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1000年目
46 新生 ※チヒロ
しおりを挟む※※※ チヒロ ※※※
「この運河を、レオンが?」
「はい。もとから舟で荷を運ぶ川ではあったのですが、よく氾濫する川でもありました。
レオン様は運河整備を提案されて現在、このように」
「そうなんだ」
セバス先生に説明され、馬車の小窓から外を見ていた。
エリサも横から小窓をのぞいて言う。
「それもあってか賑やかな街ですね」
「うん。……人が多いね」
「はい」
《王宮》へ帰る道は行きとは違う道だった。
私は初めて見た川の街に目を丸くする。
街を流れるのは大きな川。
整備され、多くの舟が行き来している。
馬車の中からは見えないが、この街は流通の拠点らしい。
本当に、多くの人がいた。
赤ちゃん。
子ども。
大人。
そして年を重ねた人も多い。
―――この国にはいろんな年代の人がいる。
この国の生活。
馬車。木で作られた船。水を汲む井戸。人の手だけで作った家。
手縫いの衣服。薪を焚べる暖炉。便利な機械はなく……高度な医療技術もない。
前世の《私》が生きた世界で言えば中世初期くらいじゃないだろうか。
でも中世初期の人の寿命はかなり短かったはずだ。
衛生状態が良くなくて。
病気が多くて。
―――私は本当に見えていなかった。
この世界と前世の《私》が生きた世界の大きな違い。
それを何故《植物だけ》だと思ったんだろう。
植物が違うのだ。
虫が違う。もっと小さいものも、きっと違う。
ここは前世の世界とは全く違う世界なんだ。
どれほどそっくりでも
双子が別々の人間であるように。
ここは前世の《私》――千尋がいた世界じゃ、ない。
……この世界が嫌いだったわけじゃない。
それでも、前世の世界にはもう決して戻れないという事実に、どうしようもなく胸が締めつけられる日があった。
けれど
空の青と植物の緑。土の色、水の色。そして様々な人々。
なんて美しいのだろう。
なんて愛しいのだろう。
私は生まれ変わったのだ。ここに。
私は今、ここにいる。
この愛しい世界に。
ここは前世、生きていた世界じゃない。
私は……《千尋》じゃない。
ここにいる私はチヒロだ。
《千尋》の人生は記憶にある。
けれど《千尋》の愛した人たちを、私は《千尋》ほど強くは想えない。
私は新しい生を受けた別の人間だから。
私には、《私が》想う人たちがいるから。
ああ
シンに言われたことがようやくわかった。
いくら《千尋》の記憶があっても私は《千尋》じゃない。
私は私、なんだ。
私はここにいる。
この世界がたまらなく愛おしい。
私は今、この世界の一部なんだ―――。
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