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5 報告1
しおりを挟む報告せよと《王命》を受けたのです。
私は定期的に国王陛下のもとへ出向くようになりました。
ですが、報告するのは一人の《侍女》の日常です。そうそう変化はありません。
人払いがされ、国王陛下と近衛隊長の姿しかない執務室に行き
たいして変わらない報告を繰り返しておりました。
そんなやりとりがどのくらい続いた頃でしょうか。
国王陛下は確認するように、私に問われました。
「あの子は相変わらず王子達と仲が良いのだな?」
「はい」
ーーー姉弟のように、という言葉を飲み込みます。
「……実は裏で王太子を嫌っているような様子はないか?」
「ございません」
「そうか。では王太子妃にしたいと、あの子に告げたいのだが」
私は頭を深く下げます。
「……それはまだ早いかと」
国王陛下は「そうか」と呟かれました。
「そうだな。あの子はまだ15歳。王太子妃の教育も始めたばかり。
今、告げて重責に思わせても可哀想だ。
良いだろう。
では、あの子に告げても良い頃合いだと思えたら教えてくれるか?
しかし私は、なるべく早くあの子を王太子の婚約者としたいと思っている。
それは覚えておいてくれ」
ーーーそうでしょうね。
王太子殿下は今年13歳。ご成人されるまであと5年あります。
ですが、成人近くになれば妃の座を巡って貴族達は争うでしょう。
他国から縁談が持ち込まれれば、外交が厄介になります。
そうなる前にリュエンシーナ様を王太子妃と決めてしまいたいのでしょう。
国王陛下のお気持ちは良くわかります。
「ーーかしこまりました」
私は侍女の礼をし、国王陛下の執務室を後にしました。
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