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第1話:目覚めのとき

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(おきて・・・おきて!)



「ん…誰…」




誰かが僕を呼んでいる声がする。次第に覚醒する頭。なんだか体がこそばゆい。



「・・・っは!」





うっすらと開いた視界を覆う木々、木漏れ日が覚醒したばかりの頭に刺激を与える。


それはまったく見覚えの無い、森の中。



「うわっ!ここはどこ!あれ、何でこんなところに僕は・・・ぼく、僕?」




無意識に僕という一人称を口にしていたが、起きたばかりの頭でよく考えてみる。




いきなり目が覚めれば知らない場所。どうやってきたのか、どうしてこんなところで寝転がっているのか、そして僕の名前は?年は?顔は??



(なんだかボーっとする。目覚める前のことを思い出そうとしても霧がかかったようにはっきりしない。これはきっと…)




「き、記憶喪失!」





僕は急いで立ち上がった!幸い服は着ているようだ。ポケットをあさって何か情報が無いか探してみるけど、出てくるのは少しの砂だけだった。



(そうだ、水!水で僕の顔を映せば何かわかるかもしれない!)



そう思って僕はその場を飛び出した。目で見える先に森が開けた場所がある。あそこに何かあるかもしれない!




生い茂る木々を抜け、光差す森の出口へと走る!次第に開ける視界、まばゆく光る景色。






「わぁああ!なんだこれ、すごい、すごいよ!」





僕の目の前に広がる風景は、とても美しかった!




残念ながら湖や川ではなかったけれど、それどころか崖になってて何にも無かったけど。そんなものよりよっぽど価値のある景色だ。




広くどこまでも澄んだ空。眼下に広がる広大な大地に青々と茂る木々。そして日の光を浴びて輝くのは遠くに見える山より大きく感じる、とっても巨大な一本の木!




「記憶は無いけど、なんとなくわかる。ここはきっと僕が居た世界じゃないんだ。そう!ここは…異世界だ!」




ついさっきまで僕の中で渦巻いていた不安はどこかへ吹き飛んだ!ここは夢にまで見た異世界、ゲームや漫画にでてくる冒険と夢のあふれる素敵な世界だ!





(あ!そうだ、僕は水を探していたんだった)




ふと、本来の目的を思い出す。ついつい心躍らせてしまったけれど、僕の状況は初めのころから変わっていない。


まずは自分のことを知る必要がある!





素敵な景色に背中を向けて、来た道を戻ろうと一歩踏み出したそのとき、ふと視界の端に移った自分の左手首に違和感を覚えて目を凝らす。





「あれ、なんだろうこれ」





僕の左手首には腕時計のように何かの印がぐるりとついている。腕時計でいう文字盤のところには丸く円のついたマークがある。僕は何の気なしにそのマークに右手で触れてみた。





「うわっ!」



いきなり目の前に出てきた半透明の四角い何かに、つい声を上げて驚いてしまった。



少し青白く発光している。長方形のボードのような半透明なホログラムらしきこれには、なにやら文字が書かれている。





(これ、ステータスウィンドウって書いてある。ゲームでよくあるようなステータスのボードかな)




僕は上から順々にそこに書かれている文字を目で追っていった。

------------------------
名前:ユウ
性別:男
Lv:1
職業:なし
------------------------


(ここに書かれてるの、僕の名前だ!男っていうことはわかってたけど。あ、やっぱりレベルは1なんだね。細かいステータスは別のページか)



つらつらと読んでいくと、最後のほうに『スキル』と書かれている欄がある。そこにはただひとつだけ、たった一行スキルと思しき言葉が書いてあった。


特殊スキル:異世界転性


(特殊スキル?なんだろうこれ。言葉だけだとどういうスキルなのかわからないな。これを押すと説明文が出てくるんだろうか)



僕は期待に胸を膨らませそのスキルを指で押してみる。予想は的中、スキルの内容について詳細のウィンドウが出てきた!



だけどその詳細については、まったくの予想外だった。短い言葉でわかりやすく、驚愕のスキル効果が書かれている。




特殊スキル:異世界転性
効果対象は種族問わず。性交により自身のレベルを向上させ、ステータス上昇、スキル習得を行うことができる。
パッシブスキル:誘惑〔Lv.1〕



「・・・」



僕の思考は一度フリーズした。



我に返って、今一度その効果を読み直す。




何度見ても間違いない。そこにははっきりと性交という言葉が表示されている。





(せ、せ、性交!性交ってことはつまり、つまりセ・・・)







「ええぇえええええぇえええええええ!!!」




僕の叫び声は木漏れ日の差す森の中でこだまして言った。どうやらこの異世界、僕の想像していた転生物語ではなく、だったみたいだ!!
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