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驚き
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ルーファスのおかげで、なんとか平常心を取り戻した私。
素敵にコーディネイトされた、ひだまりのテーブルにすわっているふたりを見る。
全くなじんでいない。
やけに笑顔でレーナおばさまに話しかける上機嫌な第二王子と、ちらちらとすがるように、第二王子を見ている王子妃。
が、そんな王子妃を第二王子は全く見ない。
せっかくの素敵なひだまりのテーブルに、今にも嵐がやってきそうな不穏なふたり。
見ているだけで、心がざわざわしてきた……。
隣でルーファスがささやいた。
「どう考えたって、あのふたりをまとっている悪い気は、日の光くらいじゃ払えないよね」
確かに……。
と、そこへ、執事のマイヤーさんが急いだ様子でやってきて、レーナおばさまに近づいた。
「ジャナ国の王女様が到着されました」
「では、すぐにお出迎えに行くわ」
「いえ、もう、キリアンさんの案内でこちらに向かっています。ただ、予定にない方がご一緒で……」
「まあ、どなたかしら?」
そこから、マイヤーさんが声を落としたため、何を伝えたのかはわからない。
でも、一瞬、レーナおばさまの顔が厳しくなったような気がしたのが気になった。
もしかして、歓迎できない人なのかな……?
レーナおばさまとルーファスと一緒に、王女様がくるのを部屋の入口のあたりで立って待つ。
なんだか、ドキドキしてきた。
もちろん、嫌な意味で……。
「ララ、無理しないで。嫌ならしゃべらなくてもいいし、動かなくてもいいんだからね。挨拶だって、ララの分もかわりに僕がするから」
え? 私のぶんの挨拶もルーファスがする……?
ルーファスの隣に立っていたレーナおばさまが、あきれたようにつぶやいた。
「ルーファス、何を言っているの……? いくらなんでも、ララちゃんの分まで挨拶をするのはやめておきなさい。これはララちゃんの挨拶ですって言って、あなたがカーテシーでもするつもり? 変でしょう? 目の前で見せられる私とララちゃんが恥ずかしくていたたまれないわ」
ルーファスのカーテシー、想像したら、ふふっと笑ってしまった。
「ララのためなら、どんな変なことでもできるけど」
「本当にやりそうで怖いわ……。ララちゃん、うちの息子がうっとうしくて、ごめんなさいね。ララちゃんへの思いが強すぎて、言動が変になるみたい」
「いえ、うっとうしいだなんて、とんでもないです。ルーファスは面倒見がいいから、私が小さい子どものままに思えて放っておけないんだと思います。ルーファスは天使みたいに優しいから。でも、レーナおばさま。そんな天使みたいに純粋なルーファスを魔の手から守ろうと思う私の気持ちのほうが、ルーファスにとったら、うっとうしいくらい大きいと思います!」
自信満々で言い切った瞬間、レーナおばさまがフフッと笑った。
「ララちゃんがいいように誤解……いえ、解釈してくれて、よかったわね、ルーファス。……あら、ついに来られたみたいだわ」
レーナおばさまが優雅な笑みをうかべて、扉のほうをむいた。
ざわざわと人の気配がして、扉があく。
すぐに、キリアンさんに先導されたジャナ国の王女様が部屋に入ってきた。
「今日は、お招きいただきありがとう。ロイド公爵夫人、ルーファス」
そう言うと、華やかに微笑んだ王女様。
前回のパーティーでは、真っ赤なドレスを着ていたけれど、今日は、白いドレスを着ている王女様。
シンプルなデザインのドレスなので、自然と目がいくのが胸元のブローチ。
深い紫色の宝石が輝いている。
思わず、胸がドクッとなった。
だって、ルーファスの瞳の色に似ているから……。
そんな私を見て、楽しそうに微笑んだ王女様。
「ララベルさん、今日は来てくれてうれしいわ。ねえ、このブローチ、とてもきれいでしょう?」
「……はい」
「この石、バイオレットサファイアなの。私が一番好きな宝石なのよ。ララベルさんも紫色のサファイアはお好きかしら?」
王女様はそう言って、探るように私を見た。
なんということもない会話なのに、ひとこと間違えた瞬間、命を取られそうな感じの緊張感。
とりあえず、短い言葉で答えることにした。
「……はい、きれいですから」
そこで、私をかばうように、レーナおばさまが王女様のほうへと近づいた。
「王女様。今日は、お付きの方以外に、どなたかとご一緒にこられたと聞きましたが?」
「そうだったわ。今日は、この国でできたお友達を連れてきたの。急だけれど、お茶会に参加してもよいかしら? ロイド公爵夫人」
「ええ、もちろんですわ。王女様」
「ロイド公爵夫人にお許しをいただいたわ。ロイス! 私のお友達をお連れして」
ふりかえって、扉の向こうに声をかけた王女様。
「失礼します」
淡々とした声とともに部屋に入ってきたのは、王女様の従者のロイスさん。
そして、その後ろに続いて入ってきた人を見て、驚きすぎて、声がでそうになった。
誇らし気な笑みを浮かべたモリナさんだったから。
素敵にコーディネイトされた、ひだまりのテーブルにすわっているふたりを見る。
全くなじんでいない。
やけに笑顔でレーナおばさまに話しかける上機嫌な第二王子と、ちらちらとすがるように、第二王子を見ている王子妃。
が、そんな王子妃を第二王子は全く見ない。
せっかくの素敵なひだまりのテーブルに、今にも嵐がやってきそうな不穏なふたり。
見ているだけで、心がざわざわしてきた……。
隣でルーファスがささやいた。
「どう考えたって、あのふたりをまとっている悪い気は、日の光くらいじゃ払えないよね」
確かに……。
と、そこへ、執事のマイヤーさんが急いだ様子でやってきて、レーナおばさまに近づいた。
「ジャナ国の王女様が到着されました」
「では、すぐにお出迎えに行くわ」
「いえ、もう、キリアンさんの案内でこちらに向かっています。ただ、予定にない方がご一緒で……」
「まあ、どなたかしら?」
そこから、マイヤーさんが声を落としたため、何を伝えたのかはわからない。
でも、一瞬、レーナおばさまの顔が厳しくなったような気がしたのが気になった。
もしかして、歓迎できない人なのかな……?
レーナおばさまとルーファスと一緒に、王女様がくるのを部屋の入口のあたりで立って待つ。
なんだか、ドキドキしてきた。
もちろん、嫌な意味で……。
「ララ、無理しないで。嫌ならしゃべらなくてもいいし、動かなくてもいいんだからね。挨拶だって、ララの分もかわりに僕がするから」
え? 私のぶんの挨拶もルーファスがする……?
ルーファスの隣に立っていたレーナおばさまが、あきれたようにつぶやいた。
「ルーファス、何を言っているの……? いくらなんでも、ララちゃんの分まで挨拶をするのはやめておきなさい。これはララちゃんの挨拶ですって言って、あなたがカーテシーでもするつもり? 変でしょう? 目の前で見せられる私とララちゃんが恥ずかしくていたたまれないわ」
ルーファスのカーテシー、想像したら、ふふっと笑ってしまった。
「ララのためなら、どんな変なことでもできるけど」
「本当にやりそうで怖いわ……。ララちゃん、うちの息子がうっとうしくて、ごめんなさいね。ララちゃんへの思いが強すぎて、言動が変になるみたい」
「いえ、うっとうしいだなんて、とんでもないです。ルーファスは面倒見がいいから、私が小さい子どものままに思えて放っておけないんだと思います。ルーファスは天使みたいに優しいから。でも、レーナおばさま。そんな天使みたいに純粋なルーファスを魔の手から守ろうと思う私の気持ちのほうが、ルーファスにとったら、うっとうしいくらい大きいと思います!」
自信満々で言い切った瞬間、レーナおばさまがフフッと笑った。
「ララちゃんがいいように誤解……いえ、解釈してくれて、よかったわね、ルーファス。……あら、ついに来られたみたいだわ」
レーナおばさまが優雅な笑みをうかべて、扉のほうをむいた。
ざわざわと人の気配がして、扉があく。
すぐに、キリアンさんに先導されたジャナ国の王女様が部屋に入ってきた。
「今日は、お招きいただきありがとう。ロイド公爵夫人、ルーファス」
そう言うと、華やかに微笑んだ王女様。
前回のパーティーでは、真っ赤なドレスを着ていたけれど、今日は、白いドレスを着ている王女様。
シンプルなデザインのドレスなので、自然と目がいくのが胸元のブローチ。
深い紫色の宝石が輝いている。
思わず、胸がドクッとなった。
だって、ルーファスの瞳の色に似ているから……。
そんな私を見て、楽しそうに微笑んだ王女様。
「ララベルさん、今日は来てくれてうれしいわ。ねえ、このブローチ、とてもきれいでしょう?」
「……はい」
「この石、バイオレットサファイアなの。私が一番好きな宝石なのよ。ララベルさんも紫色のサファイアはお好きかしら?」
王女様はそう言って、探るように私を見た。
なんということもない会話なのに、ひとこと間違えた瞬間、命を取られそうな感じの緊張感。
とりあえず、短い言葉で答えることにした。
「……はい、きれいですから」
そこで、私をかばうように、レーナおばさまが王女様のほうへと近づいた。
「王女様。今日は、お付きの方以外に、どなたかとご一緒にこられたと聞きましたが?」
「そうだったわ。今日は、この国でできたお友達を連れてきたの。急だけれど、お茶会に参加してもよいかしら? ロイド公爵夫人」
「ええ、もちろんですわ。王女様」
「ロイド公爵夫人にお許しをいただいたわ。ロイス! 私のお友達をお連れして」
ふりかえって、扉の向こうに声をかけた王女様。
「失礼します」
淡々とした声とともに部屋に入ってきたのは、王女様の従者のロイスさん。
そして、その後ろに続いて入ってきた人を見て、驚きすぎて、声がでそうになった。
誇らし気な笑みを浮かべたモリナさんだったから。
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