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第2章
過保護になるのも仕方がない18
しおりを挟む「なになに? 二人にはあんまり聞かれたくないことがあるのかしら。おねーさん。わくわくしてきたな」
キハナはにっこり微笑んでヒカリの方へ寄ってくる。
「あ、あの、値段二人に聞いても、教えてくれないかも」
「ほうほう、なんで」
「あのね、ここに書いてある薬。ヒカリが使ったの。だから、聞いても、二人、えとぅ、気にしないいって、ちゃんと教えてくれないかも」
「あ、そうなの。最近よく買うと思ったら君が使ってたのかぁ。じゃあ、大変だったんだね」
キハナの目がヒカリを見て少し優しい色を持った。
そんな目で見られてもヒカリとしてはあまり実感がないので、なんて返事していいのかわからなくなる。大変だったのは看病してくれた二人だと思うから。
「よくわかない。ずっと寝てただけだたから」
「そうか。で、自分の治療にいくらかかったかこっそり調べているわけね。いいよ。教えてあげるよ」
キサラはメモに書かれている薬をそらんじて値段を言っていった。
意外にも高かったのは青い軟膏で傷ができたら二人がすぐに塗ってくるものだった。
指先の小さな傷にも使っていたけど、ぜいたく品じゃん!
……今後は怪我しないようにしよう。もしくは隠そうと心に決めるほど値段が高かった。
「てな感じよ」
「ありがとー」
「そのほかに聞いておきたいこととか、欲しいものとかはありませんかー? 何か買いますよね?」
突然店員の口調に戻ったキハナが手をもみだしヒカリにすり寄った。
そこでヒカリも思い出した。買いたいと思っていたもの。
でも絶対二人に反対されるもの。これは秘密のミッションなのだ。ちらりと奥の様子を伺うとまだ話し込んでいたので、ヒカリはキハナの耳元にカを寄せた。
「あの、ね。自白剤がほしいです」
と告げるとお茶を飲んでいたキサラが口からぶはぁっとお茶を吹き出した。驚いたヒカリは手を伸ばしてキサラの背を摩る。
「ごほごほ、あんた、いまなんて?」
「えと、じはくざい? あれ、違った?」
「……何に使うの? ことと次第によっちゃ黙ってらんないね」
片手で口を拭ったキハナがスピカに声をかけたような低い声を出した。怖い。何が間違っていけないことなのかわからないので緊張感が一気に増す。
あれ、『自白剤』って自白剤で合ってるよね? 変な薬と間違ったのかな。
「え、えと正直に話すしたいから」
「何を?」
「気持ち? 本当の? あー嘘じゃない気持ち知る薬のこと、……だめ?」
「んん? 本当の気持ち……。気持ちが知りたいってことか。なーるほど。ふーん」
さっきまで険しい目つきだったキサラがヒカリの返答を聞いて一転にやにやとし始めた。
「やっだぁ。勘違いしちゃったな。で、どっちに使うの? ね? セイリオス? それともスピカ?」
「え、違う。ヒカリが、自分で使う。本当知ってもらう」
キハナが胸を押さえて呼吸が荒くなり始めた。
ヒカリは突然の疾患が襲ってきたのかと思い、急いで奥に行ってしまった人たちを呼び戻そうと足を踏み出した。
が、キハナががっちり腕を掴んでくるので顔を伺うとギラギラした目を向けてきた。
これはこれで、怖い。
「あ、だいじょぶ? 呼んでくるから待てて」
「大丈夫。ちょっと好物を摂取したから過剰反応しちゃって。あー、やだー。告白する勇気が欲しいってことね? うんうん、そういうの好き。めっちゃ好き。そして応援しちゃる。ね、これは本当興味本位なんだけど、答えなくてもいいんだけど、基本的にはセイリオスのがいいけど、ね、どっちのために使うの?」
勢いに怖じ気づきながら一生懸命聞き取る。
「……どっち? えと、セイリオスとスピカのため」
「ア――――、そりゃ、勢い欲しくなるわね。二人同時かー。いや、悪くない。当人同士が納得してたらいいわけよね。じゃあ、親切なおねいさん的には……」
何故か急に頬を染めて興奮しだしたキハナは棚をがさがさ漁り、これかいやでも……とブツブツ言って一つの瓶をヒカリに渡した。
小さな香水の瓶のようなものに入っており透明な金色をしていた。少しとろみがあるようで飲みやすそうな感じがした。
「味する?」
「するする。これね、あたしが作ったんだけど、甘酸っぱい初恋味。一回で飲み切ってね。封を開けたら効果薄れちゃうからね。で、スピカとセイリオスが買ってた薬の傾向から、君が飲んでも問題ない成分だから安心してね。時間にしたら3時間ほどかな。この感じだと君が下の方だと思うし、大きいの相手でも入りやすくなるようにはしてるけど、ちゃんと解してもらってね。してもらえなかった時用にこの軟膏もおまけしちゃる。これもあたしが作ったんだけど、体の中に入っても安全だからね」
どんどん早口になって途中からは何を言ってるかわからなかったけど、やってやりましたよという顔をしていたのでヒカリも笑顔で返す。
「あ、アリガトー。えっと、いくらするますか?」
「お、君いくら持ってるの?」
「えと、これです」
ヒカリがカウンターの上に全財産を並べるとキハナはそれを見て。
「これ、どうやって儲けたの?」
「えと、セイリオスの仕事手伝う。製品チェック。できること少ないから、お金も少ない。たりなかたらまた来るから置いておいて。おねがい」
青い軟膏の値段並みならヒカリには手の届かない代物だ。
ここはお金がたまるまでは計画中止を視野に入れねばならないだろう。少し気落ちしたヒカリにキハナが口を開けて笑った。
「大丈夫。持ってるお金で足りるよ。4000セルあれば足りる。ほら、早く片付けないとあの二人きちゃうよ。ほらほら」
お金が足りて喜んでいるのも束の間、確かに奥から人が戻ってくる気配がしてヒカリは大慌てで商品を大事にハンカチに包んでカバンへと仕舞った。更にお金を戻そうと慌ててしまい、カウンターからお金が落ちて、散らばっていく。
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