この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜

１０００年目

７６ 始まり 空の独白５ ※空

　※※※　空　※※※



地上では王太子ラシュト・レ・オンが新国王となり国を治めることになった。


新国王は父の《愚王》を大罪人と貶め、記録全てから名を削り墓も作らなかった。
《愚王》側についていた新興貴族も処罰し地位を奪った。

《愚王》の相談役であり第一の側近であった《王都の神殿》の司祭も、《愚王》を誤った方向に導いた罪で追放した。


そして《王家は神殿から脱退し、独自に『空』を崇める》と宣言した。


神殿は『空』を崇める国民の心の支えでもある。
脱退は、表向き《愚王》を産んだ王家の罪の代償、ということになった。

だが当の神殿は《王家の脱退は神殿への罰》だと知っていた。

王家が脱退すれば神殿は《国教の》神殿ではなくなる。
国の保護は受けられない。


これには《地方の神殿》が激怒した。

《王都の神殿》は国中の神殿の頂点だった。

その《王都の神殿》の長たる司祭が《愚王》を誤った方向に導いた。
そのせいで神殿は『空の子』と《王家》だけでなく、《国教の神殿》であるという大きな肩書きまで失ったのだ。

《王都の神殿》がいくら非は《愚王》にあると叫ぼうが、《地方の神殿》は許さなかった。

長年《王都の神殿》に見下されていたこともあって、《地方の神殿》は《王都の神殿》を完全に見限った。
《王都の神殿》から離反し、全く関係なしと宣言し、各地方ごとに活動していくことにした。


『空の子』を失ったと知った臣下を含む国民は混乱した。

人の口は閉じられない。
《王宮》で起こった事態は人々の間に広まり、皆《愚王》を憎み王家への不信をあらわにした。

――だが、そのうちに。
素直に非を認め、国民に頭を下げた新国王は《愚王》の行いを諌めていた『空の子』側であったのだと知る。

多少荒れたが。
新国王ラシュト・レ・オンは大臣や貴族らと協力して、国を治めていった。