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茉由花の秘密
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彼女は劇団花蘭に所属する舞台女優だった。
花蘭には、女性のみが所属していて、男性役も女性役も全て女性が演じる。
彼女らは「男役」「娘役」と分類され、男役には女性のファンが多くつく。
実際の男性よりも、中性的で品があって、女心をきちんと理解してくれる、それが男役の魅力というものらしい。
彼女たちは、劇団の内外問わず、いつでも妖精のように、ベールに包まれた世界観を徹底した。
コンビニには行かないし、電車やバスのような公共交通機関は利用しない。
男役はいつでもパンツスタイル、娘役はスカートスタイルで過ごすそうだ。
年齢は非公開とされているが、だいたい20代から30代前半の女性が大半を占める。
またプライベートを覗かせるような行為は禁止されているため、SNSの使用も禁止されている。
恋愛禁止ではないそうだが、そういったスキャンダルは、本人の舞台人生に悪影響となる。
特に男役に関しては。
茉由花は「男役」の一人だった。
俺と彼女が出会ったころ、「男役」の中の3番手という肩書を持つ存在だった。
3番手は準主役級の役を任されることが多く、主演を務めるトップスターの敵役などを演じることが多いという。
また、トップスターが退団すると、2番手がトップスターに、3番手が2番手に昇格する。
3番手は、いわゆるトップスター候補だ。
茉由花はまだ26歳。
今後順調にいけば、トップスターになることは間違いないとファンの間では言われている。
そんな彼女らの恋愛が万が一、バレた時には
「男役としての自覚が薄いのでは?」「ファンを裏切った。」
「舞台でどんなに格好つけても、スキャンダルがチラついて、舞台に集中できない」
というようなアンチが急増して、止む無く退団に追い込まれることもあるそうだ。
3番手を務める茉由花が異性と付き合うというのは、並大抵の覚悟ではない。
茉由花は、俺と付き合い始めたときに、この話を時間をかけて丁寧に教えてくれた。
俺は、「でもそのファンたちは、恋愛して結婚してるんだろ? 不公平だよ。」と子供じみた不満を漏らした。
しかし、茉由花はとても大人だった。
「うん、でも男役になりたくて花蘭に入る人がほとんどなの。みんな、女を捨てるっていう条件も覚悟の上で入団してる。それが嫌な人は、入らないんだよ、きっと。それに、私も花蘭のファンだったから、夢を壊されたときのショックは理解できるの。裏切られたというのは大袈裟かもしれないけれど、でもやっぱり、夢が冷めちゃう感覚になるんじゃないかな。」
茉由花の声には、芯があった。
「でも、恋愛ってそんな理性で止められるものかな。そりゃあ、最初は恋愛をしない覚悟で入団するのかもしれないけど、惚れちゃったら止められないだろ。」
「…だから、こうなってんじゃん、私たち。」
茉由花は小さな声で言った。
花蘭には、女性のみが所属していて、男性役も女性役も全て女性が演じる。
彼女らは「男役」「娘役」と分類され、男役には女性のファンが多くつく。
実際の男性よりも、中性的で品があって、女心をきちんと理解してくれる、それが男役の魅力というものらしい。
彼女たちは、劇団の内外問わず、いつでも妖精のように、ベールに包まれた世界観を徹底した。
コンビニには行かないし、電車やバスのような公共交通機関は利用しない。
男役はいつでもパンツスタイル、娘役はスカートスタイルで過ごすそうだ。
年齢は非公開とされているが、だいたい20代から30代前半の女性が大半を占める。
またプライベートを覗かせるような行為は禁止されているため、SNSの使用も禁止されている。
恋愛禁止ではないそうだが、そういったスキャンダルは、本人の舞台人生に悪影響となる。
特に男役に関しては。
茉由花は「男役」の一人だった。
俺と彼女が出会ったころ、「男役」の中の3番手という肩書を持つ存在だった。
3番手は準主役級の役を任されることが多く、主演を務めるトップスターの敵役などを演じることが多いという。
また、トップスターが退団すると、2番手がトップスターに、3番手が2番手に昇格する。
3番手は、いわゆるトップスター候補だ。
茉由花はまだ26歳。
今後順調にいけば、トップスターになることは間違いないとファンの間では言われている。
そんな彼女らの恋愛が万が一、バレた時には
「男役としての自覚が薄いのでは?」「ファンを裏切った。」
「舞台でどんなに格好つけても、スキャンダルがチラついて、舞台に集中できない」
というようなアンチが急増して、止む無く退団に追い込まれることもあるそうだ。
3番手を務める茉由花が異性と付き合うというのは、並大抵の覚悟ではない。
茉由花は、俺と付き合い始めたときに、この話を時間をかけて丁寧に教えてくれた。
俺は、「でもそのファンたちは、恋愛して結婚してるんだろ? 不公平だよ。」と子供じみた不満を漏らした。
しかし、茉由花はとても大人だった。
「うん、でも男役になりたくて花蘭に入る人がほとんどなの。みんな、女を捨てるっていう条件も覚悟の上で入団してる。それが嫌な人は、入らないんだよ、きっと。それに、私も花蘭のファンだったから、夢を壊されたときのショックは理解できるの。裏切られたというのは大袈裟かもしれないけれど、でもやっぱり、夢が冷めちゃう感覚になるんじゃないかな。」
茉由花の声には、芯があった。
「でも、恋愛ってそんな理性で止められるものかな。そりゃあ、最初は恋愛をしない覚悟で入団するのかもしれないけど、惚れちゃったら止められないだろ。」
「…だから、こうなってんじゃん、私たち。」
茉由花は小さな声で言った。
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