君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭

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1.婚約者様は私といると疲れるらしいです

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 私たちは今日の授業について話しながら教室まで向かう。

 歩いている最中、ふとレナード様が言った。

「メイベルさん、ブラッド殿との婚約は解消できたって言っていたよね」

「はい、無事に婚約解消できました。両親には随分怒られてしまいましたが、契約板の紋章を消してしまっていたのでもうどうしようもないと思ったみたいです。最後には認めてくれました」

「ブラッド殿も墓穴を掘ってしまったね……」

「? 何か言いましたか?」

「いや、なんでもないよ。その……、メイベルさん。新しい婚約者はもう決まってるのかな?」

 レナード様は少し緊張した声で尋ねてきた。

 私は首を横に振る。


「いえ……。この先私と婚約してくれるような方は現れないかもしれません。もともとブラッド様と婚約する前も、お姉様と違って私には全然縁談が来なかったんです。ようやく婚約できたブラッド様と別れてしまった私には、もう縁談なんて来ないでしょうね……」

「そ、そっか……! メイベルさん、それならさ」

「でも、いいんです! 私、ブラッド様と離れて魔術院に通ってみて、自分がどれだけ魔法が好きだったのか気づきました! これからは思いきり魔法に打ち込んでいくつもりです。婚約者なんてむしろいないほうがいいですわ!」

 私は晴れ晴れした気持ちで答える。

 明るい顔をしていたレナード様は、なぜか困惑気味の表情になってしまった。

「そ、そっか……。婚約者なんていないほうがいいか……」

「ええ、その分目一杯魔法に打ち込む予定です! 私、結婚せずに魔法省の魔導士を目指そうかと思ってるんです!」

「それはいいことだね……。応援してるよ」

 レナード様はなぜだか悲しげな声でそう言った。

 婚約解消した私が空元気を出しているのだと思い、同情されているのだろうか。私は本当に元気なのに。


 しばらくそんな話をしながら歩いていると、ふとレナード様は言った。

「メイベルさん、魔法に打ち込むのもいいけどさ。今度は同じく魔法が好きな人を婚約者に選ぶのもいいんじゃないかな」

「魔法が好きな人……。そういう発想はありませんでした。確かにそういう手もありますね」

「そうそう! 今すぐに決めなくても、ブラッド殿よりメイベルさんに合った人はたくさんいるよ!」

 レナード様は勢い込んでそう言う。

 本当にレナード様はなんてお優しい方なのだろう。私の決断を応援してくれただけでなく、結婚も諦めることないと応援してくれるなんて……。


「そうですね。今は考えられませんけれど、いずれそんな人に会えたら嬉しいです」

「うん、意外とすでに近くにいるかもしれないしね!」

「まぁ、そうだったら素敵ですね」

 私は全力で励ましてくれるレナード様に感謝した。

 感動して「レナード様は本当にお優しい方ですね」と何度も言っていたらなぜか微妙な顔をされてしまったけれど、私は何ともいい気分だった。
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