WUSOH〜裏路地のリーダー

ラドリー

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20話、結局アゲハは何者なのだろうか。

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『キャー!助けて私の王子様ー!!蜘蛛の巣に捕らえられてしまったー!』
「王子様は助けに来てくれませんでした。俺で残念だったなアゲハ」
『キャー!ジョージさーん!!』
「いやあの、めっちゃ恥ずいんですけど鳥手」
都城マリア拉致監禁事件の後、スワコとリョウタを入院させず、都城家お抱えの先生に治療をしてもらっている今日この頃。
リョウタはいつものことだから問題ないが、スワコの方は弾痕である。
普通の病院に連れて行けるわけがない。
俺は窓のところで蜘蛛の巣で遊んでるアゲハから、綺麗に蜘蛛の巣を取ってあげながら、話を続ける。
「まぁまぁまぁ。で、どこから話してくれるの?そろそろ何があったのか話してほしいんだけど」
都城マリアこと俺の姉は右手を挙げる。
控えていたメイドが退出し、俺たち姉弟、スワコとリョウタ、さらにミクの5人だけになる。
あ、窓のとこにアゲハもいるけど。
「じゃあ、一つ一つ紐解いて行こうか。皆さんへ。鳥手譲治の姉、鳥手真里亞です。どうぞ」
「両親が離婚してしまって名字が都城に変わってるの。みんな、私と弟をよろしくね」
「そっか、じゃあ付き合ってるとかそんなんじゃなかったんだね!」
「でもとりではわたしのだもんー!」
「人前で姉モードなるな。今は都城モードでいてくれ」
次に、と俺が話を進める。
「俺の【読者リーダー】についてだ。一つ目は【隠者ステルス】の中でどう姉貴を見つけたか、という話だが。これは単純に、俺の【読者リーダー】には効果がなかっただけだな。姉貴の【視聴者リスナー】が心の声を聞く能力なのに対し、俺のは【目を見ることで視覚や聴覚などの情報を自分のものにできる】というもの。俺のは知覚ではなく共感の能力だった。故に有効である」
「……でも、発動条件は【眼】を見ることでしょう?いつ繋いだの?……例えばお姉さんと離れる前から繋いでいたんだとしてさ、【視聴者リスナー】が、使えずジョージ君くんからの一方的な能力干渉を受けることになるとして、お姉さんには自分の位置を特定することすらできないと思うけど」
「いい質問だな。尻をひっぱたいてやろう」
スパァン。いやいや。
「ドMスワコはまぁ、置いとくとして。この質問は持ち前の勘の鋭さで俺の能力を考察してくれたリョウタが答えるぜ。どうぞ」
「相手の視界を自分のものに出来るなら、例えば、会長の視界から他の人の眼を見たらどうなるのかなって思ったのさー。そしたらビンゴ、鳥手は会長の眼を経由し、八坂ちゃん、あんたの眼に侵入することに成功したのさー」
「そこから次の考察が始まった。感覚を自分のものにできるなら、その能力とか言うやつも自分の思うように使えるのでは?この考察から、スワコの【隠者ステルス】を使えるようになったわけだ」
「……そうなの。でもそれ、私が【隠者ステルス】で姿を消していたらどうするつもりだったの?」
「プランBを使うつもりだった。もし眼から眼へ移れなくても、直接スワコに繋げる方法はある」
「……ちょっと、さっきまで叩いてたとこ、優しく撫でちゃダメぇ❤️」
「あの!スワコちゃんばっかりずるいと思う!私も可愛がって!」
「わたしもー!!」
「俺様は一体何を見せられてんだ。俺も鳥手に甘えればいいのか?」
「やめろ。もう本当にストップ!」
「まぁまぁ。つまりだ、鳥手のプランBってのは、八坂ちゃんの写真から繋げようって寸法だ」
「そもそも俺が【裏路地のリーダー】を代役する際、別に毎回姉貴んとこ顔を見に行ってるわけじゃねぇよ。そーゆー時は、だいたいケータイの待ち受けになってる、姉貴の描いたヘッタクソな眼のイラスト見て繋いでいる」
誰が描いたイラストでもいいわけではない。
この絵で咄嗟に姉貴の顔が思い浮かぶから姉貴とつながることができるのであって、だから基本的には写真の方がまず間違いない。
「つまり俺はスワコの写真を眺めれば、その【隠者ステルス】を使いいつでも姉貴の【視聴者リスナー】をかいくぐれる。見えない聞こえないだから女子風呂にも行ける」
「……そんな、じゃあ【隠者ステルス】使って深夜の街を全裸で徘徊してても、そのタイミングでジョージ君がわたしに繋いだらバレちゃうってこと……?」
「俺今結構やばい発言で突っ込み待ちしてたのに上からさらにやばいのぶっ込んでくんなよ。え?スワコお前そんな趣味あるの?」
「……えへへ」
えへへじゃねぇんだよ。
とんだ変態女を拾っちまったぜ。
「さて。そろそろこんなもんかな?ミクは何か質問はあるかしら?」
「え?んと、話は少し変わるけど、源五郎先生の、事件のその後とか、そのプチエンジェル?ってどんな感じなのかなって」
「真実はとうに葬られてるから発言は難しいが、調べてみろよ。警察と世論の見解がグーグルで見れるぜ。ゲンゴロウの件は【奇妙な事件  取り組み式便所】で、プチエンジェルはそのまま【プチエンジェル事件】で出てくる」
「説明してくれないの!?わたしにだけ冷たいよ!?」
「じゃあわたしからもひとつ。リョウタ、あんたなんで【奇跡の体現者】とか知ってたの?見たところあんた、なんの能力も待ってないわよね」
「俺様?んーまぁそうだな。二つ前の生徒会長いるだろ?」
「鍵楽亜沙先輩か」
「彼女はお前らに近い能力を使って、【奇跡の体現者】を集めてるのさー。もちろん戦闘ができれば能力を持ってなくても一員になれる。俺様もそこのメンバーだ。だから能力の考察も、一般人よりは詳しくできた」
「……最後、わたしからも。タカシくんとか、遊泳社とかはどうなったのかしら。わたし学校どころかこの屋敷から出れてないから、世間に疎くて」
「学校に来てる。何事もなかったかのような顔で普通に生活してる」
「大丈夫、何かあれば、今度こそ【裏路地のリーダー】がとっちめてあげますわ」
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