(完結)いつのまにか懐かれました。懐かれたからには私が守ります。

水無月あん

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安心できる場所

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その後、ルドと走って帰ったのだけれど、家にたどり着くまで、いつもの何倍もの時間がかかった。

というのも、途中でルドが動けなくなったから。
どうやら、足首をひねったらしい。
泣きそうになって謝るルドを、私が無理やり背負って帰って来た。

すぐにお医者さんを呼んでもらって、手当てをしてもらう。
お母様と、アール兄様も心配して様子を見に来た。

幸い、軽い捻挫だったみたいで、湿布をはって様子をみることになった。

「ごめんね、ルド。走る前に、準備運動をしたら良かったね」

私が謝ると、お母様があきれたように言った。

「そうではなくてね、マチルダ。鍛えまくっているあなたと、ルド君は違うの。走ると言っても止めなさい! ルド君もごめんなさいね。無理に、この子につきあわなくていいのよ。普通の人だと体を壊すからね」

「いえ、マチルダ様はとめたのに、ぼくが従者だからと無理についていったんです。ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした……。しかも、マチルダ様に背負ってもらうだなんて、恥ずかしいことを。本当にすみません……」

ルドは消え入りそうな声で謝り、しょぼんと下をむいた。

「あ、それは、全然、気にしないで! というより、むしろ、いいトレーニングになったわ。砂袋と違って、人を背負うのも訓練になるなあって。ルドはちょうどいい重さだったから」

「ほんとですか?」
ルドが私を見た。

「うん、ほんと、ほんと! また、背負いたいくらいだよ!」

「マチルダ、あなた、なんてこと言うの……。人を背負いたいだなんて、令嬢として、終わっている発言よ」

お母様は顔をしかめ、ため息まじりにつぶやいた。

反対に、ルドの顔は一気に明るくなった。

「あの、背負いたい時は言ってください……。いつでも背負われます……」

ルドは恥じらうように言った。

すると、なにやら、アール兄様の目が輝いた。

「砂袋よりいいなら、俺も背負いたい。ルド、背負わしてくれ!」

「嫌です。ご遠慮します」

ルドが即答した。

「えー? マチルダはいいのに、なんで、俺はダメなんだ?」

アール兄様が文句を言う。

「はあ、もう、やめなさい! 本当になんて会話かしら。うちの娘も息子も脳筋すぎるわ……」

「お母様、アール兄様はともかく、私は脳筋ではないわ!」

「いや、マチルダは脳筋だ。でも、脳筋で何が悪い! 脳筋万歳だ!」

わけのわからないことを言いだす、アール兄様。

すると、フフッと小さな笑い声がした。

見ると、言い合う私たちを見ながら、ルドが楽しそうに笑っている。
その笑顔に、私はホッとする。

だって、私の家族に怯えてないってことだもんね。
変な色が見えたりして、怖がられなくて良かった。

たとえ、3か月の間とはいえ、ルドにとって、ここが安心できる場所になりますように……。

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