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告白
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訓練していた場所の横にある東屋。そこには、テーブルと椅子がある。
お父様の指示で、そこで、ゆっくり話すことになった。
テーブルをはさんでロイスとルドが向かい合って座った。
ルドの隣に私が座る。
というのも、私のジャケットのすそを、ルドがつかんだままだから、離れては座れない。
相当しわになっているだろうけれど、まあ、ルドがそれで安心するならいいけどね。
が、なかなか話し出さないふたり。
もしや、私が仕切ったほうがいいのかな?
そう思った時、ロイスが椅子から立ちあがると、ルドにむかって、がばっと頭をさげた。
「ルド、すまなかった! ひどい態度をとって、ひどいことを言って、傷つけて、泣かせてしまって……。許してもらえることじゃないが、謝らせてくれ!」
「ロイス……」
しばらく深く頭をさげていたロイスが顔をあげた。
そして、声をしぼりだすようにして、立ったまま話し出した。
「俺を訪ねてきてくれたルドは、子どもの頃と、ちっとも変わっていなかった……。純粋で、きれいな目で俺を見てきた。幸せだったあの頃を思い出した。……でも、俺はあの頃とは違う。もう、汚れてしまった人間だ。もう、全てあきらめていたはずなのに、ルドを見ると、もがきたくて苦しくなった……。だからルドを避けた。でも、ルドは近づいてくる。あの頃とはすっかり変わってしまった俺に、あの頃のように話しかけようとしてくる。だから俺は、ひどいことを言って傷つけてしまえばいいと思った。ルドが俺を嫌いになって、二度と近づいてこないように……」
「え……?」
ルドが、こぼれ落ちそうなほど目を大きく見開いて、ロイスを見た。
うるんだ瞳が動揺して、ゆれている。
「この町からでて、俺は、唯一の親戚だった叔父夫婦に預けられたんだ。両親と折り合いが悪かった叔父は、俺を嫌って、すぐに俺に手をあげた。叔母は俺に関わらないようにしていた。そんなに俺が嫌なら、孤児院にいれてくれと叔父に言ったら、殴られた。世間体があるだろう、と」
「子どもになんてことをするのよ!」
私は怒りのあまり椅子をけって立ちあがった。
くやしさがうずまく。
ロイス少年をすぐにでも助けに行きたい!
と、私のジャケットのすそがひっぱられた。
ふと、我にかえると、ロイスとルドが驚いたように私を見ている。
「あ、ごめんなさい……。ちょっと我を忘れた……」
そう言って、静かに座る私。
ロイスが、まじまじと私の顔を見ている。
「えっと、なにか……?」
「あ、いや、わりい……。最初に会った時もだけど、貴族の令嬢とは思えなくて……。人を怖がっていたルドが懐くはずだなと……」
その後もロイスの過去の話は続いた。
ルドも私もだまったまま、つらい話を聞いた。
ロイスは、鍵のかかる部屋にとじこめられ、叔父の仕事の雑用をさせられた。
少しでも気に入らないと暴力をふるわれる。そんな日々が2年も続いた。
が、ある日。いつものように、なぐられたロイス。
気がついたら、叔父にとびかかり、殴り返していた。
叔父がふっとんだ。
そこで、ロイスは初めて気が付いた。
2年たって、体が大きくなったロイスは、叔父よりも力が強くなっていたことに。
ロイスは怒り狂う叔父を置いて、逃げだした。
やっと自由になった。
でも、10歳の少年のロイスは、お金も持っていないし、町のことを何も知らない。
もちろん、助けてくれるような人も知らない。
途方にくれて、うろうろしているところを、一人の少年に声をかけられた。
ついていくと、行き場のない子どもたちが集まり路上で生活をしていた。
ロイスは、一緒に盗みをして暮らしだす。
が、ある時、仲間に裏切られ、ロイスだけがつかまった。
それから、更生するための施設にいれられ、そのあと、孤児院にうつされた。
が、ワケありで入って来たロイスに、他の子どもたちは近づいてこない。
ロイスは孤児院でいつも一人だった。
でも、暴力をふるわれることもなく、盗みをしなくても食べられるし、安全に眠れる場所がある。
それだけで満足していた。
16歳になると、孤児院から出ていかなくてはいけない。
孤児院の仕事を手伝い、貯めたお金を持って、ロイスはこの町へ戻って来た。
ロイスは言った。
「孤児院をでたら、自然とこの町に足がむいていた。他に行く所がなかったから……。でも、もう、あの頃の俺じゃない。もう、ルドとは住む世界が違う、そう思ったんだ」
隣からしゃくりあげる声が聞こえた。
見ると、ルドが号泣していた。
「ぼくが、ロイスに会いに行けばよかった……。ごめん……ロイス。あんなに助けてもらったのに、ロイスが大変なときに、何もしてあげられなくて……。本当にごめん……」
お父様の指示で、そこで、ゆっくり話すことになった。
テーブルをはさんでロイスとルドが向かい合って座った。
ルドの隣に私が座る。
というのも、私のジャケットのすそを、ルドがつかんだままだから、離れては座れない。
相当しわになっているだろうけれど、まあ、ルドがそれで安心するならいいけどね。
が、なかなか話し出さないふたり。
もしや、私が仕切ったほうがいいのかな?
そう思った時、ロイスが椅子から立ちあがると、ルドにむかって、がばっと頭をさげた。
「ルド、すまなかった! ひどい態度をとって、ひどいことを言って、傷つけて、泣かせてしまって……。許してもらえることじゃないが、謝らせてくれ!」
「ロイス……」
しばらく深く頭をさげていたロイスが顔をあげた。
そして、声をしぼりだすようにして、立ったまま話し出した。
「俺を訪ねてきてくれたルドは、子どもの頃と、ちっとも変わっていなかった……。純粋で、きれいな目で俺を見てきた。幸せだったあの頃を思い出した。……でも、俺はあの頃とは違う。もう、汚れてしまった人間だ。もう、全てあきらめていたはずなのに、ルドを見ると、もがきたくて苦しくなった……。だからルドを避けた。でも、ルドは近づいてくる。あの頃とはすっかり変わってしまった俺に、あの頃のように話しかけようとしてくる。だから俺は、ひどいことを言って傷つけてしまえばいいと思った。ルドが俺を嫌いになって、二度と近づいてこないように……」
「え……?」
ルドが、こぼれ落ちそうなほど目を大きく見開いて、ロイスを見た。
うるんだ瞳が動揺して、ゆれている。
「この町からでて、俺は、唯一の親戚だった叔父夫婦に預けられたんだ。両親と折り合いが悪かった叔父は、俺を嫌って、すぐに俺に手をあげた。叔母は俺に関わらないようにしていた。そんなに俺が嫌なら、孤児院にいれてくれと叔父に言ったら、殴られた。世間体があるだろう、と」
「子どもになんてことをするのよ!」
私は怒りのあまり椅子をけって立ちあがった。
くやしさがうずまく。
ロイス少年をすぐにでも助けに行きたい!
と、私のジャケットのすそがひっぱられた。
ふと、我にかえると、ロイスとルドが驚いたように私を見ている。
「あ、ごめんなさい……。ちょっと我を忘れた……」
そう言って、静かに座る私。
ロイスが、まじまじと私の顔を見ている。
「えっと、なにか……?」
「あ、いや、わりい……。最初に会った時もだけど、貴族の令嬢とは思えなくて……。人を怖がっていたルドが懐くはずだなと……」
その後もロイスの過去の話は続いた。
ルドも私もだまったまま、つらい話を聞いた。
ロイスは、鍵のかかる部屋にとじこめられ、叔父の仕事の雑用をさせられた。
少しでも気に入らないと暴力をふるわれる。そんな日々が2年も続いた。
が、ある日。いつものように、なぐられたロイス。
気がついたら、叔父にとびかかり、殴り返していた。
叔父がふっとんだ。
そこで、ロイスは初めて気が付いた。
2年たって、体が大きくなったロイスは、叔父よりも力が強くなっていたことに。
ロイスは怒り狂う叔父を置いて、逃げだした。
やっと自由になった。
でも、10歳の少年のロイスは、お金も持っていないし、町のことを何も知らない。
もちろん、助けてくれるような人も知らない。
途方にくれて、うろうろしているところを、一人の少年に声をかけられた。
ついていくと、行き場のない子どもたちが集まり路上で生活をしていた。
ロイスは、一緒に盗みをして暮らしだす。
が、ある時、仲間に裏切られ、ロイスだけがつかまった。
それから、更生するための施設にいれられ、そのあと、孤児院にうつされた。
が、ワケありで入って来たロイスに、他の子どもたちは近づいてこない。
ロイスは孤児院でいつも一人だった。
でも、暴力をふるわれることもなく、盗みをしなくても食べられるし、安全に眠れる場所がある。
それだけで満足していた。
16歳になると、孤児院から出ていかなくてはいけない。
孤児院の仕事を手伝い、貯めたお金を持って、ロイスはこの町へ戻って来た。
ロイスは言った。
「孤児院をでたら、自然とこの町に足がむいていた。他に行く所がなかったから……。でも、もう、あの頃の俺じゃない。もう、ルドとは住む世界が違う、そう思ったんだ」
隣からしゃくりあげる声が聞こえた。
見ると、ルドが号泣していた。
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