レンタル彼氏を頼んだら、来たのはアヤカシでした

ぴぴみ

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「本当に、大丈夫かな?」

 結婚式に出席する前には打ち合わせが必要だ。私は、数ある中から、【お客様のご要望に誠実にお応えします】という誘い文句に惹かれて、評価の高い一つのサイトを選んだ。

 写真から清潔感のある黒髪短髪のイケメンを選び、メールでやり取りをする。

 そして、ついに今日ここで会う予定となっているわけだが…。

 危ない男が来たらどうしよう。今思うと、登録されてる男性が皆妖艶すぎたような…。
不安は募る。しかし、性格的にドタキャンは論外だ。

 ミクルは覚悟を決めた。

「待たせたな」

 待ち合わせの時計塔の下で、グジグジと考え込んでいると、突然の美声が鼓膜を震わせた。

 振り向き仰ぎ見ると、そこにいたのは写真そのままのイケメン。まずは、それにほっとして向き合った。

「ううん。今日はよろしくお願いします」
「…ああ」

 どことなく不機嫌そうな様子に面食らう。愛想が良すぎるのも疲れるが、これは…と思いかけたところで手を引かれた。

「店に入るぞ」

 そういえば、打ち合わせで近くのカフェに行くことは決まっていた。強引だとは思ったが、私はとりあえずついていくことにしたのだった。

 落ち着いた雰囲気の店内には珈琲の匂いが漂っている。人も疎らで、これなら詳しい事情も話しやすそうだ。

 注文した飲み物が置かれ、一息ついたところで私は口を開いた。

「お金は始めに渡せばいいですか?」
「いや、それは後でいい」

 そこで会話は終わってしまう。
今後の計画に一抹の不安を抱いたところで、男─狐田こださんが紫がかった黒い瞳でじっと見つめてきて言った。

「不毛じゃないか…?」
「あなたに関係あります?」

 反射的に言葉が出た。

 これはチェンジも…と渡す予定のお金を天秤にかけて考える。

 どうなるにしろ、黙ってはいられなかった。

「見栄を張っても意味がないとか…そういう
お説教なら結構です。同情してもらおうとも思ってません。そもそも、一度了承しておいて─」

 そこまで言いかけたところで、異変に気づく。

「は?」

 男の頭上に黒い獣耳が出現し、しょぼんと垂れていた。

 



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