アヤカシ少年は素直じゃない

ぴぴみ

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少年

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「こっち来るな、バーカバーカ」
「……」
「昨日は思いっきり殴りやがって」
「!?」

 目の前で少年に泣かれている。なぜ、こんなことになったのか…。美華子は、今日の記憶を思い返していた。


◇◆◇

 蚊帳かやがかかった布団から抜け出し、日の光を浴びる。蝉の声は煩いほどで、美華子の背中にじっとりとした汗が伝った。

 今日はどうするかと考えていると、昨夜来た子狐達が軒下で誘うようにくるくると回っている。

─ついてこいということだろうか?

 美華子は、邸を抜け出し、彼らの後を追った。

 森の奥深くまで入り込む。子狐達は彼女がついてきているか時折確認しながらも、前へ前へと駆けていく。

 一体どこまで行くのか、疑問には思うものの足は止めない。どこか、高揚している自分にも気がついていた。

 空気が変わる。

 開けた場所に出たかと思うと、一際大きな楠木が存在感を放っていた。

 ヒューヒューと風の音が聞こえる。なぜだかとても静かだった。

 子狐達が漸く口を開いた。

「天狗の坊っちゃんが謝りたいんだって」
「そうそう」
「珍しいよネ」

 釈然としない。無理やり連れて行かれそうになったのだ。殴ってしまったのは悪かったが、こんな奥地まで出向かなければいけないとは…。

「帰っていい?」
「ちょっと待って」
「すぐ来る」
「くふくふ」

 三匹に止められ、仕方なく待つとふわりと木の匂いが強くなった気がした。

 そしていつの間にか黒い髪の少年が…。
悪態をついてもその整った顔立ちは、少しも損なわれることはなく、美華子を見ている。

「えっと…どちらさま?」

 薄々気づいてはいたが、念のため聞いてみる。

「…昨日会っただろ?」

 むすっとして答える目の前の少年。随分と姿が違うようだと首を傾げると『こっちが本来の姿だ』と。

「なんだか可愛い」
「うるさい…!」

 昨日の大人びた口調も、精一杯背伸びしていた結果かと思うと笑ってしまう。

「そっちの方がいいよ」
「…なっ」

 自然と溢れる笑顔を向ける。顔を赤くした少年が口を半開きにして、わなわなと震えていた。
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