操り人形のように悪役令嬢は動かされる~好きに行動できないって辛いです~

ぴぴみ

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或る悪女の覚醒

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桜は、乙女ゲームを愛している。
予想のつかないストーリーに魅力的なキャラクター。美しい音楽が場面場面を盛り上げて…。

魅力的なキャラクターたちが作り上げていく物語。要所で登場する選択肢を選ぶことで、
その世界に参加している感覚も味わえる。

少しの選択の違いで、主人公の人生は激変する。もちろん死ぬこともある。

だが、桜は思うのだ。
ハッピーエンドもメリーバッドエンドもどちらも素晴らしいと。心が動かされる展開を愛していると。

いつものように、寝不足になるのも構わず深夜2時過ぎまでプレイする。
すると突然、目眩がして視界が暗くなった。


───・・・

次に目を開けると、そこは知らない場所だった。

豪華なベッドに一人横たわっている。

目だけくるりと動かすと、少し離れた場所に赤毛の女が立っていることに気がついた。

本格的なメイド服を着ていて、コスプレのクオリティー高いなと、ぼーっと眺めているといきなり女は叫んだ。

「ドロテアお嬢様がお目覚めに!」

いや、何言って?
ドロテアなんて、そんな…。

私の大好きなゲームのヒロインと同じ名前じゃないか。
乙女ゲームに、はまるきっかけにもなった
作品『華々しく散ってやりましょう』の。

評価は分かれていたが、悪役令嬢が主人公の乙女ゲーム。考えて進まないと、攻略キャラクターたちに酷い目に遭わされ、断罪される。

声を出そうとしたが、掠れてひゅーっという音にしかならない。
腕を持ち上げてみると、まず形のいい爪が目に入った。違和感を感じて、身体のあちこちに触る。

すぐに私は気づいた。

いや、こんなに胸大きくないわ。
なんたる、けしからんボディだ。

一日で、とんでもない成長を迎えるという
ミラクルでも起きなければ、こんなことはあり得ない。

どうやら夢を見ているらしい。
私はそう、結論づけた。
どうせなら好きなことをしよう…。

しばらく胸の弾力を堪能していると、扉がガタっと開いた。

「ドロテア起きたのか!」

「………」

いい感じに年をとったおじ様と氷のような美貌の青年が無言で近づいてくる。

どちらも黒髪に竜胆りんどうの花のような青紫色の瞳。

彼らを見て確信した。何度もプレイしている私が間違えるはずもない。
ここは、『華散り』の世界だ。

気づいた途端、選択肢が現れる。

* どちら様ですか?
* 出ていって!
* お腹がすいたわ

まだ序盤。どれを選んでも巻き返しがきく。攻略キャラの一人である義兄、フリードの好感度には影響してくるが…。

好きなキャラクターの一人なので、迷いなく私は『お腹がすいたわ』を選ぼうとした。

間が抜けているとは言え、これが一番いい。

しかし口にしようとした言葉は声にならなかった。そして勝手に私の口は動き出す。

「どちら様ですか?」
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