くまの復讐

ぴぴみ

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友達

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ある日のことです。

くまには唯一ネズミの友達がいたのですが、

彼に言われたのです。

森の動物たちが、団結して、くまを追い出そ

うとしている、と。

くまの家を燃やす計画を立てている、と。

くまは、悲しみました。

自分はそんなにも嫌われていたのかと…。

くまには家族はおりません。

幸いにも独り暮らしでした。

悲しい気持ちを押し殺しながら、出ていく準

備を始めました。

森を出てしばらく歩き、ほらあなを見つけま

した。

頑丈そうで、意外にも中は広い。

ここをしばらくの棲みかにしようと、くまは

決めました。

しかし、持ってきた荷物を確認していると、

大変なことに気がつきました。

友人ネズミにもらった、大切などんぐりの置

物が無かったのです。

慌てて取りに戻ると、くまの家の前にはネズ

ミがいました。

くまは、喜び、近づいていきました。

彼の声が聞こえてきます。誰かと話している

様子でした。

「…くまは、ちゃんと、追い出しました!だ

から僕をこの森にいさせてください!」

ネズミの様子は必死そのものでした。

─ああ、そういうことだったのか。

くまは、納得しました。

胸はきりきりと痛んでいますが、無視しま

す。

必死さというものが、彼の様子を指して言う

のなら自分はどんなに呑気に見えていたこと

だろう…。

くまは、そんなことも考えました。

ほらあなに戻り、これからどうやって生活し

ていこうかと考えます。

この世界は狭く、荒れ果てています。

くまが元々住んでいた森だけが、恵みの土地

なのです。

くまの心は疲れ、弱っていましたが、変わら

ずお腹は鳴り、空腹を訴えます。

(しょうがない。森の動物たちに頼もう。彼

らもほんの少しの食料なら分けてくれるだろ

う)

くまは、そう思い、再び森に戻ってきまし

た。

くまを見て、まず小鳥が騒ぎます。

「何しにもどってきた?ここは、お前のい

るところではない」

他の動物たちも口々に言いました。

「早く帰れ!!」

くまは震えながらも声を出しました。

「─ほんの少し食料を分けてくれません

か?朝から何も食べていません。」

動物たちは言いました。

「お前に渡すものなどない!…それとも僕た

ちを食べるか?神話の中の残酷なくまのよう

に…」


くまは、何も言えませんでした。


─誰も食べたりなんてしない


その言葉は声にはなりませんでした。








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