シンがいた。

話をしていたらしい。
並ぶ二人は銀の髪色も背格好もそっくりで、まるで双子のようだった。

ジルがシンのところへ行き、シンに顎を撫でてもらうと満足そうに目を細めた。

ロウエン先生がサージアズ卿と話をし始めたので、私はジルの後を追い先にシンのもとへと向かった。

「シン。ごめんなさい、ジルを呼んでしまって」

「ジルは私のものではありません。
私に謝る必要はない。ジルはジルの意思で貴女のところに行ったのでしょう?」

まあそうなんだけど。
それでも、シンにひとこと言っておかなければと思わせるものがシンとジルにはある。

私にはジルが大きい犬――シベリアンハスキーにしか見えないからかな。
シンはジルのご主人様というか、何というか……特別なのだ。

「あ、そうだ。ジルが《私たちは医局に行った》と伝えてくれたの?」

「そんなわけないでしょう。エリサの伝言のおかげで知ったのです」

「……そう」

「……まさかジルと私が繋がっているという話を信じていたのですか」

「えっと。信じてたというか。多分わかるかな……と思ったんだけど」

「信じていたんですね。それで試してみた。そうでしょう?」

「ぐっ」

えへへと笑って誤魔化すしかない。
シンはため息を吐いた。

「……確かにジルの様子で、貴女に何かあったのは伝言より前にわかりましたが」

「本当?ジル、すごい!」

良くやっただろう、と言うようにジルは顎をしゃくった。
撫でろと言うことらしい。そうだね、褒めてあげなきゃ。

「ジル。ありがとう。助かったわ」

撫でようとした私よりジルの方が先に動き、私の肩に首をまわした。
頬や首にあたる柔らかい銀の毛がくすぐったくて、私は声を上げて笑ってしまった。

と。

横からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
私は慌ててジルから離れると、そちらに向かって深くお辞儀をした。

「すみません。突然お邪魔してしまって。
ありがとうございました、シンのお義兄さん」

「チ、チヒロ様っ!」

おっと、やってしまった。
エリサの声で気づいて言い直す。

「申し訳ありません。失礼を。サージアズ卿」

「いえ、私の名前をご存知だったのは光栄ですが。
《シンのお義兄さん》のままでいいですよ。
初めてそう呼ばれましたが、新鮮で気に入りました」

「えへへ、ありがとうございます」

エリサとシンが渋い顔をしているけど、見なかったことにしよう。

「それにしても。話には聞いていましたが、『空の子』様は本当にジル殿と仲良しなんですね」

「え?――ああ。はい、犬には好かれる方なので」

さらっと出てしまった言葉にシンの訂正が入った。

「……チヒロ様。何回も言わせないでください。ジルは銀狼です」

「ごめんなさい……」

サージアズ卿はクスクス笑い続けている。笑い上戸なのかもしれない。
熊――いや、近衛隊長さんに聞いていた通り、柔和な印象の人だ。

こういうところは違うんだ。

シンはチラッと見られただけで睨まれた!と思っちゃうもんね。
最初の印象は怖かったなあ……。

見ていたらシンに気付かれた。

「……何か」

「いえ別に」

サージアズ卿はまだ笑っていた。


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