わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭

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4.テスト勉強

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「こんな朝早くから一体何の用ですか」

「朝早くって、もう十時だよ?」

「えっ! もう、そんな時間でしたの……!?」

 朝起きてすぐにシルヴィにひっぱって来られたので、時計を見ていなかった。どうやら私は随分遅くまで寝ていたらしい。

 呆然とする私を見て、アベル様は声を立てて笑う。

 それから、ソファの上に置いてあった包みを差し出してきた。

 私は首を傾げながらそれを受け取る。


「これは何ですの?」

「学園の授業に関する本。リリアーヌに合いそうな本を集めておいたんだ」

「え……っ」

 驚いて受け取った包みに視線を落とした。

 わざわざ、そんなことまでしてくれるなんて。

 不覚にも少々感動してしまった。


「アベル様、私のために……」

「開けてみて。その辺りの本ならリリアーヌにも無理なく理解できるはずだよ」

 私はうなずいて、言われた通り包みを開ける。

 中からは、歴史学や経営学、法学などの本が出てきた。どれも昨日私が苦手だと言った教科ばかりだ。

 ……しかし、なんだか表紙がやけに幼いように見えるのは気のせいだろうか。

 歴史の本なんて、まるで絵本みたいだ。

 私はその中の一冊のページを捲る。最初のページに書かれている一文を見て、私は憤慨した。


「ちょっとアベル様!! なんなんですの、これ!? 初等部用じゃないですか!!」

「リリアーヌの理解に合わせたら、それくらいがちょうどいいかと思って……」

「馬鹿にしないでくださいまし! 私は十六歳ですわよ!!」

 本はどれも初等部用、しかも見た目からして低学年から中学年向けの本ばかりだった。

 前世で言うと、小学三、四年生の子が読むような本だ。歴史の本にいたっては一年生の子でも読めるかもしれない。

 私は受け取った本でアベル様の頭をバシバシ叩く。

 アベル様は腕で頭をガードしながら、ごめんごめんと謝った。


「そんなに怒らないでよ。悪かったって。でも、別にリリアーヌのこと馬鹿にしてるわけじゃないよ。本当にわかりやすいから騙されたと思って読んでみて」

「さすがに初等部用の本なんて読まなくても理解できますわ!」

「じゃあ、持ってるだけでもいいからさ」

 アベル様はそう言って、再び私に本を差し出す。

 私は渋々本を受け取った。

 受け取ってはみたものの、なんだか納得がいかない。
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