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ローザ その後
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ダリル様の婚約者がフランに変わった後、留学先からルイ兄様がものすごい勢いで帰ってきた。
私より6歳年上のルイ兄様。
普段は冷静で、淡々としているのに、怒り狂って両親に詰め寄った。
「何故、ローザをないがしろにしたのです! 人の婚約者を取った者の後ろ盾になり、新たに婚約を結ばせるなど、信じられない!」
「ルイ、落ち着け……。ないがしろになどしていない。ローザとダリル君の婚約は政略の意味は薄いし、それに、ダリル君とフランは思いあっている。それならば、ローザと婚約を解消して、フランと結びなおしたほうが、三人にとって最良だろう?」
と、焦ったように説明するお父様。
「そうよ、ルイ。それに、フランは親元を離れて苦労しているのだもの。妹の代わりに、私が母親代わりで後ろ盾になるのは当たり前よ。それに、好きあっている二人を引き裂けないでしょう……」
と、言い募るお母様。
ルイ兄様の眉間のしわが更に深くなった。
「はあ!? なに、馬鹿げたことを言ってるんですか? 好き合ってるから、ローザを傷つけてもいいと? いいわけない!」
と、憤るルイ兄様。
両親が言葉をなくして、黙り込んだ。
私のために怒ってくれるルイ兄様の姿に、凍り付いていた心があたたかくなった。
それにしても、震えあがるくらい怖いルイ兄様。
両親は心身ともに、ぺしゃんこになっている。
そんな怒れるルイ兄様に、フランがすり寄った。
「ごめんなさい。私が、ダリル様を好きになったから。ローザを悲しませるつもりはなかったんです……!」
ダリル様にするように、涙を流しながら、ルイ兄様を見上げるフラン。
ルイ兄様は冷たく鋭い目でフランを見据え、吐き捨てるように言った。
「なんで、こんなのを……。だから、俺は、あんな馬鹿との婚約は反対したんだ……。まあ、いい。人の婚約者をとるなど泥棒と同じだ。さっさと、この屋敷から出ていけ」
と、ルイ兄様は、フランに言い放った。
フランの顔が変わった。
愛らしい泣き顔から一転、憎々し気にルイ兄様をにらみつけている。
結局、ルイ兄様が侯爵家に出向き、話をつけ、フランは未来の侯爵夫人としての教育を受けるため、婚約中でありながら侯爵家に移り住むことになった。
ダリル様のことは、あきらめもついたけれど、まだ、二人のことを耳にしたくはない。
「ローザ。俺の留学している国に、おまえも留学するか? 学園には女子寮もある」
というルイ兄様のすすめにのることにした。
私まで留学することを寂しいと言って反対するお母様。
が、その反対の声は、ルイ兄様によって瞬殺された。
ということで、私は、すぐに隣国へ旅立った。
あれから3年が過ぎた。
私は留学先の学園を間もなく卒業する。
仲の良い友達もでき、楽しい学園生活だった。
とはいえ、卒業しても、この国で住み続けることになった私。
それは、魔術師として活躍しているフェリクス様と結婚することになったから。
フェリクス様は、ルイ兄様の親友。
留学したばかりの私は友達もいないため、ルイ兄様に沢山面倒をみてもらっていた。
必然的に、親友のフェリクス様とも会う。
不慣れな国で、不安そうにしていると、いつも笑わせてくれたフェリクス様。
一方的に泣かせて喜ぶダリル様とは違って、私の心に寄り添い、気持ちを明るくさせてくれるフェリクス様
気が付いた時には、フェリクス様のことが大好きになっていた私。
そんな大好きなフェリクス様ともうすぐ結婚できるなんて、本当に私は幸せだ。
だから、あの時、フランがダリル様の気持ちを奪ってくれて、本当に良かった。
おかげで、愛するフェリクス様と出会えたのだもの。
もう二人に会うことはないだろうけれど、どうぞお幸せにね。
※ 読んでくださった方、ありがとうございます!
あと一話で完結です。今日中に更新します。
私より6歳年上のルイ兄様。
普段は冷静で、淡々としているのに、怒り狂って両親に詰め寄った。
「何故、ローザをないがしろにしたのです! 人の婚約者を取った者の後ろ盾になり、新たに婚約を結ばせるなど、信じられない!」
「ルイ、落ち着け……。ないがしろになどしていない。ローザとダリル君の婚約は政略の意味は薄いし、それに、ダリル君とフランは思いあっている。それならば、ローザと婚約を解消して、フランと結びなおしたほうが、三人にとって最良だろう?」
と、焦ったように説明するお父様。
「そうよ、ルイ。それに、フランは親元を離れて苦労しているのだもの。妹の代わりに、私が母親代わりで後ろ盾になるのは当たり前よ。それに、好きあっている二人を引き裂けないでしょう……」
と、言い募るお母様。
ルイ兄様の眉間のしわが更に深くなった。
「はあ!? なに、馬鹿げたことを言ってるんですか? 好き合ってるから、ローザを傷つけてもいいと? いいわけない!」
と、憤るルイ兄様。
両親が言葉をなくして、黙り込んだ。
私のために怒ってくれるルイ兄様の姿に、凍り付いていた心があたたかくなった。
それにしても、震えあがるくらい怖いルイ兄様。
両親は心身ともに、ぺしゃんこになっている。
そんな怒れるルイ兄様に、フランがすり寄った。
「ごめんなさい。私が、ダリル様を好きになったから。ローザを悲しませるつもりはなかったんです……!」
ダリル様にするように、涙を流しながら、ルイ兄様を見上げるフラン。
ルイ兄様は冷たく鋭い目でフランを見据え、吐き捨てるように言った。
「なんで、こんなのを……。だから、俺は、あんな馬鹿との婚約は反対したんだ……。まあ、いい。人の婚約者をとるなど泥棒と同じだ。さっさと、この屋敷から出ていけ」
と、ルイ兄様は、フランに言い放った。
フランの顔が変わった。
愛らしい泣き顔から一転、憎々し気にルイ兄様をにらみつけている。
結局、ルイ兄様が侯爵家に出向き、話をつけ、フランは未来の侯爵夫人としての教育を受けるため、婚約中でありながら侯爵家に移り住むことになった。
ダリル様のことは、あきらめもついたけれど、まだ、二人のことを耳にしたくはない。
「ローザ。俺の留学している国に、おまえも留学するか? 学園には女子寮もある」
というルイ兄様のすすめにのることにした。
私まで留学することを寂しいと言って反対するお母様。
が、その反対の声は、ルイ兄様によって瞬殺された。
ということで、私は、すぐに隣国へ旅立った。
あれから3年が過ぎた。
私は留学先の学園を間もなく卒業する。
仲の良い友達もでき、楽しい学園生活だった。
とはいえ、卒業しても、この国で住み続けることになった私。
それは、魔術師として活躍しているフェリクス様と結婚することになったから。
フェリクス様は、ルイ兄様の親友。
留学したばかりの私は友達もいないため、ルイ兄様に沢山面倒をみてもらっていた。
必然的に、親友のフェリクス様とも会う。
不慣れな国で、不安そうにしていると、いつも笑わせてくれたフェリクス様。
一方的に泣かせて喜ぶダリル様とは違って、私の心に寄り添い、気持ちを明るくさせてくれるフェリクス様
気が付いた時には、フェリクス様のことが大好きになっていた私。
そんな大好きなフェリクス様ともうすぐ結婚できるなんて、本当に私は幸せだ。
だから、あの時、フランがダリル様の気持ちを奪ってくれて、本当に良かった。
おかげで、愛するフェリクス様と出会えたのだもの。
もう二人に会うことはないだろうけれど、どうぞお幸せにね。
※ 読んでくださった方、ありがとうございます!
あと一話で完結です。今日中に更新します。
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