(完結)いつのまにか懐かれました。懐かれたからには私が守ります。

水無月あん

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あの時の

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お父様の声に、みんなが一斉に注目する。

すると、隣にいたルドが、「えっ……?」と、驚いたような声をあげた。

「どうかしたの、ルド?」

見ると、ルドは目を見開き、お父様のほうを一心に見ている。
視線の先を追う。

あれ? お父様の後ろにだれかいる。
背の高い男性、いや、若そうだから少年かな……って、えええ!

「あの時の……!?」

思わず、大声をあげてしまった私。

だって、お父様の後ろにいる背の高い少年は、あの時の少年だよね。
そう、ルドの幼馴染の少年だ。

お父様が、後ろにいた少年を前に押し出した。

「今日から、我が家で護衛として働くことになったロイス・ブリューノだ。うちの屋敷で住み込みになるから、よろしく頼む」

「「「はいっ!」」」

アール兄様をはじめ、護衛の皆が一斉に返事をした。

茫然としたままのルド。

え、うちの護衛? 一体、どうして、雇うことになったんだろう……?

「じゃあ、ロイス。みんなに挨拶をしなさい」
と、お父様が声をかけた。

ロイスが、緊張した面持ちでうなずく。

ロイスが私たちのほうを向いた。そして、視線はルドを捕らえた。
ふたりの目が合う。

動揺したのか、ルドの目がうるんでいる。
いまにも涙がこぼれそうになって、ルドはそれを隠すように、うつむいた。

それを見たロイスの顔が、一瞬、泣きそうにゆがんだ。
鋭く、大人びた顔立ちなのに、小さな子どものよう。

でも、すぐに鋭い目つきに戻って、低い声で言った。

「俺はロイス・ブリューノ、16歳です。そこの……お嬢に勝負で負けました。俺が負けたら、なんでも言うことを聞くと約束したが、お嬢からは何も要求されていない。だから、お嬢の護衛として働くことで、借りを返しにきました」

そう言って、鋭い眼差しを私に向けた。

えっ? お嬢? それって、もしや、私のこと? 

「いや、いや、別に返してもらわなくても……。っていうか、借りでもないし。しかも、はっきり言って、ずーっと私のほうが強かったよね? なのに、私の護衛? できるの?」
と、全くぼやかすことなく、心の声がとびでてしまった私。

「そう言ってやるな、マチルダ。ロイスはな、おまえに手も足もでず負けたことで、目がさめた気がしたそうだ。どんな厳しい訓練も耐えるから、護衛として雇って欲しいと必死に頼み込んできた。俺はその熱意にうたれた!」

お父様が熱く語る。

そう、お父様は頼られると弱い。困っている人を放っておけない。
だから、うちの屋敷で働く人たちのなかには、お父様が声をかけ、連れ帰って来た人たちが結構いる。

そして、その気質はアール兄様も私もおおいにひきついでいるんだよね……。

「それにな、マチルダ。うかうかしていると、そうだな……1年。それくらいあれば、マチルダが負ける可能性もある。簡単にテストをしてみたが、身体能力はかなり高い。センスもある。めぐまれた体格だ。ちゃんと訓練すれば、大化けするかもな」

そう言いながら、嬉しそうにロイスを見た。

副騎士団長の血が騒ぐのか、有能な人材を見つけると、育てたくてたまらなくなるお父様。

「それと、ルド!」

「は、はい……」

突然呼ばれて、驚いたように返事をするルド。

お父様は怖がらせないようにルドに気をつかったのか、やたらとにこにこしながら話を続ける。

「ロイスはルドと幼馴染だそうだな。先日のことはロイスから聞いた。ロイスがルドと話がしたいそうだ。これからは、同じ職場で働くことになるから、しっかり話し合うように。マチルダ、立ち会ってやれ」

お父様の言葉に、ルドが私のジャケットのすそを、ぎゅっとにぎりしめたのがわかった。

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