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14.王宮では リュシアン視点③

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 部屋にはすでに令嬢たちが全員集まっていた。

 丸テーブルの一番奥にはオレリアが穏やかな笑みを浮かべて座っている。彼女に近い席ほど高位の家の令嬢が座っていた。まるで女王みたいだな、とその光景を見て思う。

「リュシアン様、お待ちしておりました」

 目が合うと、オレリアは立ち上がってこちらへ駆け寄ってきた。

「ああ、遅れて悪かった」

「いいえ、リュシアン様はお忙しい方ですもの。それよりも、うちでシェフに作らせたケーキがあるんです。召し上がりませんか?」

「ああ、ありがとう。いつも悪いな」

 オレリアに腕を引かれるまま、空けられていた彼女の隣の席に着く。


 オレリアがいつも通りしきりに話しかけてきたが、あまり話していたい気分ではなく、適当に相槌を打って流していた。

 こちらの気持ちを察したのか、オレリアは微笑みを浮かべ言葉を途切れさせる。そのうち会話の中心はほかの令嬢たちに移った。

 俺はぼんやりと彼女たちの話を聞いた。

 はじめは当たり障りのない内容だった会話が、しだいに前回のお茶会の話へ移っていく。

「それにしてもこの前は本当に驚いてしまったわ。紅茶に毒が入っているなんて……」

「本当に。リュシアン様が無事に元気になられてよかったですわ」

「リュシアン様、もうお体に異常はありませんの?」

 令嬢たちに一斉に視線を向けられたので、問題ないとうなずいた。令嬢たちはよかったですと笑う。


「けれど、ジスレーヌ様ってひどい方。婚約者に毒を盛るなんて。一体何を考えてそんなことをしたのかしら」

「恐ろしいわよね……。リュシアン様とオレリア様が席を離れたときも、窓の近くでずっと二人を睨みつけていたのよ。ああいう人よりももっとリュシアン様にふさわしい方は別にいるんじゃないかしら」

「そうよね、私、実は前から何かしでかしそうって思っていたの。今からでも婚約者を変えたほうがいいと思うわ」

 令嬢たちは眉をひそめてジスレーヌを非難しだす。言っていることは何も間違っていないのだが、何となく不愉快な思いで聞いていると、オレリアが口を挟んだ。

「あなたたち。この場にいない方のことを悪く言うものではありませんわ」

「あ……、ごめんなさい、オレリア様……」

 令嬢たちはうろたえ、慌てた様子でオレリアに謝る。オレリアはすぐに表情を変え、気をつけましょうね、と微笑んだ。

 ふと、違和感が頭をかすめる。

 ジスレーヌは俺がオレリアと席を立ったとき、窓のそばでこちらを睨んでいたというのは本当だろうか。
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