君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭

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1.婚約者様は私といると疲れるらしいです

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 そんな風に過ごしていたある日、授業後に残って課題をしていると、レナード様が教室へ入ってきた。

「あれ、メイベルさん。まだ残ってたんだね」

「レナード様。はい、課題を終わらせていきたくて」

 レナード様は、同じくこのラネル魔術院に通う生徒だ。

 少し長めの銀色の髪に紫の目をした美少年。年齢は私と同じく17歳らしい。

 いかにも高貴そうな外見の通り、侯爵家の生まれだと聞いた。

 侯爵家出身なら、非公式のラネル魔術院よりもルヴェーナ魔法学園に通う方が自然に思えるけれど、侯爵家の跡取り教育と両立するには魔術院の方が都合がいいのだそうだ。

 学園には意外とそういう人が多くいる。

 レナード様は不思議そうな顔で私に向かって尋ねてきた。


「お屋敷に帰らずここで課題をやっていくの?」

「はい。うちでは機材を使えないので、魔術院のものを借りていこうと」

 今回の課題は、指の先ほどの魔法生物を増殖させて、その変化を観察するという課題だった。

 課題には魔法顕微鏡やらナイフやらが必要だ。

 この魔術院に通う生徒たちは大抵家に機材を取り揃えているけれど、私は家族に内緒で通っているのでそういうものは用意できない。

 なので、教室に残ってやっていってしまう予定なのだ。


「そっか。遅くまで残って課題をやっていくなんて偉いね」

「いえ、課題をするのは当然ですから。それに魔法関連のことはなんでも楽しいですし!」

 私は元気よく答える。課題とはいえ、魔法に関わっていられる時間は楽しくて仕方がなかった。

「メイベルさんは魔法が好きなんだね」

「はい、私の生きがいです!」

 お姉様と比べられて落ち込んでいたとき、唯一私を励ましてくれたのが魔法だった。

 決して才能豊かというわけではなかったけれど、知識を蓄えて練習を重ねるうちに上達していく魔法は楽しくて、いつしか私の生きがいになっていた。

 そこまで好きだった魔法を、私はブラッド様と結婚するために諦めてしまったわけだけれど。

 ブラッド様にああいう風に言われて、自分を見直す機会ができてよかったのかもしれないと今では思う。魔法に全力で取り組める時間を持ててよかった。

 レナード様は興奮気味に魔法について語る私を見て笑っていた。


 すると、教室の扉が開いて、黒いローブを羽織った先生が焦ったように教室へ入ってきた。

「困った……どうしよう……」

「先生、どうかなさったのですか?」

 尋ねると、先生が驚いたようにこちらを見る。
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