182 / 197
1000年目
74 始まり 空の独白3 ※空
しおりを挟む※※※ 空 ※※※
高度な技術を持って手に入れた私たちの寿命は1000年。
きっかり1000年なのだから旅立つ日も、時間もわかる。
だから私だけが残ることは分かっていた。
『空』の仲間の中で、私は飛び抜けて若かったのだ。
私だけが地上ではなく、空で生まれた。
私は『空』の仲間が三人寿命を迎えた時に《種》から作られた。
そして1000年の寿命を得る《身体》をもらった者だ。
それは最後の《身体》だった。
丈夫で滅多に怪我や病気をすることなく、ほぼ老いることもなく、1000年という長い時を生きられる《身体》。
もう残ってはいないし、空では作ることもできない。
最後の《身体》をもらって『空』となった私には役目があった。
旅立つ仲間を見送ること。
それと、もうひとつ。
旅立つその日まで、最後の『空』として地上を見守り続けること―――
それが最後に生まれた私に与えられた、重要な大切な《使命》だった。
仲間を全員見送り、私は一人になった。
当たり前だが、一人の時間は仲間がいた時よりも長く感じた。
話せる相手のいないことを残念に思うこともあった。
……解決する方法がなかったわけではない。
『ヒトガタ』を作って仲間の《魂》を入れれば、彼らは《記憶》を持ったままここに――空に戻ってくる。
それはわかっていた。
私だけでなく『空』の全員がわかっていた。
だが、私を含めて『空』の誰もそれを望まなかった。
『空』として生きていたことを忘れ、別の人間に生まれ変わる方を望んだ。
当然だ。
『ヒトガタ』として生まれ変われば、地上の人間たちと同じわずか100年ほどの寿命を生きることになる。
その10倍の《1000年》を生きた、『空』であった記憶を持ちながら。
恐ろしくない方がおかしい。
私は仲間を『ヒトガタ』として呼び戻すことはしなかった。
一人で空にいることを決めた。
1000年の寿命が尽き、旅立つその日まで。
与えられた《使命》を全うすることにしたのだ。
悪い話ではない。
私の寿命は、残り時間だけでも地上の人間より遥かに長い。
その間、仲間と作った地上を存分に見守ることができる。
幸せではないか。
誰もいなくなった《空の空間》で、私は地上を眺め続けた。
青い空、たなびく雲。
穏やかな海、澄んだ湖。
こんこんと湧く水、流れる川。
緑の草木。
様々な形、色の花々。
若い実、熟れた実。
昆虫、鳥、動物
そして、人間たち。
何を見ても面白かった。
行ってみたいとは思わなかった。
《禁忌》だから、だけではない。
1000年の寿命と引き換えに得た身体は《人工的》なものだ。
《カラクリ》に近い。
私は自然だけの地上には相応しくない。
2
あなたにおすすめの小説
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!
音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ
生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界
ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生
一緒に死んだマヤは王女アイルに転生
「また一緒だねミキちゃん♡」
ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差
アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。
どんなあなたでも愛してる。
piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー
騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。
どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか?
※全四話+後日談一話。
※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。
※なろうにも投稿しています。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる