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ひっこまない!

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私をあざわらった少年は、シャープで整った顔立ちだが、目つきの鋭さがすごい。
なんというか、私のまわりにはいないような、荒んだ雰囲気を全身から醸し出している。
しかも、背が高く、威嚇するように、上から私をにらみつけてくる。

が、私は少しも怖くない!

だって、普段から、体の大きいアール兄様や護衛の人たちを相手に訓練しているからね。
体格の違いには慣れている。

でも、背後の子どもの安全を確保しながら、相手を傷つけずにおさめるにはどうすればいいだろう?
実践は始めてだから、そこだけが気になるところ。

もうすぐ護衛の人が家のまわりの確認にまわる時間だ。
それまで、事を荒立てず、背後の子どもを守りながら待つべきか…。

などと考えている私の顔を、少年がじっと見て言った。

「へえ、女なのに、根性すわってんな? そいつとは大違いだ。それと、その赤毛、小さい子どもじゃなくて、俺と同じ年だ」

ええ? 同じ年?! 

うずくまって泣いている子どもの顔は見えないけれど、シルエット的には子どもに見える。
それとも、目の前の少年が、年よりずっと老けてるんだろうか…。

2人は、一体いくつなんだろう…?

「だから、変な正義感ふりかざすに、ひっこんでな。ケガしたくないだろ、お嬢ちゃん」
挑発するように言って嫌な笑みを浮かべた少年。

カッチーン! 

こんなバカにされて、ひっこんでなんかいられない。
護衛が来るまで待つという選択肢はない!

「私はひっこまない! 小さい子どもじゃなくても、泣いている人を放っておくことなんてできない!」

と、その時、
「やめてっ…!」
背後から小さな声が聞こえた。

振り返ると、赤い髪の毛の子どもが私のほうを見上げていた。
大きな目は涙でうるんでいる。

女の子みたいな顔をした少年だ。

やっぱり、どうみても、私より年下みたいだけれど…?

「ぼくは大丈夫だから…」
泣きながら、そう言うけれど、手はがっしりと私のトラウザーズのすそをにぎっている。

「私はね、騎士になるために、しっかり訓練してる。泣いている人を放っておけない。私にまかせて!」

「はああ、女なのに、騎士?! そんな小さいのにか? なら、その腕前みせてみろよ。一対一の勝負だ」

「いいわよ。どうやって勝負するの?」

「おまえはその剣を使っていいぞ。俺は素手で十分だ。おまえになんか、負けるはずがないからな。おまえが勝ったら、俺はおまえの言うことをなんでも聞く。で、俺が勝ったら、そうだな…。そこの赤毛が俺に払うはずだった金をおまえが払え」

私は、すぐさま後ろを振り返り、うずくまる少年に聞いた。

「君、お金を借りてるの? あのね、どれだけ困っても、こんな胡散臭い人にお金を借りちゃダメだよ」

「借りてないです…」
そう言って、少年は激しく首を横にふった。

え、じゃあ、なんでお金を払わないといけないの?

「おいっ、だれが胡散臭いだと?! なめてんのか、こら?!」
ガラの悪さ満載で、目の前の少年が大声でどなった。

後ろの少年が、ヒッ!と声をあげたのが聞こえた。

ああ、もう、そんな大声をだしたら、怖がるじゃない!
よし、一気にカタをつけよう!


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