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番外編
09 変わりもの ※ベスside
しおりを挟む庭から屋敷に向かって歩いてきたギルは私を認めると小走りでやってきた。
「見てた?聞いて……はないか。ここからじゃ。でも怒ってる?」
「……怒ってないわ」
「良かった。
あ、手は貸してないぞ。
けど、俺は結構あいつらが気に入ってる。
ほんと、面白いのを見つけたねえ。
さすがお嬢」
「…………」
「お嬢は、昔から変わってたからなあ。
落ちてりゃなんでも拾う。
しかも大抵ロクでもないものを拾って面倒をみる。
翼を痛め飛べなくなった大きな鳥だったり、何もしない駄犬だったり。
―――俺だったりね」
「そうね。おかげでこちらは大変だわ」
「そこはお世辞でも《そんなことない》って言って欲しかったなあ」
ギルは頭をかいて笑った。
お嬢様の拾うものはロクでもないものに思えて、案外そうでもない。
飛べなくなった大きな鳥がいると作物を荒らす害鳥が逃げていた。
何もしない駄犬でもいれば害獣を寄せつけないし、何故か皆の癒し担当だ。
そして、ギルは―――――
こちらは大変なのだ。
振り回されて。
けれど余計なことなので黙っておく。
こちらの胸中などお構いなしでギルは喋り続けている。
「領地なんて男性服で駆け回ってるし、
視察なんて見るんじゃなくて手を出してるし、領民の家まで回る。
皆の意見集めて新しい農具は作るし、植物の品種改良の相談までしてる。
貴族のお嬢様なのになあ」
「……そうね」
「婿養子でも、養子でも、実子でもなく。
お嬢に女領主になって欲しいと領民たちが思うのも当然だよ。
女性は領主になれない。
それは皆、わかってるから誰も言葉にはしないけど。
期待は伝わるものだ。
皆の期待か、お嬢の気持ちか。
どっちが先だったのか。
お嬢は女領主になる夢に囚われている。痛々しいほどに」
「…………」
「だから俺はそろそろお嬢を横で支えてくれる奴が欲しい。
今んとこ候補はアレだ。
ベスの理想には全然足りないだろうけどさ。
いいんじゃない?アレで。
またお嬢の婿養子になれ、なんて話を俺に持ってこられても嫌だろ?」
「……聞いてたわね。帰郷した日の私と旦那様の執事の話」
「え、なんのことだろう」
ギルは楽しそうに私の顔を覗き込んできた。
うんざりする。
だから嫌なのだ。
私は振り回されてばかり。
「―――妥協はしないわ」
背を向け言うと背後でギルが笑った。
「厳しいなあ」
「妥協はしない。
けれど、お嬢様が決めたのならば私は認める。
ただそれだけよ」
「そうか。そうだな。
俺たちは裏から支えるだけだ」
ギルが私の横に並ぶ。
私は庭の方を振り返った。
「ええ。お嬢様が選ぶならいいわ。―――どちらでも」
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