(完結)いつのまにか懐かれました。懐かれたからには私が守ります。

水無月あん

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なんてことするの?

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「あのね、ロイスは、もう辺境騎士団の騎士なの。いつまでも、執念深く狙っても無理だから」
と、見目のいいロイスをアクセサリーのように欲しがるロザンヌに、ここで、はっきりと忠告しておく。

すると、ロザンヌの顔が一気にゆがんだ。

「ふん。辺境の騎士団に入ったからって、なんなのよ? 王宮の騎士じゃなかったら、しょせん、田舎騎士じゃない? えらそうに」

「はあ? それ本気で言ってる!? 辺境を守ることの重要さを知らないの!?」

驚きすぎて、つい、大きな声がでた。
辺境に住む伯爵令嬢なのに、辺境の騎士団を馬鹿にするなんて信じられない!

私の言葉に、ロザンヌの顔が肉食動物まるだしになった。
ぎらぎらした目で、私をにらみつけてくる。

「重要って、なにが? 森しかないような田舎を守る騎士なんて、たいしたことしてないじゃない? それに、私は、いずれ、王都の高貴な方へ嫁ぐわ。そんなえらそうな態度をとったことを後悔させてやる!」

うん、これは、話しにならない……。
まともに相手にするのも無駄。この記念すべき日に、時間をとりたくもない。

それに、今のロザンヌのまとう色は、ルドに見せていい色じゃないだろう。
早く、ルドを引き離さないと……。
まだ食べたいものは残っているから残念だけど、前菜は終わらせて、メインのテーブルにうつるとするか……。

「ルド、あっちのテーブルに行こう」
そう言って、ロザンヌに背をむけ、歩き出した瞬間、「きゃあ!」と、後ろから悲鳴があがった。

え? なにごと?

ふりかえると、今の悲鳴はロザンヌらしい。
が、見た感じ、なんともなさそう……。
なのに、なんで悲鳴をあげたんだろう?
不思議そうにする私に、ロザンヌがにやりと笑った。

そして、ロザンヌが叫んだ。

「ひどいわっ! マチルダさんが、彼女のドレスに飲み物をかけたの! ほら、見て!」

ん? 私? それに彼女ってだれ?

と、思ったら、ロザンヌが指をさした先を見れば、とりまきの一人、男爵令嬢のダリアの白いドレスに、真っ赤なしみができている。
そして、そばのテーブルには、赤いフルーツジュースが少し残ったグラスがある。

このグラス、さっきまで、ロザンヌが持ってたよね……?

つまり、ロザンヌは、私がダリアのドレスにジュースをかけたことにしようとしてるってこと?

「マチルダさん、騎士に合格したのに、こんなひどいことをするなんて! ダリア、大丈夫!?」

ロザンヌが、やたらと大きな声でわめく。

ダリアは茫然とした様子で、ただ、自分のしみになったドレスを見つめている。
もう一人のとりまきの令嬢は、私が見た瞬間、気まずそうに目をそらした。

ロザンヌの大声を聞いて、私たちしかいなかったテーブルに人が集まって来た。

すると、その人たちに向かって、まがいものの小動物感をだしながら、ロザンヌが身をふるわせて私を指さした。

「マチルダさんが怒って、私のドレスに飲み物をかけようとしたんです。そしたら、ダリアがかばってくれて! 私のせいで、ごめんなさい、ダリア!」

ええと、なに、この変な一人芝居……?
怒るよりも、あきれてしまうんだけど……。

すると、ルドが私の前におどりでた。

「マチルダ様はそんなことしていません! この方は、嘘をついています!」

いつになく、強い口調で、ルドが言い放った。
騒動を聞きつけたのか、あわてて、ロイスがこっちに走って来るのが見える。

ロザンヌは、おおげさに泣きそうな顔をしながら言った。

「私は嘘なんてついてません! ひどいわ、マチルダさん! 従者にまで嘘をつかせるなんて……」

「ぼくは、嘘なんてついていません! マチルダ様はそんなことしませんから!」

目をうるませながら、言い返すルド。

「あなた、泣きそうじゃない? かわいそうに……。マチルダさんが、よほど怖いのね?」
と、芝居がかった口調で言うロザンヌ。

いやいや、ルドは、ロザンヌのまとう色が怖いんだよ、と、心で反論する私。

小動物の衣をきた肉食動物ロザンヌに、果敢に立ち向かう正真正銘の小動物ルド。
私のためにがんばってくれるルドに胸をうたれる。

なんて、のんきなことを考えている場合じゃない。

ほんと、ロザンヌめ……。私に挑むにしても、場所を考えて!
騎士団長様のパーティーでなんてことするのよ! 許せない!

「ロザンヌ、私を陥れたいのなら、せめて、自分のドレスに飲み物をこぼしなさいよ! 自分のドレスを汚さずに、他人のドレスを汚して、私を罠にはめようだなんて、その性根、どこまで腐ってるの!?」
と、思わず、怒りの声をぶちまけてしまった私。

あ、言い過ぎた……?

と、思ったら、パチパチパチと拍手が聞こえた。
見ると、ええっ? 王太子様!?

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