Sports Hitman

糸魚川叉梨有

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殺し屋特捜部③

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「特捜総会を始める一同、礼」
全員が礼をするが俺はしない。なんか皆が礼をして、元の姿勢に帰ってくるのが優越感があって気持ちいいのだ。
「欠席者はいるか」
二本の手が挙がる。その二人はそれぞれ、本日の欠席者を伝える。
「欠席者二名。承った!」
野太い声で叫んでいるのはガム・スマート準大将だ。
経歴二十年の大ベテランで元々戦闘能力にはそれほど長けていなかったが、地道な訓練と筋トレにより自分の拳だけで上から二番目の準大将まで上り詰めた人だ。特捜の中には、憧れる人もいるが、呑みなどに連れていかれると変な論理を展開されるため、嫌いな人の方が多い。ちなみに自分は嫌いだ。
スマート準大将が叫んでいるのを聞いて耳障りだと思いながらボンヤリしていると前から何やら変な駆け引きが聞こえてきた。
ジャスさんとダルウィン準大将だ。
「おいジャス。言え。早く。」
「え?いや、そこはウチの長が言うべきですよ。」
「その長が命令中だぞ。」
「パシリでもなんでもやりますから今日は勘弁して下さいよ!」
と何かを言いたいようだ。ダルウィン準大将は顔色は変えなかったが、少々焦りが見えた気がした。
「そこ。何。」
スマート準大将の隣からまた通りのいい女性の声が聞こえる。剣のように鋭い声だ。
彼女はイブキ・カイヅカ準大将で、日本生まれ日本育ちだそうで、ここに来るために懸命に勉強したんだとか。その勉学だけでここまで来ている。そして、何とダルウィン準大将の彼女だというウワサも多い。なんてインテリカップルなんだと感心してしまう。
「い、いや………何でも……。」
ダルウィン準大将は完全に潰されてしまい、小さな声で答えた。
「ふん。そう。」
と答え、席に着く。本当にカップル何だろうか………
「続けてください。」
そうカイヅカ準大将が言うと、全員がその通りに動く。
「よしでは、ソープ準大将。よろしく。」
「は。」
そう答えたのはソープ・ジャケット準大将。
超真面目でものすごく仕事が出来ると有名な人だ。しかし、怒らせたら人ではなくなるという噂も多く、恐れられている。
「では、全体調査の報告を御願いします。」
と、会議の指揮を取っていく。
数秒経って、ジャスさんが手を挙げる。
「ゴーランド・ジャス特将。」
ソープ準大将に名指しされたジャスさんは重だるそうな体を持ち上げ、立つ。そして報告を始めた。
「はい。昨夜未明、パトロール中に"A6"と対峙しました。被害は数名に抑えることができています。」
ソープ準大将は「うむ」と言ってそれを承ったが、ジャスさんの傷んだ腕を見ようとしていないことがよく分かった。それに関しては、自分も同感であった。
戦闘による殉職者数名を黙祷により祈願した後、ソープ準大将が毛色を変えて話し始めた。
「この度は、皆さんに、確認したいことがあります。この質問に承諾できない者はここから立ち去る事を推奨します。」
彼は一つため息を着く。目を閉じ、また開ける。
「この中に、死にたくない人はいますか?」
彼が尋ねた途端、それの魂胆が目に浮かび上がった。
これから大きな争いが始まるのだから、死にたくない奴は戦闘中に雑念が入ってしまう。だから士気をあげるべくこの質問をしているのだと、全員が察した。
前のソープ準大将含めた三人は、何もミーティングーせずこの発言をしたようで、カイヅカ準大将が少しオドオドしている様子が目に入る。
全員が魂胆を見据えてしまったせいで、本当は絶対に死にたくなくても、こんなしんとした雰囲気に勝って出ていこうとするものは誰もいなかった。少なくとも、自分は死にたくない。
誰もが沈黙の中、約十秒程度が流れて行った。
耐えられなさそうな職員も出てきそうな中で、ガチャ、と扉が唐突に開いた。
「オレはぁ死にとうないなあ」
コテコテの関西弁を最初の言葉に現れたのは本当に顔も見た事のない、俺と同じ年齢くらいの男だった。制定スーツは着てはいるが、シワが寄って集っており、そこら中に砂のようなシミが着いている。おでこ周りに巻くはずのスポーツバンドが首にかけられて、髪は若干紺色に染めてあり、前髪は鼻がしっかりと隠れるほどだった。目は…辛うじて片目だけ見える。
全員からの視線を浴びせられていたが、何も分からないというふうにとぼけた顔をしている。
「誰?」
カイヅカ準大将が言う。こういう人物はカイヅカ準大将のしっかりとしたターゲットとなる。
「あ、名前っすか?」
彼は何も臆することなく答えている。聞いているこっちが鋭い彼女の口調に倒れそうなのに……
「あなたの特捜での情報。全て教えなさい。あと、今日は重要な会議よ。なぜ遅れてきたのかも。」
本人は分かっていないがカイヅカ準大将の怒りゲージは着々と上がっている。もう刺激はやめておいた方がいい。
「あの、この方は、その……会社でよくいる"ウザイ上司"枠の方ですか?」
バカヤロー!
途端に辺りがザワつく。ほとんどはヤバいヤバい、と焦りを隠しきれない様子だ。
「は?」
カイヅカ準大将の怒りゲージはMAXへと達した。そして両手全指をバキバキと鳴らし、左右伸びをしてから、そいつの胸ぐらを掴む。少し持ち上げて
「常識から外れた阿呆を調教してあげるのが、アタシの務め。そのためならウザくなったって構わないわ。」
素直に持ち上げられている彼は「ごめんなさい」と一つ謝罪したが、その念は一切感じとれない。
「フフ、全然反省していないようね。あの世へ送ってあげるわ。」
彼女は腰に据えたアイスピックを取り出す。
スマート準大将が叫ぶ。
「ダメです!カイヅカ準大将!」
彼女を取り抑えようと進み出るが、彼女は容赦なく首筋にピックを突きつける。
「スマート準大将!私はね、こんな事する奴が大っ嫌いなの。人間は上下関係をしっかりと守るべきよ!一歩でも進めば殺すわ!」
スマート準大将も為す術なしというように、その場に止まってしまった。
「いや、進まなくても殺す!」
少し反動をつけて首筋に突き刺し━━━
「活動停止。」
俺の目の前に座るダルウィン準大将がパチッとPCのenterを押す音が聞こえた。
それと一緒にカイヅカ準大将は中身の無い着ぐるみのようにその場にバタリと倒れる。
また周りが騒がしくなる。カイヅカ準大将の正体が何か。あの男は誰か。何が起こったのか。
ザワザワと騒ぐ中、一人の男が唐突に自己紹介を始めた。
「どもども!今日から特捜部にお世話になります!と申します!よろしく!」
雰囲気は、ただの不潔な男だった。
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