君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭

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2.お姉様とその婚約者と

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 それから私たちは、演習場の事務所まで向かった。

 そこで今日立ち合ってくれる予定のヘイル侯爵家の方と会うことになっているのだ。

 お屋敷風に作られた事務所の扉を開け、中に入ると、そこには濃紺のジャケットを着た青年が待っていた。

 黒髪に青緑色の目をした美青年。彼の姿を見るのは数ヶ月ぶりだ。

 彼は私たちが入ってきたのに気づくと、こちらへ近づいてきた。


「あなたたちがラネル魔術院のオーブリー学園長のおっしゃっていた魔導士様ですね。私はヘイル侯爵家のエイデン・ヘイルと申します。本日はよろしくお願いします。……ってあれ? メイベル嬢? なぜ君がここに?」

 礼儀正しく挨拶をしていたエイデン様は、私を見て驚いた顔をする。

 今日立ち合う予定のヘイル家の方は、まさにお姉様の婚約者のエイデン様だったらしい。私は彼に事情を説明した。

「エイデン様、お久しぶりです。実は私、今ラネル魔術院に入学して魔法を学んでいるんです。そこで学園長先生からこの魔法演習場の魔獣退治を頼まれてうかがいました」

「本当に? 驚いたな。まさかメイベル嬢が来てくれるなんて」

 エイデン様は目をぱちくりさせながら言った。

 その後、エイデン様は興味津々の様子で、私がラネル魔術院に入った理由や、普段どんなことをやっているのかなどを尋ねてきた。私がひとつひとつ答えると、興味深そうにうなずいていた。


「エイデン様、オーブリー学園長から演習場に魔獣が大量に出現するようになったと聞いたのですが、詳しくうかがってもよろしいですか?」

 エイデン様の質問攻めが一段落すると、レナード様がそう尋ねた。エイデン様は真面目な顔になって口を開く。

「ええ。実は数週間ほど前から――……」

 エイデン様は説明を始めた。

 彼の話によると、数週間程前から突然狼型のフォスティという魔獣が魔法演習場の広場や森など至る所に出現するようになったらしい。

 どうやら、演習場の付近にある山から餌を求めて移動するうちに演習場にたどり着いたようだ。

 フォスティは魔獣の中ではそれほど強くない生き物だけれど、気性が荒く人を追いかけ回したり噛みついたりすることもある。演習場ではフォスティによる怪我人も出ていて、現在は演習場を封鎖せざるを得なくなっているらしい。

 困ったヘイル家の当主様は、昔から付き合いのある学園長先生になんとかしてくれないかと依頼したのだそうだ。


「……というわけなんだ。二人には迷惑をかけて申し訳ないけれど、協力してもらえるかな」

「ええ、もちろんです! 協力させていただきます」

「お任せください」

 私とレナード様が答えると、エイデン様はほっとした顔になる。

 それからエイデン様は、私たちを演習場の魔獣がよく出るという場所に案内してくれた。
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