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第5話 清らかな罪人と赤毛の狼の夢
しおりを挟む幼い頃の夢を見ていた。
年齢は十を過ぎたばかりの頃。新緑の五月、杉の大木の上で僕は白い白鳥を抱きしめていた。
「ルカス!白鳥を諦めて自分の命を守れ!」
「嫌だ!見殺しにしたくない!」
アルフレッドの声が下から響いた。僕は叫び返した。
赤毛のアルフレッドが、五月の太陽に照らされながら下から叫んでいた。
彼の髪は炎のように輝き、緑の瞳には深い心配が宿っていた。
「白鳥を離せ!羽と足が傷ついているんだ、助けたって長くない!」
「嫌だ。白鳥を見捨てるなら僕も鷹に噛まれて死んでやる!」
場所はエルフの住む村で、白鳥が鷹に狙われていた。魔法も使えない頃で、今日に限って村のエルフは祭りの準備で忙しく、誰も僕たちの窮地に気づいていない。
「畜生。ルカスはいつも簡単に自分の命を軽く扱う。俺の所に落ちてこい!」
両手を大きく広げるアルフレッドは、この時から大人並みに背が高かった。
彼の青の瞳には強い決意が宿っていた。赤毛の彼の姿は夕陽に照らされ、まるで勇者のように見えた。
「僕を受け止めたら君が潰れる。僕は落ちない」
子供の僕は泣きながら啖呵を切ったとたん、杉の大木がぶるんと揺れた。
「うわっ!」
アルフレッドが杉を蹴り上げた反動で、僕と白鳥が落下した。
「地面にぶつかる!」
目を閉じた途端に予想外のことが起こった。ぽすんと、体がクッションに受け止められたように沈み込んだ。
「えっ、ここはどこ?」
燃えるような真っ赤な巨大な狼の上に僕は座り込んでいた。
「ルカス。ルカスだ。あぁ、やっとお前にあえた」
白鳥は消え失せ、いつの間にか大人の年齢の裸の僕が、立ちあがった狼に黒々とした鼻を擦り付けられていた。
「うわっ!!狼!!ぼく、大嫌い!!」
僕は子供の頃に、エルフの村の門番の狼に間違ってかみつかれて、狼が苦手だ。
「大丈夫だ!お前を噛んだりしない!!」
「えっ!なんでしゃべるの!」
驚く僕に赤毛の狼は一歩下がる。狼の毛並みは炎のようにまばゆく、その体温は冬の夜の暖炉のように心地よかった。
「ルカス、悪い話す時間がない。もう少しの我慢だ。地獄の門から使者が行くからまってろ」
狼はまるでアルフレッドそっくりな表情と声で話すと、ベロンと大きな舌で私の下腹部を舐めた。「あんッ」と、卑猥な声が漏れる。
「俺はガーゴイルなったせいで、地獄の門に縛り付けられて動けない!」
「ガーゴイル?地獄の門?」
僕は混乱して尋ねた。赤毛の狼は牙をつきだして苦笑いをうかべる。
「ルカス、死神にキスだけは絶対に奪われるな」
アルフレッドと同じ青い瞳には、クロノスへの怒りと、僕への深い愛情が混ざり合っていた。
「ねえ、君はアルフレッドなの?」
夢の中で僕はそう呟いた。狼は答えず、ただ優しく僕の額を舐めた。
その仕草には「待っていろ」という無言のメッセージが込められていた。
「地獄の門」という言葉が頭の中で反響し深い眠りへと落ちていくはずだった・・・
「ルカス様おきて下さい」
若い男性の声がして目をあけると、ベッドサイドに白い服の少年がたっていた。
「えっ、誰?」
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作者様は天才だと確信しました!
文章が読みやすく、場面やキャラがぱっと想像できるのでサクサク読めてしまいます!続きがはちゃめちゃ楽しみです!めちゃくちゃ投票したかったです!
お読みくださり、感想をかいてくださり有難うございます✨我がながら、かなり個性的な題名だったので優しい言葉を有難うございます✨🌸今後も頑張ります😄
みつばちさん、こんにちは!
衝撃的な題名に惹かれ、一気に読みました。すごい……!すごい展開だ!!
一生懸命で健気に頑張るルカスくん、これからどうなっちゃうんでしょう!?続きも楽しみにしています♡(木馬プレイ、首をなが~くして待ってますね♡)
トオノホカゲ様
お読みいただき感想をくださり有難うございます✨アップダウンのある展開なので、サスペンスにならないよう楽しく進めるよう努めています😄木馬攻め、実はラストは書かずに既に書いておりまして、pcに眠っております💕ゆるゆる投稿してまいります✨
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