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2章 蒼穹の愛し子
4 互いの未来のために
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血のように赤い彼岸花が僅かに揺れる。
赤一色の花畑に近寄り、フェリクスは立ち止まる。
目の前には膝を抱え込む少女が一人。彼女は肩までの長さになった泡藤色の髪を揺らし、フェリクスに背を向けた状態で静かに立ち上がった。炎姫の時の黒いドレスとは対になるような白を基調とした衣装を身に纏っており、腰には赤銅色のリボンが下がっている。
ゆっくりとこちらを振り返る少女の瞳には希望の光はない。昏い絶望と後悔だけがそこにある。
「とりあえず挨拶だけしておこうか。無事で良かったよ、ソフィアさん」
「何の用……?」
「君を叱りに」
軽く瞠目し、それからソフィアは哀しく嗤う。
「私を……私を断罪しに来てくれたのね」
最も女神から信頼を寄せられ、最も世界を滅びから遠ざける素質があって、最も高潔な意志を持つ貴方が。
そんな期待を寄せられているような気がして、フェリクスはしっかりと首を横に振る。
「いいや。俺にソフィアさんの罪を裁くような資格はないよ。ただ――個人的に君を許せなかっただけだ。だから、怒りに来た」
「彼を、殺したこと?」
「いいや、あいつの願いを理解していないこと」
ふと蘇る親友の強い眼差しに、フェリクスの心の底に熱い感情がこみ上げてくる。
親友だった。大親友だった。誰もが理解してくれなかった自分の在り方を初めて受け入れてくれて、軽口を叩き合って、お互いに守りあって生きてきた相棒だった。
およそ八年前から――ずっと、ずっと共に過ごしてきた。
その期間は、ソフィアが彼と過ごしてきた時間よりも遙かに長い。
だからこそ分かるのだ。あいつが頑固で、それでいて本気で大切な誰かの幸せな未来を望める人であることを。仲間の――ソフィアの幸せな未来を本気で望んでいたことを。
その願いが叶えられないなんてことこそ、許されないことだ。
「なぜ勝手に絶望して引きこもる? なぜ勝手に下を向く? なぜ勝手にあいつの願いを踏みにじる?」
手にした長旗を、ソフィアに突きつけた。
「無理矢理にでも前を向かせてやる。覚悟しろ……俺は今、怒ってる」
「……貴方は分かっていないのよ」
ソフィアも佩いていた鞘から剣を引き抜き、フェリクスに突きつける。
「抗うことすら許されずに押しつぶされてきた苦しみを。私が守ると誓った人を無様に奪われる無力感を。私を愛してくれた人を、私の意志の外で傷つけてしまう恐怖を。私を心から案じてくれた人を――自分の手で殺める状況を作ってしまった私自身への、どうしようもない怒りを。貴方は分かっていない。分かることはない」
言葉の端から感情が溢れ、ぶるぶると腕が震えているのがフェリクスから見てもありありと伝わる。彼女は絶望こそしているが――完全に堕ちきったわけではない。今ならまだ、戻ってこられる。
戦闘能力で言えば圧倒的にソフィアに軍配は上がるこの対立だが、今のフェリクスには負ける気が一切しなかった。
ぐっと手に力を込めた刹那、二人のぶつかり合いが始まる。
これはただの喧嘩だ。
互いに駄々をこねて意見を殴りつけているだけの、そんな状態。
フェリクスとソフィア、どちらも誰かを傷つけることを厭う性格だ。しかし、こればかりは仕方のないこと。
片や友の願いを叶えるために。
片や友への罪を償うために。
「私たち、同じはずだったのにね」
神子という血筋に生まれて、親から真に愛されることはなかった。共通点はあるはずなのに、わかり合えない。
彼岸花がふわりと舞い上がる。あの日の炎よりも美しい赤色だ。
長い獲物のフェリクスは少しだけ距離を保ちながら旗の穂先をソフィアの持つ剣へと向ける。大きな布地は実体があるように見えて幻だ。重さはないに等しく、しかし可視化しているために視界を塞ぐには大いに役に立つ。
実際、ソフィアはフェリクスの行動を見極めるためにさらに距離を取らざるを得なかった。青ざめた顔には苛立ちが浮かび、赤い右目には涙が滲む。
どちらかが踏み込んでは片方が避け、どちらかが引けば片方が攻め込むといういたちごっこをどれほど続けたことだろう。
均衡が破られたのは、小さく血が散った時だった。
息を切らしたフェリクスがソフィアの突き出した銀の一閃を避けきれなかったのだ。頬に走る線を見て、ソフィアは息を詰まらせる。
彼女にとって鮮血はトラウマの象徴だ。自分の剣で、自分の意志で目の前の人を切ってしまう。
『僕は、君を救いたい』
「――あ」
目の前に迫る赤色と、あの騎士が重なって見えた。
僅かな逡巡を見逃すフェリクスではない。
普段の温和などかなぐり捨てて、感情に溢れた必死の形相でソフィアの胸ぐらを掴む。自らと相手の顔に傷を付けるのも知ったことかとキツく握りしめた手が物語っている。
爛々と光る石榴石の瞳に、迷子の子どものような顔をした少女が映り込んでいた。
心が、揺れた。
がつん、とそれはそれはいい音が玉座の間に響き渡った。
仰向けに倒れ込んだソフィアの額は赤く腫れていて、直前の頭突きの本気具合が誰から見ても窺える。手からは白銀の剣が手放され、赤い花畑に埋もれていた。
一方のフェリクスは立ち上がったまま肩を上下させている。息を整えていた彼は幻の旗を消し、それから隣に座り込む。
気まずそうにそろりとソフィアの顔を覗き込めば、彼女は見られたくないと言わんばかりに両腕で顔を覆ってしまう。
「……負けたわ。今の私、貴方には勝てない」
「いいや。ソフィアさんの状態が万全であったなら俺なんて瞬殺だよ」
ぽつりと呟き、それからフェリクスは続ける。
「セラフィはソフィアさんに笑ってほしいと願っていた。君が全てから解放されることを望んでいた。だからさ、俺もそれを望む」
「……」
「そのためにはこの事態を招いた元凶をどうにかするべきだと思ってる。でも簡単にどうにかできる存在でもない。――ソフィアさんにも、協力して欲しい」
「――返事の前に、少し聞いてくれるかしら」
「うん」
顔を隠したまま、ソフィアはぽつぽつと語り始める。
「私は、小さな頃は生みの母と二人で生活していた。元々は排斥された王家だったのもあって、一族のほとんどは肩身狭い思いをしてきて――やがて呪いの事実が判明してから、次々に自害をしていった。始めはなんでみんな死ぬんだろうって理解出来なかったわ。……でも」
誰にも明かさずにいた、抱え込んでいた胸の内をひとつひとつ辿るように。
「どんなに痛くても苦しくても死ねないんだって、母と心中させられそうになったときに知った。イミタシアになって、初めて仲間と呼べる人達が出来て……嬉しかったの。一時的に呪いのことも忘れられるくらいにはみんなのこと、とても大切だった。だからレガリアに交渉を――言うことを聞けばみんなを逃がしてくれるって誘いにも乗ったわ」
「うん」
「この城から解放されたその後にね、新しいお母さんに出会ってきちんと愛を貰えたの。私が勝手に押しかけたも同然なのに、マグナロアの街の人も可愛がってくれた。イミタシアのみんなも、私を本気で心配してくれていたことは分かっていたの。でも、でも、頼れなかった。この呪いを、押しつけられたものを誰かに背負わせるわけにはいかなかったから」
「うん」
少しずつ声が震えていく。
「でも、それで、そのせいでセラフィを殺しちゃった。私が、私が殺しちゃった。みんなが大好きだったあの人を……私が殺したの」
「それは、違うよ」
「違わない。だから私は、これ以上誰かを失わせないために消えたかった。そうすればみんなに降りかかる災厄を減らせると思ったから」
生きているだけで利用される存在ならば、消えてしまった方が良い。自殺という方法は採れない。なら、せめて他者に断罪されたかった。
その方がきっと少しは楽になれるだろうから。
勝手な逃避だと理解している。しかし、一人で呑み込んで受け入れるには彼女は――周りもまた、まだ若すぎた。
ソフィアの本音に、フェリクスは小さく相槌を打って続きを促す。
「なんで私はこんな苦しい思いをしなければならないんだろう? なんで私ばっかりって、何度も何度も何度も何度も思ったわ。そう考えない日はなかったかもしれない」
「うん」
「私だって、私だって」
「うん」
最後の方は半ば涙に掻き消されるように、小さな願いが口から発せられる。
「私だって、幸せになりたいのに……!」
「……うん」
ごく小さなそれをしっかりと受け取って、フェリクスは優しい笑みを浮かべた。きっとセラフィでもそうするだろう。
「俺だって幸せになりたいよ。みんなで笑い合いたい。――だからさ、一緒に戦おう。目指すべき道は同じだよ」
「――えぇ」
「よし、決まりだね」
「フェリクス」
「うん?」
覆っていた腕を下ろして、ソフィアは両目を眇めた。
痛む体をゆっくり起こし、ためらいがちに片手を差し出す。
対するフェリクスはその手をためらうことなく取り、しっかりと握りしめた。
「――ありがとう」
「どういたしまして」
神子同士の喧嘩、ここに終幕。
赤一色の花畑に近寄り、フェリクスは立ち止まる。
目の前には膝を抱え込む少女が一人。彼女は肩までの長さになった泡藤色の髪を揺らし、フェリクスに背を向けた状態で静かに立ち上がった。炎姫の時の黒いドレスとは対になるような白を基調とした衣装を身に纏っており、腰には赤銅色のリボンが下がっている。
ゆっくりとこちらを振り返る少女の瞳には希望の光はない。昏い絶望と後悔だけがそこにある。
「とりあえず挨拶だけしておこうか。無事で良かったよ、ソフィアさん」
「何の用……?」
「君を叱りに」
軽く瞠目し、それからソフィアは哀しく嗤う。
「私を……私を断罪しに来てくれたのね」
最も女神から信頼を寄せられ、最も世界を滅びから遠ざける素質があって、最も高潔な意志を持つ貴方が。
そんな期待を寄せられているような気がして、フェリクスはしっかりと首を横に振る。
「いいや。俺にソフィアさんの罪を裁くような資格はないよ。ただ――個人的に君を許せなかっただけだ。だから、怒りに来た」
「彼を、殺したこと?」
「いいや、あいつの願いを理解していないこと」
ふと蘇る親友の強い眼差しに、フェリクスの心の底に熱い感情がこみ上げてくる。
親友だった。大親友だった。誰もが理解してくれなかった自分の在り方を初めて受け入れてくれて、軽口を叩き合って、お互いに守りあって生きてきた相棒だった。
およそ八年前から――ずっと、ずっと共に過ごしてきた。
その期間は、ソフィアが彼と過ごしてきた時間よりも遙かに長い。
だからこそ分かるのだ。あいつが頑固で、それでいて本気で大切な誰かの幸せな未来を望める人であることを。仲間の――ソフィアの幸せな未来を本気で望んでいたことを。
その願いが叶えられないなんてことこそ、許されないことだ。
「なぜ勝手に絶望して引きこもる? なぜ勝手に下を向く? なぜ勝手にあいつの願いを踏みにじる?」
手にした長旗を、ソフィアに突きつけた。
「無理矢理にでも前を向かせてやる。覚悟しろ……俺は今、怒ってる」
「……貴方は分かっていないのよ」
ソフィアも佩いていた鞘から剣を引き抜き、フェリクスに突きつける。
「抗うことすら許されずに押しつぶされてきた苦しみを。私が守ると誓った人を無様に奪われる無力感を。私を愛してくれた人を、私の意志の外で傷つけてしまう恐怖を。私を心から案じてくれた人を――自分の手で殺める状況を作ってしまった私自身への、どうしようもない怒りを。貴方は分かっていない。分かることはない」
言葉の端から感情が溢れ、ぶるぶると腕が震えているのがフェリクスから見てもありありと伝わる。彼女は絶望こそしているが――完全に堕ちきったわけではない。今ならまだ、戻ってこられる。
戦闘能力で言えば圧倒的にソフィアに軍配は上がるこの対立だが、今のフェリクスには負ける気が一切しなかった。
ぐっと手に力を込めた刹那、二人のぶつかり合いが始まる。
これはただの喧嘩だ。
互いに駄々をこねて意見を殴りつけているだけの、そんな状態。
フェリクスとソフィア、どちらも誰かを傷つけることを厭う性格だ。しかし、こればかりは仕方のないこと。
片や友の願いを叶えるために。
片や友への罪を償うために。
「私たち、同じはずだったのにね」
神子という血筋に生まれて、親から真に愛されることはなかった。共通点はあるはずなのに、わかり合えない。
彼岸花がふわりと舞い上がる。あの日の炎よりも美しい赤色だ。
長い獲物のフェリクスは少しだけ距離を保ちながら旗の穂先をソフィアの持つ剣へと向ける。大きな布地は実体があるように見えて幻だ。重さはないに等しく、しかし可視化しているために視界を塞ぐには大いに役に立つ。
実際、ソフィアはフェリクスの行動を見極めるためにさらに距離を取らざるを得なかった。青ざめた顔には苛立ちが浮かび、赤い右目には涙が滲む。
どちらかが踏み込んでは片方が避け、どちらかが引けば片方が攻め込むといういたちごっこをどれほど続けたことだろう。
均衡が破られたのは、小さく血が散った時だった。
息を切らしたフェリクスがソフィアの突き出した銀の一閃を避けきれなかったのだ。頬に走る線を見て、ソフィアは息を詰まらせる。
彼女にとって鮮血はトラウマの象徴だ。自分の剣で、自分の意志で目の前の人を切ってしまう。
『僕は、君を救いたい』
「――あ」
目の前に迫る赤色と、あの騎士が重なって見えた。
僅かな逡巡を見逃すフェリクスではない。
普段の温和などかなぐり捨てて、感情に溢れた必死の形相でソフィアの胸ぐらを掴む。自らと相手の顔に傷を付けるのも知ったことかとキツく握りしめた手が物語っている。
爛々と光る石榴石の瞳に、迷子の子どものような顔をした少女が映り込んでいた。
心が、揺れた。
がつん、とそれはそれはいい音が玉座の間に響き渡った。
仰向けに倒れ込んだソフィアの額は赤く腫れていて、直前の頭突きの本気具合が誰から見ても窺える。手からは白銀の剣が手放され、赤い花畑に埋もれていた。
一方のフェリクスは立ち上がったまま肩を上下させている。息を整えていた彼は幻の旗を消し、それから隣に座り込む。
気まずそうにそろりとソフィアの顔を覗き込めば、彼女は見られたくないと言わんばかりに両腕で顔を覆ってしまう。
「……負けたわ。今の私、貴方には勝てない」
「いいや。ソフィアさんの状態が万全であったなら俺なんて瞬殺だよ」
ぽつりと呟き、それからフェリクスは続ける。
「セラフィはソフィアさんに笑ってほしいと願っていた。君が全てから解放されることを望んでいた。だからさ、俺もそれを望む」
「……」
「そのためにはこの事態を招いた元凶をどうにかするべきだと思ってる。でも簡単にどうにかできる存在でもない。――ソフィアさんにも、協力して欲しい」
「――返事の前に、少し聞いてくれるかしら」
「うん」
顔を隠したまま、ソフィアはぽつぽつと語り始める。
「私は、小さな頃は生みの母と二人で生活していた。元々は排斥された王家だったのもあって、一族のほとんどは肩身狭い思いをしてきて――やがて呪いの事実が判明してから、次々に自害をしていった。始めはなんでみんな死ぬんだろうって理解出来なかったわ。……でも」
誰にも明かさずにいた、抱え込んでいた胸の内をひとつひとつ辿るように。
「どんなに痛くても苦しくても死ねないんだって、母と心中させられそうになったときに知った。イミタシアになって、初めて仲間と呼べる人達が出来て……嬉しかったの。一時的に呪いのことも忘れられるくらいにはみんなのこと、とても大切だった。だからレガリアに交渉を――言うことを聞けばみんなを逃がしてくれるって誘いにも乗ったわ」
「うん」
「この城から解放されたその後にね、新しいお母さんに出会ってきちんと愛を貰えたの。私が勝手に押しかけたも同然なのに、マグナロアの街の人も可愛がってくれた。イミタシアのみんなも、私を本気で心配してくれていたことは分かっていたの。でも、でも、頼れなかった。この呪いを、押しつけられたものを誰かに背負わせるわけにはいかなかったから」
「うん」
少しずつ声が震えていく。
「でも、それで、そのせいでセラフィを殺しちゃった。私が、私が殺しちゃった。みんなが大好きだったあの人を……私が殺したの」
「それは、違うよ」
「違わない。だから私は、これ以上誰かを失わせないために消えたかった。そうすればみんなに降りかかる災厄を減らせると思ったから」
生きているだけで利用される存在ならば、消えてしまった方が良い。自殺という方法は採れない。なら、せめて他者に断罪されたかった。
その方がきっと少しは楽になれるだろうから。
勝手な逃避だと理解している。しかし、一人で呑み込んで受け入れるには彼女は――周りもまた、まだ若すぎた。
ソフィアの本音に、フェリクスは小さく相槌を打って続きを促す。
「なんで私はこんな苦しい思いをしなければならないんだろう? なんで私ばっかりって、何度も何度も何度も何度も思ったわ。そう考えない日はなかったかもしれない」
「うん」
「私だって、私だって」
「うん」
最後の方は半ば涙に掻き消されるように、小さな願いが口から発せられる。
「私だって、幸せになりたいのに……!」
「……うん」
ごく小さなそれをしっかりと受け取って、フェリクスは優しい笑みを浮かべた。きっとセラフィでもそうするだろう。
「俺だって幸せになりたいよ。みんなで笑い合いたい。――だからさ、一緒に戦おう。目指すべき道は同じだよ」
「――えぇ」
「よし、決まりだね」
「フェリクス」
「うん?」
覆っていた腕を下ろして、ソフィアは両目を眇めた。
痛む体をゆっくり起こし、ためらいがちに片手を差し出す。
対するフェリクスはその手をためらうことなく取り、しっかりと握りしめた。
「――ありがとう」
「どういたしまして」
神子同士の喧嘩、ここに終幕。
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