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1000年目
47 報告 ※エリサ
しおりを挟む※※※ エリサ ※※※
「シンと―――レオン?」
副隊長の屋敷の前に立っていた人たちの中にお二人を見つけてチヒロ様が固まった。
その後ろでセバス様と《男》、そして私の動きも止まる。
「レオン様!どうしてここに!」
セバス様が声を上げればレオン様は笑った。
「そんなに驚かなくてもいいだろうセバス。《遊びに》来ていたんだよ。
《身軽》になったしね」
「それは……ですが」
「大丈夫。念のため《チヒロ》や《エリサ》と同じように《僕》も《南》にいるよ。
ちょっと《寝込んで》いるけどね。ロウエンが《看病》してくれているし平気だよ。
《シン》は休みでいないけど」
レオン様が悪戯っぽく言えば副隊長が答えた。
「さすがに《私》は無理がありますので」
「近衛騎士全員を騙せはしないだろうからね」
「はい」
「……二人で迎えに来てくれたんだ」
レオン様と副隊長のやりとりを見ていたチヒロ様が胸に手をあてて言えばレオン様が答えた。
「《遊びがてら》ね」
「ありがとう。嬉しい」
「おかえり、チヒロ」
レオン様が微笑み言えば副隊長も続けて言う。
「おかえりなさい」
胸がいっぱいになったのだろう。
チヒロ様は少し間を置いて返事をされた。
「……ただいま」
そしてその場にいた者たちを見て続ける。
「皆んなも、ありがとう。ただいま。――あれ?テオは?」
「ああ、テオなら君たちより先についた医師二人と部屋にいるよ。
ニアハン医師が攫うように連れて行ってね」
「……さすがニアハン医師。
――じゃあアイシャは?いるんでしょう?」
「……気がついたのですか?」
副隊長が聞けばチヒロ様は当然だとばかりに言った。
「もちろんよ!ちょっと考えたらわかりました」
「……そうですか」
副隊長の目は明らかにセバス様と《あいつ》を睨んだが、二人は気づかぬふりをした。
皆で屋敷に入ればそこには娘を抱いたアイシャがいて、
その姿を見つけるなりチヒロ様は嬉しそうに飛んで行った。
それを見た屋敷の者たちは色々だ。
やった!とばかりに拳を高く上げる者
笑顔で手を打ち合う者
額に手をあて天を仰ぐ者
笑顔の同僚を悔しそうに睨む者
《チヒロ様はアイシャがこの屋敷の者だと気づくか、気づかないか》
どうやら今日が賭けの決着日だったようだ。
全く、とんでもない者たちである。
そのとんでもない者たちの一人である《男》が私の横でしみじみと言った。
「帰ってきたなあ……」
間延びした声が可笑しくて笑った。
見るとアイシャがこちらを見て微笑んでいた。
◆◇◆◇◆
その夜は副隊長の屋敷にそのまま泊まることになった。
明日、目立たない時間に《王宮》に帰るためだ。
チヒロ様と同室で眠るのも今日が最後。
少し残念に思いながら私はベッドに入った。
しばらくするとチヒロ様が起き上がる気配がした。
チヒロ様の日課。
今日あったことを『空』に報告されるのだ。
私はこれまで通り、寝たふりを決め込んだ。
今日は無事に帰ってきたことを報告されるに違いない。
そう思っていた。
だが聞こえたのは信じられない言葉だった。
「死病の特効薬はなんとかできそうです。
これで私の使命は果たせたのではありませんか?
このために……私をこの世界に降ろしたのでしょう?
もう充分だと思うんです。
お願い。返事をしてください。
―――会いたいのです」
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