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8.お屋敷を綺麗に
①
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九日目の朝、洗濯室で気になるものを見つけた。
ベアトリス様宛ての手紙だ。
洗濯をしようとしたら石鹸を床に落としてしまい、慌てて取りに行くと、壁と床に隙間が開いているのを見つけたのだ。幅は葉書の横幅くらいで、高さは指も入らない程度。
気になって、書庫で前に見つけた薄い金属のしおりを持ってきて中に差し入れてみた。すると、何か紙のようなものが引っ掛かる。悪戦苦闘して、外に引っ張り出した
出てきたのは古びた封筒だった。
封はしていなかったので、そっと開けてみる。そこには丁寧な文字で、感謝の言葉がつづられていた。
『あなたがくださった薬のおかげで父の病気はすっかりよくなりました。本当に感謝してもしきれません。
あなたのような方が、何年も屋敷に幽閉されなくてはならないなど、理解に苦しみます。
私に力がないばかりに、何もできなくて申し訳ありません。手紙とあのお茶は確かにフェリシアン君にお渡ししています。あの子はあなたからの贈り物をいつもとても喜んでいます。
こんなことくらいしかできない私を、どうか許してください。
あなたの魔法と薬学の知識は、ほかには代えられないものです。あなたが無事に屋敷を出て、フェリシアン君と一緒に、自由に暮らせるようになることを願っています』
最後まで読んでから、封筒を見返す。そこには古びて薄れているけれど、確かに「ベアトリス・ヴィオネ様へ」と書いてあった。
手紙はそれだけではなかった。
厨房の壁の隙間や、客間の床や、階段の途中など、注意して探してみると、至る所に手紙一つがやっと入るくらいの薄い隙間が開いているのだ。
何通ものベアトリス様への手紙が見つかった。
どの手紙にも、薬によって病気がよくなったとか、送ってくれた宝石を売ったおかげでなんとか食いつなぐことができたとか、溢れんばかりの感謝の想いが記されていた。
ベアトリス様は病気の人間がいると知ると薬を作り、困窮しているものがいると自分のアクセサリーや服についていたわずかな宝石を外して送っていたらしい。
やはり、ベアトリス様は恐ろしい魔女なんかではなく、親切ないい人だったのだろう。
そしてやはり以前見つけた薬草のメモは、ベアトリス様の書いたものだったのだ。
手紙の内容から、どうやら彼女の息子はフェリシアンというらしいこともわかった。そういえば、以前見つけた手袋にも、F・Vとイニシャルが編み込まれていた。
フェリシアン・ヴィオネ。二十年経った今、彼もすっかり大人になっているのだろう。今頃はどこで何をしているのだろうか。
ただ、疑問なのは幽閉されていたベアトリス様がどうやって薬や宝石かを送っていたのかということだ。王家が知ったらそんなことを許すはずないのに、と私は頭をひねった。
「それにしてもベアトリス様……本当に公爵家の子供を殺そうとしたのかしら」
手紙を読んでいるうちに、私の中ではどんどん疑問が膨れ上がっていった。
こんな風に自分の持ち物をあげてまで人を助けていた人が、幼い子供を傷つけるようなことをするだろうか。
いや、本当はもっと前から疑問を抱いていたのだ。
私の元へ頻繁に姿を見せるおそらくベアトリス様であろう幽霊。あの人を見ているだけでも、とてもひどいことをするような人だとは思えない。
集めた手紙のうちの一つを手に持ってじっと眺める。
『ベアトリス様、いつか真実が世間に知られてあなたが解放される日を待っています』
真実。二十年前に起こったことの真実とは一体なんなのだろう。
しんみりと考え込んでいると、突然空気が冷えた。顔を上げると、予想通りそこには幽霊がいる。
ベアトリス様宛ての手紙だ。
洗濯をしようとしたら石鹸を床に落としてしまい、慌てて取りに行くと、壁と床に隙間が開いているのを見つけたのだ。幅は葉書の横幅くらいで、高さは指も入らない程度。
気になって、書庫で前に見つけた薄い金属のしおりを持ってきて中に差し入れてみた。すると、何か紙のようなものが引っ掛かる。悪戦苦闘して、外に引っ張り出した
出てきたのは古びた封筒だった。
封はしていなかったので、そっと開けてみる。そこには丁寧な文字で、感謝の言葉がつづられていた。
『あなたがくださった薬のおかげで父の病気はすっかりよくなりました。本当に感謝してもしきれません。
あなたのような方が、何年も屋敷に幽閉されなくてはならないなど、理解に苦しみます。
私に力がないばかりに、何もできなくて申し訳ありません。手紙とあのお茶は確かにフェリシアン君にお渡ししています。あの子はあなたからの贈り物をいつもとても喜んでいます。
こんなことくらいしかできない私を、どうか許してください。
あなたの魔法と薬学の知識は、ほかには代えられないものです。あなたが無事に屋敷を出て、フェリシアン君と一緒に、自由に暮らせるようになることを願っています』
最後まで読んでから、封筒を見返す。そこには古びて薄れているけれど、確かに「ベアトリス・ヴィオネ様へ」と書いてあった。
手紙はそれだけではなかった。
厨房の壁の隙間や、客間の床や、階段の途中など、注意して探してみると、至る所に手紙一つがやっと入るくらいの薄い隙間が開いているのだ。
何通ものベアトリス様への手紙が見つかった。
どの手紙にも、薬によって病気がよくなったとか、送ってくれた宝石を売ったおかげでなんとか食いつなぐことができたとか、溢れんばかりの感謝の想いが記されていた。
ベアトリス様は病気の人間がいると知ると薬を作り、困窮しているものがいると自分のアクセサリーや服についていたわずかな宝石を外して送っていたらしい。
やはり、ベアトリス様は恐ろしい魔女なんかではなく、親切ないい人だったのだろう。
そしてやはり以前見つけた薬草のメモは、ベアトリス様の書いたものだったのだ。
手紙の内容から、どうやら彼女の息子はフェリシアンというらしいこともわかった。そういえば、以前見つけた手袋にも、F・Vとイニシャルが編み込まれていた。
フェリシアン・ヴィオネ。二十年経った今、彼もすっかり大人になっているのだろう。今頃はどこで何をしているのだろうか。
ただ、疑問なのは幽閉されていたベアトリス様がどうやって薬や宝石かを送っていたのかということだ。王家が知ったらそんなことを許すはずないのに、と私は頭をひねった。
「それにしてもベアトリス様……本当に公爵家の子供を殺そうとしたのかしら」
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こんな風に自分の持ち物をあげてまで人を助けていた人が、幼い子供を傷つけるようなことをするだろうか。
いや、本当はもっと前から疑問を抱いていたのだ。
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集めた手紙のうちの一つを手に持ってじっと眺める。
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