playball~この手で掴む~

雲母なぎ

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貴方のいない夏

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「絶対俺が甲子園優勝してやる。だから俺の側で俺だけを見ていてくれ」
そう言ってくれたあの夏…忘れない貴方と過ごした大切な日々だから…
私の名前を呼んで愛してると言ってそしてまた貴方の人生をかけた野球を私に見せて…


「……乙葉…」誰?誰なの?「…乙葉」懐かしい声…大好きな声…「乙葉!!!!」
私は勢いよくベッドから起き上がった
「いつまで寝てるの?!もう幸ちゃん迎えに来るわよ!」
リビングでお母さんが叫んでいた
「もー朝からうるさいよ」私は不意に顔に手を当てた。
…「あれ、何で泣いてるの?確か懐かしい声が聞こえたような…」
「乙葉!!!!!いい加減にしなさい!!お母さんもう仕事行くから!」
あーもー朝きらい
「起きてるよ!朝からうるさい!」
私は急いでリビングに降りた
「今日の夜お母さん仕事遅くなるから幸ちゃん家に行ってね」
「やだ」
「乙葉…」まただ、またお母さんを困らせてしまった。
「おと…」私は言葉をさえぎるように「爽花の所に行くから大丈夫!」
「でも…」「大丈夫だから!ほら遅れるよ!」私はお母さんの背中を押した
「はい!行ってらっしゃい!!」
無理矢理ドアを開けて見送った


学校へ行く準備を済ませ私も家を出た


「よし。気持ち切り替えていこう!」頬を両手でパァーンと叩いた

「元気でなにより」

声のする方を見た「雄ちゃん…?」
「悪いな雄一じゃ無くて」
一瞬声も姿もあの人に見えた…
「いや、こっちこそごめん」
「いいよ気にすんなおはよう。乙葉」
「ごめん。おはよう幸」
もういいよと言うように私の頭を撫でた
「今日俺んち来るんだろ?」
ど、どうしよう。
「あ、いや爽花の所に行こうと思って…」
「はぁ?お前…」
そこでちょうど学校の玄関で「おはよう!幸!おとちゃん!」
これはチャンスだ!私は慌てて言葉を返した
「おはよう!爽花!私、今日爽花の家に泊まるね!」
私は爽花に合図を送った
「え?!あ、うん!いいよ!」
「そう言う事だからじゃあまた後でね」
「あ、おい!!」
私は爽花を強引に連れて教室にむかった
「なんなんだよ…」

強引に連れて行った爽花は教室に着くと怒って「もう!何があったかちゃんと教えて貰いますからね!」と
私の肩を叩いた
「申し訳ない!必ず話します!」
そしてお昼の時間に屋上で爽花に全てを話した
「そういうことか…私は構わないけど、幸どうすんの?このままだと幸怒るよ?」
私はうなだれて爽花に寄りかかった
「そうなの。そこが問題どうしよう?」
「正直に思い出すから行きたくないって言えば?」
「うーん」
そこでチャイムが鳴った
「まぁ幸に許可とってからにしな」
「…うん」
その後も授業には手が回らず幸の事考えているうちにあっという間に時間がすぎた
「一回家帰っていろいろ用意出来たら電話して?迎えに行くからさ」
「わかった」
少し微笑んだ爽花は私を優しく抱きしめた
「大丈夫」
いつもこうされると落ち着いたのにあの時だけはダメだった
「ありがとう」
私も抱きしめ返した
「じゃあ部活行こう」
私と爽花は野球部のマネージャーをやっていて私が強引に爽花をさそった
部活行くの久しぶりだな…
グラウンドに着くともう野球部は部活を始めていた 
「もうすぐ甲子園の予選大会だから部活早めに始めてるの」
「もうそんな時期か…」
「ほら、私たちも!」
そう言うと爽花は私の手を引いて
「みんな!乙葉が来たよ!」
「ち、ちょ!恥ずかしい!練習の邪魔だよ!」
するとみんながこっちを向いて
「乙葉先輩!こんちわーすっ!」
「おかえり乙葉!」
私の周りに集まって来てくれた
「もーすごく寂しかったっす!」
「爽花は鬼だから乙葉ちゃんが帰って来てくれてよかったよ!」
「何ですってー!!」
みんなが笑ったこんな気持ちは久しぶりだったあったかい…
「おい!サボってないで練習しろ!」
「やべ!北村先輩怒ってるよ!」
「幸!そんな言い方…」言葉をさえぎるように
「いいの!幸の言う通りだよ!はやく練習行って!」
「わかったごめんまた後でね!」そう言うとグラウンドに散らばっていった 
「私たちも行こう」
「おとちゃん!待って!」
「新!」
「これだけ言いたかったから!おかえり!」
それだけいうと幸の元へ行ってしまった。
「頑張ろう!乙葉!」
爽花が笑って言った
私もつられて笑いながら
「うん!」
久しぶりの部活だったせいか、ものすごくハードに感じた
「ふぅ…ごめんね一人で背負わせちゃって」
「そんなのいいよ私一人じゃないしみんなが手伝ってくれたからさ!」
「良かった」
それから洗濯物したり、ボールをふいたり、水を配ったりしていたらあっという間に
時間が過ぎていった
「やっと終わったぁ」
女子の部室につくと一目散に椅子に座った
「乙葉はおばあちゃんか!」
「えーもークタクタだよー」
爽花は部屋につくなり着替え始めた
「で、どうすんの?幸のこと。いつもピリピリしてるけどあいつもはあんなに怒らないからたぶん乙葉のせいだな」
やるせなくなって天井を見上げた
「幸のことよく見てるんだね。分からなかった」
「え、あ、だってさ!乙葉は部活来なかったし!」
爽花は顔を赤くして必死に訴えていた
「なにそんなに顔赤いの?」
私は無性に笑えて来た
「へ?!あ、いや暑いから!!!!」
「ふふふふ」
「もー!笑うな!今日来るなら連絡してね!先帰るわ!」
「あ、うん!」
爽花がドアを開け「ちゃんと言いなよ!」
そしてドアの閉まる音だけが部屋に響いた
「………よし電話するか」
カバンからスマホを取り出そうとしたらタイミングよく幸からの電話だった
一度深呼吸して「よし」
……「もしもし」
(俺だけど、今どこ?)
「あ、まだ部室だよ」
(じゃあ校門で待ってるわ)
「え、あ!」要件だけ言って切られた
「もぉー要件男!」
私は急いで帰る準備をして校門に向かった
「お待たせ」
「ん」
しばらく歩いて、でもなかなか言い出せなくて困っていたら
「爽花にあんまり無理させんなよ?」
「え?」
「俺にも頼れって言ってんの」
「みんな過保護だなぁ!」私は笑って幸の背中を叩いた
「爽花にも野球部のみんなにも幸にもお母さんお父さんいろんな人に迷惑かけた………雄ちゃんにもね。
今も沢山かけてるよ」
突然、幸は歩みを止めて
「俺は…俺はなにも出来なかった。」
「幸…」
私は幸に近寄って幸の両手を握った
「そんなことない幸が一番私を気遣ってくれたこうやって普通でいられるのは幸のおかげだよ」
幸は私の手を握りかえした
「今日、幸の家に行くね爽花にも急だったし迷惑だと思うからそれに……お線香あげなきゃ」
「ん……俺がお前んち迎えに行く。準備できたら電話して」
「うん!」
もうこれ以上困らせたくない…誰も…


「明日の学校の準備は出来たし洗顔、乳液と化粧水持ったね」
家に帰ってから爽花に連絡したら良かったねと言ってくれた
久しぶりだな…雄ちゃん家に行くの…大丈夫だよね
家から出ると幸が待っていた
北村家は私の家のすぐ近くにある
親同士が仲良くなって何かあればお互いに助け合っているという関係
雄ちゃんと付き合ってからはほぼ毎日出入りをしていた
「てかさ、お前その荷物多くね?」
「え?そうかな?乙女は荷物が多いのよ!」
突然幸が手を出してきた
「え?なに?手繋ぐの?」
すると幸は顔を赤くして
「ば、バカじゃねーの?!荷物だよ!運んでやるから貸せ!」
そう言って奪い取るように荷物を持ってくれた
「そんな怒らなくたっていいじゃん!でも荷物ありがと!」
あっという間に北村家に着いた。
幸が鍵を開ける
私は心臓が爆破しそうなくらいドキドキしていた
…苦しいなぁ…胸に手を当てた
「ほら、入れよ」
幸がドアを開けて待っていた
「うん…」
入る前に小さく呼吸をして
「お邪魔します」
すると北村家のお母さんが「乙葉ちゃん!!!!」
そう言ってぎゅっと抱きしめてきた
「ただいま幸ママ」
「おかえり乙葉ちゃん」
幸ママの顔を見ると涙を流していた
「な、泣かないで!」
「ごめんなさいねぇ…感極まってついつい」
私の顔を何度も何度も確かめるように撫でていた
「母さん!飯!」
「あ!そうね!今日は乙葉ちゃんの好きなオムライスにしたから!」
パタパタと台所に戻っていった
「元気でよかった」
私はホッとした
「あ、お線香あげなきゃ連れてって」
「分かった」
お線香の前には雄ちゃんの写真が飾ってあった
「素敵な笑顔だね」
「そうだね」
私はお線香をあげて静かに手を合わせた
(…雄ちゃん会いたいです。大好きです。)
目を開けた時には涙が溢れていた
「来てくれてありがとう…そう言ってるぜきっと」
「うんそうだね」

それから大好きなオムライスを食べお風呂に入り終わって
幸ママに幸自分の部屋にいると思うから呼んでくれと頼まれたので
二階に行った
手前の部屋から幸の部屋 雄一の部屋とあった
私は、見るつもりも見たいと思わなかったのに
体が勝手に動くような感覚に襲われて
雄一の部屋の扉を開けた
そして電気をつけた
「何も変わってない」
勉強机には私との写真が飾ってあって
ベッドの所には朝起きれないって言うから私があげた私の声が入っている目覚ましがあって
私とのお揃いの服だけはクローゼットの中には入れないで飾ってあって
一年記念日のペアリングはその日に撮った2人の写真の所に飾ってあって………
涙が溢れてきた
「雄ちゃんの優しい匂いがするよぉ」
辛くて胸が苦しくて頭がいたい
「うぅ…」
雄ちゃんとの記憶が走馬灯のように溢れだしてきて耐えられずその場に倒れた
(大丈夫…?)
「どうしてそんなに怪我してるの…?」
(大丈夫…?)
……………
そして激しい胸の痛みが襲い
「雄ちゃん…」視界が狭まる中私は必死に手を伸ばした


そこで私の意識は途切れた





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