私が一番嫌いな言葉。それは、番です!

水無月あん

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ひっかかる

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きっぱり断ったお父様に、国王様が重々しくうなずいた。

「マイリ侯爵。そなたの縁者であるミナリア嬢にガイガーがしたことを思えば許せないのもわかる。だが、無理を承知で言わせてもらう。あれから11年もたった。ミナリア嬢も今は幸せに暮らしておると聞く。どうだろう。令嬢に、ガイガーの茶会の誘いを受けてもらえないだろうか?」

はあ!? ちょっと、国王様。一体、なにわけわかんないことを言いだしたの!?
よりによって私が、なんで天敵の茶会に参加しないといけないのよ!

と、叫びたいところを、必死で口を閉じる。

「国王様。申し訳ないですが、それはご容赦ください」

お父様が再度きっぱりと断ってくれた。

これでひと安心と思ったら、おもむろに国王様がお父様に向かって頭を下げた。

お父様が驚いたように言った。

「国王様。頭をおあげください……!」

が、国王様は頭を下げたままだ。
遠まきに見ている人たちが、ざわつきだした。

他の人たちからは離れているから、話の内容は聞こえていないだろうけれど、国王様が人前で臣下に頭を下げるなんて普通じゃない。

……っていうか、国王様はなんでそんなことをしてるの!? 
お父様が困るじゃない!

やっと国王様は頭をあげると、お父様に頼み込むように話し出した。

「ガイガーの妃アンヌは、最初は、番ということで皆に祝われもしたが、やはり、時間がたつと、色々無理がでてくる。平民がいきなり妃になったんだからな。王宮で教育を受けていても、当然、ミナリア嬢と比べられる。酷なことにアンヌはごく平凡な娘だ。優秀だったミナリア嬢とはまるで違う。努力しても到底おいつけるものでもない。ミナリア嬢であったならば……と、いまだに言う者もいるそうだ。アンヌは、ガイガーが頼りないこともあり、相当、傷ついたのであろう。王家としては醜聞になるので、できるだけかくしておったが、アンヌは妃教育も途中で放棄し、ずっと屋敷にこもっておる。私や王妃は何年も会っておらん。王宮へ呼んでも、体調が悪いと言って来ないからな。そんなアンヌが自分の言動を反省し、王女を招いて茶会を開きたいなどと言ったとは正直私も驚いておる。が、これは最後のチャンスかもしれん。もし、この茶会がうまくいけば、アンヌも王子妃として自信がつくかもしれん」

国王様の発言に、叫びそうになった。

つまり、その王子妃とやらは、第二王子と一緒にミナリア姉様を理不尽に傷つけたのにもかかわらず、ミナリア姉様に謝罪もなく、気を遣うこともなく、ド派手な結婚式をあげておいて、いざ、王子妃教育になったら、完璧なミナリア姉さまと比べられて傷ついたからって、ひきこもったってこと!?

なんて自分勝手な! 甘えるんじゃない!
と、すっかり猛獣化した私は心の中で吠えまくる。

「それならば、なおさら、うちの娘は関係のないことです。王女様だけを茶会にお呼びになればよろしいのでは?」

「あら、私は是非、ルーファスとララベルさんともご一緒したいわ。それにそのような過去があるのなら、なおさら、ララベさんが参加されたほうが良いと思いますけど」
と、強気な口調で国王様とお父様に割ってはいった王女様。

「それは、どういう意味でしょうか……?」

ルーファスが咎めるように言った。

普段のルーファスからは想像できないほど冷たい声。
こんな声もでるんだと、怒りも忘れて、ちょっと驚いてしまう。

「アンヌ様が自信をなくす原因が、ララベルさんの親戚の令嬢だったんでしょう? とはいえ、ご本人を招待するわけにはいかないでしょうから、代わりにララベルさんを招待して、きちんともてなすことができれば、アンヌ様も自信がつくのじゃないかしら。ねえ、ガイガー王子」
と、王女様が第二王子に意味ありげな視線をむけた。

そんな王女様に向かって、第二王子が嫌な笑みを浮かべてうなずいた。

なんだか、このふたり、さっきから、ひっかかるよね……。
むちゃくちゃな理由を並べてまで、なんで、私をお茶会に参加させたいんだろう?

国王様が、しっかりした王太子様とは違って、問題ばかりおこす第二王子を心配しておられると前にジョナスお兄様から聞いたことがある。
つまり、お茶会うんぬんは、ただの親ばか発言なんだと思う。

でも、このふたりは何かろくでもないことを企んでそうな気がしてしょうがないんだよね。
特に第二王子は、ミナリア姉様と会いたがっているみたいだし……。

と、考えをめぐらせていると、第二王子の耳障りな声がまた聞こえてきた。

「ラジュ王女の言う通りだ。アンヌのためにも、是非、マイリ侯爵令嬢にわが屋敷の茶会に来てほしい」

「マイリ侯爵令嬢。国王としてではなく、不甲斐ないガイガーの親として頼む。少し顔をだすだけでいい。やる気になったアンヌを助けると思って、参加してもらえないだろうか」
と、国王様が今度は私のほうを向いて言った。

絶対に嫌です!

国王様に無礼なのは承知だけれど、ここは譲れない。
王子妃を助ける義理もないし、なにより、敵地に行って、お茶なんか飲めません!

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