上 下
134 / 153

第131:逆転の術式

しおりを挟む
再生者リジェネイターでも気は失うのですね」



ロザンは寝台に横たわるシェリーを見下ろした。



「温厚育ちのお嬢様には少々ショッキングが過ぎましたか。まぁいいです。抵抗されても面倒ですので」





ロザンは部屋の奥から何かを持ち出してくる。




「あなたほどの強力な再生者を殺すのは一筋縄ではいかない。なので異能には異能をもって殺さなくては」




それは銀色に光る美しい刀身をもった一本の剣であった。神々しささえ覚える見事な装飾の両刃剣。




打ち止めの秘剣ピリオド・ソード。ありとあらゆる事象に終止符を打つ伝説の宝刀。探すのに苦労しましたよ」






ロザンは剣を構え、シェリーの横たわる寝台の脇に立った。





「魔術の構成に必要前提条件である聖女・再生者・人材・広大な施術面積と永久ゼンマイ。誰にも怪しまれること無くすべてがここに揃ったのも、すべては神のご意思。あぁ主よ、ご覧ください」




刃の先端がシェリーの心臓に標準を合わせる。鈍く光る刀身が一瞬その輝きを増した気がした。





「あなたの終わりが私の始まりです。さぁ、今こそ礎となれ!!」





ズグッ




「ゴフッ」




あの超再生力を持つシェリーの口から多量の血が流れ出る!秘剣の一撃は無慈悲にその善なる命に終わりを与え、物言わぬままシェリーは絶命した。




ドドドドドドドドドドドドッ!



不気味な振動が部屋全体を揺らす!描かれた魔法陣は薄緑に発光し、それに呼応するかのように水晶が輝きだした!





「ふふっ!ははははははははははははっ!!完成だ!我が人生を賭してようやくここに極まった!伝説が!今この場から始まろうとしている!!!」






ドクン ドクン



脈打つように振動する部屋の中央に横たわるシェリーの遺体から、何やら霧のような白い何かがふわりと湯気のように舞い上がる。




「ほぉ、さすが聖女ともなれば魂も一級品だな。まさか素の状態で可視できるとは」




やがて霧は一つの大きな塊となって部屋の中を浮遊し始めた。


「さぁ、あなたの居場所はその疑似の器ですよ?おとなしく中へお入りなさい」




浮遊する魂は辺りをくるくると旋回する。



水晶体の輝きが増すにすれ、次第にひかれるように浮遊する魂も水晶へと向かい始めた。




その様子を見守るロザン。







ふと、魂がロザンのそばを掠めたその時だった。






「・・・・・・・・・ユルサナイ」




「は?」





バチンッ!





「うおぉおお!」




強力な力に弾き飛ばされるように、ロザンの体は部屋の隅へ吹き飛ばされる!





「何事だ!!」






先程まで真っ白だった魂から、真っ黒な稲妻がほとばしり始めた。痛々しいバチバチという鋭い音が部屋の中にこだまする。




「馬鹿な・・・まさか!」





次第に稲妻は魂本体をも侵食し始め、透き通るような白は底の見えない黒へと変貌を遂げた。





「術式が・・・反転する!!!」







その身を闇に染めた聖女の魂は、吸い込まれるように水晶体へと消えていった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,172pt お気に入り:33

ひとりぼっちだった隠れマゾおねえさんがショタたちにどろどろに堕とされる話

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:241pt お気に入り:53

【R18】双子の伯爵令息方は今日も愛を囁く

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:1,569

処理中です...